ザ・グレート・展開予測ショー

とら、トラ、虎!36) おじいさんとひ孫!


投稿者名:ヴァージニア
投稿日時:(03/ 6/17)


タイガーの除霊事務所の初仕事から、はや2ヶ月が経っていた。

タイガーと茜は除霊仕事に一度も失敗することなく、順調に仕事をこなしていった。
茜も徐々に笛の扱いに慣れ、弱体の霊なら茜でも吸印することができるようになった。

そして年末に車の免許を取ったタイガーは、50万円の中古車を購入し、
移動範囲も広がり、直接依頼の仕事もちらほら入ってくるようになってきた。

事務所設立時の借金も、半分以上なくなってきた頃・・・



■高速道路の橋の下■
年が明けた1月13日金曜日の夜、近所の浮遊霊たちが集まっていた。
多くの霊が座ってる中、背広に帽子、メガネをかけた気のよさそうな細目のおじいさんが、司会の口上を述べていた。

《 えー、恒例13日の金曜日、ご近所浮遊霊親睦会、
  今回もたくさんの参加をいただき、これからもますますのご健康を・・・ 》
《 わしら全員もう死んどるって。 》

この司会の鷲五郎(わしごろう)・・・
・・・実は茜の曾祖父で、数年前まで茜の守護霊をしていたが、愛想がつきて今は浮遊霊となっている。
以前一度だけ茜を幽体離脱させ、おキヌに茜の体を貸した経歴があり、近所の霊の中ではおキヌと一番つきあいが長い浮遊霊である。
その司会の鷲五郎はおキヌを呼んだ。

《 えー、本日の特別ゲスト、おキヌちゃんでーす!! 》
「 どーもー。 」

ぱちぱちぱちぱち

《 待ってました、元幽霊!!
  キミのために1曲歌うぜ!! ア、ワン・ツー!! すぅぅてぇたあ おんなぁのあのほぉ〜♪  》
がんっ☆
《 うっせえよにいちゃん! 》

石神に殴られるジェームス伝次郎。

・・・そして幽霊たちの宴が行われた。
幽霊にも人望のあるおキヌの周りには、伝次郎や多くの浮遊霊が集まってきた。

《 おキヌちゃんもとうとう高校卒業かー。 最初あった頃はこーんなに小さかったのにのう。 》
「 あはははは、やだーゲンさんったらー! 」

・・・3ヶ月前に横島が事務所を出た後はさすがのおキヌもしばらく落ち込んでいたのだが、
浮遊霊仲間や友人からの励ましもあり、今はもとの明るいおキヌに戻っていた。
今回の浮遊霊親睦会に誘った鷲五郎は、そんな元気になったおキヌを、孫を見るように微笑ましく見守っていた。
そんな鷲五郎に伝次郎がたずねる。

《 そういやー、浮遊霊の中では白石さんが1番おキヌちゃんとつきあいが長いんですよね。 》
「 白石さん? 」

おキヌが問う。

《 鷲五郎じいさんの苗字だよ。 》
「 白石・・・どこか他の場所で聞いたことがあるような・・・・・・あっ! 鷲五郎さん! 」
《 なんじゃ、おキヌちゃん? 》
「 鷲五郎さんのひ孫さんの名前、なんていいました!? 」
《 ん? “茜”じゃが。》
『 やっぱり! 』
《 そういやあの不良娘にはもう長いこと会っとらんのう。 それだけが心配で、死んでも死にきれんわい。 》
《 いや、俺たちもう死んでるし。(汗) 》

伝次郎がつっこむ。

「 鷲五郎さん! ひ孫さんに会いにいきましょう! 」


                                  ◆


翌日、おキヌと鷲五郎はタイガー除霊事務所に向かって歩いていた。

《 あの不良娘がGSの助手をねえ。 》
「 私も名前を聞いただけで、まだタイガーさんの事務所には来たことないんですよ。 あ、ここですね。 」

タイガーの事務所のあるビルの前に来たおキヌたちは、建物の中に入った。
2階の事務所前の扉には外出中と書かれていたが、丁寧にも除霊の行き先まで書かれてあった。

「 お出かけ中みたいですね。 でも近所みたいですし、行ってみましょうか。 」



■線路下のトンネル■
おキヌたちは除霊の現場に向かうと、
トンネル内でちょうど、タイガーと茜が霊を挟むような形で除霊を行っていた。

ピルルルルルルルルルルルルルッ

《 ギニャアアアッ!! 》

襲い掛かるネコの動物霊を、茜は笛の魔力で近づかせなかった!
動物霊は反転し、タイガーのほうへと向かう!

「 ぷはっっ! そっちいったぜ所長!! 」
「 まかしときんシャイ!! 虎の爪!! 」

ズバッ!
タイガーは、右手から放出される5本の霊気の爪で悪霊を切り刻む!
そして茜は吸印札を取り出した!

「 今ジャ、あかねサン!! 」
「 わあってるよ!! 霊体・吸印!! 」


バシュ――――――――−−‐ッ  スポンッ


「 ふうーっ、任務完了ーっと! 」

猫の霊を吸印し、ホッと一息をつく茜。
茜の除霊を途中から見ていた鷲五郎は、久しぶりに会った茜の姿に驚いていた。
おキヌから聞いていたが、まさか本当にまともにGSの助手をしているとは、今まで半信半疑だったのである。

「 やったノー! 」
「 へへっ、こんくらいチョロイぜ! ・・・ん? 」

茜は、タイガーの後ろにいるおキヌと隣にいる霊らしきものに気づく。

「 こんにちはー。 」
「 お、おキヌちゃん! どうしたんジャ突然! 」
「 へへーっ、実は・・・ 」

ごしごしっ   じ―――っ
おキヌの隣にいる霊を、茜は目をこすって細目で見ると・・・!


