ザ・グレート・展開予測ショー

#まりあん一周年記念『初期バージョンの破壊』


投稿者名:トンプソン
投稿日時:(03/ 6/17)

過去未来、人である以上は世の東西問わず厳かに行われる儀式の主人公になる。
限りない永遠を手に入れたカオスという男を除けば。
逆を言えば気に入った相手の儀式、
まどろっこしい言い方は止めよう、葬式にどうしても出くわしてしまうのだ。
「そう、か、とうとう逝かれたか」
中世時代、魔法使いが幅を利かした時代の酒でもアルコールである。
柄にも無く、どこぞで購入したのか、はたまた自作なのか、部屋といよりも実験室で不気味に輝く十字架。
その輝きの光源であるやや高めの燭台の下にいるのが、
『クゥ〜ン』
機械犬バロンである。
酔いの匂いなぞ理解するはずもないが、主の心が泣いてるのは判る。
カオスの生き方は、気に入った土地があればそこにいるがいつぞと無く、誰に告げるでもなく去っていく。
「そうでないと、辛くてのぉ、バロンや」
だが、この土地、かつてヌルと自称した魔がいたこの場所、そしてその姫がいた所に、
「もう、60年もいたのか。ふふ。ワシとしたことが」
マリア姫は、カオスの求婚を蹴り、さる領主の血筋の者を入れ、幾人かの子を設けた。
今現在、その孫が領主を勤め、知らせた訃報であった。
文面の最後には、
『気が向けば葬儀へと』
とあった。その文章はとっくに燭台の煙へとなっている。
「・・・なかなか気の利く御仁じゃな。現城主殿は」
と、漏らしている。
そう。もう飽きているのだ。葬儀という儀式に。
数百年前までは、涙も出たが、
「枯れ果てたんジャよ、バロン」
だからこそ、あえて非情をも出来るのじゃと、アルコールの廻る口元に笑みに似た形が毀れる。
不意に。
十字架が音も無く廻りだしたかと思えば、蝋の溶け出した部分が重力に逆らっていく。
「ふふふ。魂を上に上げずにあえて、この場に留める。そして」
十字架の奥にある秘密の部屋にある人形、機械が奇妙な音を立てている。
「今こそ、今こそ、永久の命を完成させることが出来る、出来るぞっ!」
目の輝きが尋常では無い。
燭灯が倒れる。それを察知したバロンがひょいとよける。
「何?抵抗・・しておるのか?」
いささか驚いたが、魔加工は完璧である。
「頼む。マリアワシの元に・・来て・・」
瞬時。
「な、何をするのだ!バロン」
何時ぞやからか、老犬の動きであったバロンがそれこそ、若犬の速度で十字架に噛み付く。
「やめろ!お前の身体ではっ!」
止めるにも時遅し。
火災が生じ、カオスも身一つで逃げ出すのがやっとである。
「バロン・・そうか。ワシの愚考を体で・・・」
雨が何時始まったのであろうか、それすらも判らなかったカオスである。
「・・雨の葬式であったか。すまなんだ。マリア姫よ」
柄にも無く、十字架を切った男の目には枯れ果てたとしていた涙が一筋。
その火災が静まり返った後、焼け落ちた廃墟で唯一残ったものがある。
「これは・・、m666の原型」
それから、カオスは人工幽霊の精製に着手したことは言うに及ばない。
その後のマリアとかの姫の繋がり、実は魂レベルではないということになる。

FIN

今までの コメント:
[ 戻る ]
管理運営:GTY+管理人
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa