ザ・グレート・展開予測ショー

君ともう一度出会えたら(07)


投稿者名:湖畔のスナフキン
投稿日時:(03/ 6/18)

『君ともう一度出会えたら』 −07−



 シャアァァァ!

 巨大な亀の化け物──キャメロンが、奇妙なうなり声をあげつつ、額の一つ目から霊波砲を連射する。

「ダメだ、手がつけられん! 心霊装備のない者は外に退避!」

 西条が一部の隊員に、撤退の指示を出すのが聞こえた。

「えいっ!」

 美神さんが隙を見て亀の甲羅に切りつけたが、いとも簡単に弾かれてしまった。

「横島クン、ヒャクメ! こいつの弱点は?」
「すみません、見えないです……」
「お、俺も知らないッス」
「この役立たずーーー!」

 美神さんが俺に足蹴りを加えてきた。本当は知っているんだけど──

「美神さん、そんなことしている場合じゃないでしょう」

 いつものようにおキヌちゃんがフォローに入ってくれた。

「あの化け物、連中の作った雑魚なんですよ。それがこんなに強いなんて──」
「ざ、雑魚!?」
「ええ。パピリオが拾ってきた亀を、ルシオラって女が術をかけて化け物にしたんです」
「ちょ、ちょっと! それじゃあの女幹部たちは、あの亀よりさらに強いパワーをもっているじゃないの!」
「わ、私は少なく見積もって1000以上と……。それに連中が本気を出して戦っているところを見たわけじゃないですし──」
「あーもーやる気なくした! 雑魚を相手にこれじゃ、どの道もうダメだわ!」

 美神さんがとうとうキレた。さて、そろそろ隊長がバイクに乗って颯爽と登場するはずだが……

 キシャアァァーー!

「うわーーっ!」

 キャメロンの霊波砲が近くに命中し、俺たちは吹き飛ばされてしまった。
 えっ!? なんで隊長が来ないんだ?

「ヒャクメ! 誰かこっちに向かってきていないか」

 ヒャクメが周囲を見回す。

「いえ、結界の外も見てみたのですが、誰もいません」

 今までは過去の歴史をほぼトレースできていたが、どこかで齟齬が生じてしまったのだろうか?
 俺はヒャクメの近くにより、そっと耳打ちした。

「ヒャクメ、まだ俺のことはみんなに話していないよな?」
「大丈夫です、横島さん。この状況をどうにかできるんですか?」
「俺が後始末をつけるから、みんなを結界の外に避難させてくれ」
「気をつけてくださいね。それから、あとで詳しい話を聞かせてください」
「もし万が一俺が戻らなかったら、首の付け根に埋まっているヨリシロを取り出すんだ。それでヤツは倒せる」

 そのあと俺は、美神さんの傍に駆け寄った。

「美神さん、ヤツの弱点を思い出しました!」
「え!? それはどこ?」
「ただ、爆発する危険があるので、美神さんたちは退避してください。俺が始末をつけます」
「美神さん、ここは横島さんの言うとおりにしましょう」

 ヒャクメが美神さんを外に引っ張り出した。続いておキヌちゃんや西条たちもスタジオの外にでる。
 俺とキャメロンだけがスタジオに残った。



「さて、ちょいとばかり腕試しだな」

 俺は軽く腰を落とし、半身の姿勢を取った。
 体内のプラナと呼ばれる生体エネルギーを活性化させ、全身のチャクラを開放する。
 体内のプラナとチャクラを通して外部から流入するプラナの力で、肉体の波長を少しずつ調整していく。

 その瞬間、俺の心に猿神(ハヌマン)に弟子入りを志願した時の記憶が浮かび上がってきた。




──── ・ ──── ・ ──── ・ ──── ・ ──── ・ ──── ・ ──── ・ ────


 「横島、なぜそんなに強くなりたい。今のままでも十分強いだろう」

  猿神(ハヌマン)が俺に尋ねた。

 「霊力だけみても、おまえほどの人間はそうはいるまい。文珠まで考慮すれば、実質トップクラスじゃろうが」

  俺は言葉に詰まった。だが俺の計画を打ち明けるわけにはいかない。どうやったら説得できるだろうか──。

 「……俺はあの戦いの時、俺を愛してくれた女を助けられませんでした」
 「アシュタロスの時のことじゃな。あの時ワシは天界に戻っていて、何も手出しができなかった。今でも口惜しいわい」
 「もし俺がもっと強ければ、大事な人を助けられたかもしれない。そう思って、ずっと悔やんできたんです」
 「しかし人間のおまえが、神族・魔族クラスまで強くなろうとしたら、生半可な修行では追いつかないぞ」

  猿神(ハヌマン)が俺の目を食い入るように見つめた。

 「だからあなたのところにきたんですよ、老師。あなたが大陸でしたことは、既に調べています」
 「フン! 大陸の連中の記録好きにも困ったもんじゃ」
 「それでもずいぶん手間がかかりましたよ。あなたは滅多に弟子を取らないから、残された資料も少なくて」

  猿神(ハヌマン)はどっこらしょっと言いながら、座っていた岩から立ちあがった。

 「普通のGSは霊力のみを鍛える。まあ通常はそれで問題ないんだが、それでは人間としての限界はとても超えられん。限界を超えるには、別の手段が必要となるわけじゃが」
 「霊力と肉体の同期ですね。プラナを活性化させて全身のチャクラを開放し、自分の霊波と肉体の波長を共鳴させて、そこからパワーを引き出す──」
 「肉体の波長は霊波に比べればまだ調整が効くからな。ただそれとて簡単ではないぞ。仙道の修行も取り入れるから、一からやり直す覚悟が必要にだぞ」
 「もとより承知です」
 「こいつを教えるのも三百年ぶりぐらいかの。最近は骨のあるヤツもめっきり減ったもんじゃ。それからワシがよしというまで下山はさせんからな……」


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 肉体の波長の調整が終わった。これで霊魂から生じる霊力が肉体を流れるプラナと共鳴し、大幅な力の増幅が可能となる。
 文珠を使って合体したときほど爆発的なパワーは得られないが、それでもそこそこのパワーを引き出せるはずだ。
 俺の推測では、文珠なしでもこいつを倒せるはずだが──


「こいよ、亀」

 俺はサイキック・ソーサーと霊波刀をかまえた。
 相手に敵と認識させるために、俺は霊波砲を一発ぶちかます。

 キシュワァァーー!

 怒ったキャメロンは、霊波砲を数発、連続して撃ってきた。
 俺は正面からきた一発を、サイキック・ソーサーで受け止める。
 ズンとかなり重い衝撃が伝わってきたが、美神さんのように弾き飛ばされることもなく、その場で攻撃を受け止めた。

 よし、いける!
 俺は動きの鈍いキャメロンの側面にまわると、霊波刀で胴体に斬りつけた。

 ザシュッ!

 俺の霊波刀はキャメロンの甲羅を破り、深々と食い込んだ。

 ゴ…グワアァァ!

 キャメロンは体の向きを変えると、俺に向けて霊波砲を発射する。
 俺はサイキック・ソーサーで防御しながら攻撃をかわすと、隙をみてキャメロンの甲羅の上に飛び乗った。
 そのまま首の付け根の急所に向けて、霊波刀を突き刺す。

 グギャア! グシュルルル…………

 霊波刀の共振を頼りにヨリシロを探し当てると、一気にそれを体外に引き抜いた。
 キャメロンはヨリシロを抜かれると、元の亀に戻り消滅していった。


(続く)

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