「  ああ――――――――っ!!! ジジイ!!!  」





■タイガー除霊事務所■
来客用のテーブルを挟んでタイガーと茜、反対側におキヌと鷲五郎が座っている。
茜は面白くなさそうに横に向いている所に、鷲五郎はタイガーに頭を下げた。

《 いやー本当にありがたいことです!
  こんの不良娘を雇っていただいて、なんと御礼をしていいものやら―――! 》
「 い、いえー、こちらこそー! 」

頭をさげかえすタイガー。

「 ジジイ! 何しにきたんだよ! とっとと帰れ!! 」 「 まあまあ。 」

茜をおキヌがなだめると、鷲五郎はため息をついた。

《 はあーっ、まったく口の悪さは相変わらずじゃのう。 》
「 っせえ! 
  ジジイが幽体離脱させた頃から、あたいはひどい目ばかりあってきたんだ!
  どうせジジイが呪いかなんか、かけたんだろー!! 」
《 んなことするかいな。 わしはおまえの守護霊を辞めただけじゃ。 》
「 守護霊だあ? 」
《 誰にでも守護霊がおるわけではない。
  おまえさんのような、生まれつき不運を呼びやすいものは、
  わしのように血のつながった者が、些細な不幸を防ぐよう守護するんじゃ。
  ところがおまえときたら、授業はサボるわ、ケンカはするわ・・・・・・
  そんなおまえにわしは愛想つかしとったんじゃ。
  一度おまえを幽体離脱させて説教してやった時も、全然わしのゆーこときかんかったろ。
  じゃからわしはお前の守護霊をやめたんじゃ。 》

鷲五郎の信憑性のある発言に、茜はしばし黙り込む。

《 “因果応報”って知っとるか? 》
「 知らねえよ! 」
《 悪い行いをしたら、めぐりめぐって自分に不幸がやってくるということじゃ。
  よっぽどひどい目に合うというのは、そりゃおまえさんが悪いことばかりしとるからじゃろ? 》
「 あんだとー!! 」

茜はテーブルを両手で叩き、立ち上がった。

《 なんならまた守護霊をやってやろうか? 四六時中そばにおって、またおまえさんを守ってやろうか? 》
「 じょ、冗談じゃねえ!! んな気持ち悪いこと、死んだって御免だぜ!! 」
「 あかねサン! 落ちついて・・・! 」

茜を抑えようとするタイガー。

《 わしもじゃよ! わしも出来の悪い娘から離れて、今は気ままな浮遊霊生活を楽しんでおるからの! 》
「 鷲五郎さん・・・! 」

鷲五郎を抑えようとするおキヌ。

「 んだとー!! 成仏させてやろうか!! 」
《 おまえさん程度の力で、わしを成仏できるものか! 》
「 クソジジイー!! 」
《 こんの不良娘!! 》


「「 ・・・・・・・・ハアッ。 」」


顔を近づけ、互いをにらみ合う茜と鷲五郎。
その2人の会話に入り込めないタイガーとおキヌは、顔を見合して、やれやれという表情をしていた。





その後、鷲五郎はタイガーと2人で話があるとのことで事務所に残り、茜とおキヌは途中まで一緒に帰っていた。

「 あんのジジイ、余計なこと言ってねえだろうな? 」
「 大丈夫ですよ。 きっと鷲五郎さん、茜さんのことよろしくって言ってるんですよ。 」
「 どーだか。 ・・・そういやおめえ、あんときあたいのからだに入った幽霊だったな。 」
「 はい、その節はありがとうございました! 今は生き返って、美神さんの所で働いています。 」

明るく答えるおキヌ。

「 ふ〜ん・・・おめえんとこは儲かってんのか? 」



「 ええ、昨日も5000万円の仕事をしました。 」



どさっ =☆

・・・こける茜。


「 だ、大丈夫ですか? 」
わなわな・・・
「 ご、ご、5千万・・・!?(汗) 」
「 はい・・。 」

茜は必死で立ち上がり、指折り数える仕草をした。

『 うそだろ!? さっきの除霊が60万だから・・・いやまて!
  あたいらが今まで除霊してきた総額よりはるかに高いじゃねーか! 』

「 ・・・なあ、一応聞くが、おめえんとこはいつもそのくらいの仕事やってんのか? 」
「 はい、美神さんの受ける仕事は基本的にAランク以上ですし、
  1000万円以下の仕事はほとんど引き受けませんから。 」
「 危険じゃねえのか!? 」
「 まあそうなんですけど、美神さんも雪之丞さんも凄腕のGSですから。
  私は後ろで笛を吹いてサポートしてるだけですけどね。 」

『 あたいらが数十回除霊しねえと稼げねえ額をたった1回で・・・
  ちょっとぐらいリスクがあったって、そっちのほうが断然マシじゃねーか! 』

険しい顔して考え込む茜。
トップレベルの事務所の報酬額に、かなりショックを受けていた・・・




・・・・それから数日後。                         ◆




■タイガー除霊事務所■
茜は来客用の椅子に座り、テーブルに足をのせてマンガを読んでいた。
するとそこに和服を着た30代の女性が入ってきた。

「 あのー、所長さんいらっしゃいます? 」
「 あん? 所長なら出かけてるぜ。 」
「 そう、困りましたわ。 」
ひょいっ
「 仕事ならあたいが聞いといてやるよ。 」

茜はテーブルから足をおろした。


「 ・・・実は今日中にAランクの除霊をお願いしたいんです。 3000万円で。 」


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