ザ・グレート・展開予測ショー

ひのめ奮闘記(その25)


投稿者名:ユタ
投稿日時:(03/ 6/16)


夕暮れに照らされる六道女学院校舎。
時刻は既にPM4:30をまわり、世界を赤く染めていく。
そんな斜陽の世界、六女体育館裏庭に立つ二人・・・・美神ひのめと三世院京華は向かいあったまま一歩も動かなかった。

「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」

霊力で全身をガードしつつ、霊圧を上げたり下げたりと相手の様子を探りあう。
そんな静かで疲れる攻防が続いていた。そして、この戦いで苦戦しているのは・・・ ・・・ひのめのほうだった。

(・・・・・・まだこんなに差があるなんて・・・・)

ひのめは空手・・・というよりは中心線を隠した古武道に近い構えを取りながらツーと冷たい汗を流した。
確かにひのめの霊力は上がった、しかしそれは全開で使えば暴走、心眼の制御付きで8割出せればいいほうだ。
そして、キャリアの差・・・・最近覚醒したひのめはと違い多大な霊力の幼い頃から身につけ、
使用してきた京華とは3日くらいでは埋まらない差があった。
そして・・・

「どうしました・・・・かかってこないんですの?」

京華が無用心一歩踏み出す。その動きに合わせるように下がるひのめ・・・。
戦術ではない、京華の雰囲気に飲まれているたのだ。
今までは実力が離れていたために気づかなかったが、霊力が接近したからこそ相手の強さが分かる・・・そんな心境だった。

『ひのめ・・・・どうせ当たって砕けろしかないわさ。やるなら後悔しないようにやりな・・・』

「心眼・・・」

そうだ。まずは先手必勝!これが私の手じゃないか・・・とひのめが踏み出そうとしたそのとき・・・

「あっ!」

ひのめが驚きで声を上げる。
先の手出そうとしたひのめの眼前には既に京華が間合いに入っていた。
その意表をついた攻撃にひのめ反応が遅れる。

「このっ!」
「遅い!」

一応右フックで頭部を狙って見たもののヤケクソで出した攻撃が京華に当たるはずもない、
京華はそれをダッキングでかわすと逆に左拳に力を入れるとひのめの右わき腹に叩き込んだ。

「がっ!」

そこから伝わる衝撃がひのめの動きを止める。
息苦しさが襲い、足から力が抜けると体がカクっと九の字折れた瞬間・・・京華の口元がニヤリと歪んだ。

「喰らいなさい・・・・」

ドカンっ!

とどめとばかりに霊力を込めた掌打の衝撃がひのめの胸部を貫いた。
まるでスローモーションの仰向けで後方に吹っ飛んでいくひのめ。
2、3m程背中を地に滑らせると少しだけ砂煙をあげると、そのままピクリと動くこともなく空を仰いだ・・・

「うふふふふははははは・・・・・・っ!!!!
 ふん、結局美神家なんてこんなもんですわね・・・・次回から『三世院京華の華麗な生活』ですわね・・・」

高笑いしながら京華がパチンと指を鳴らした。



スタッフロール

『ひのめ奮闘記』

出演

主演   三世院京華

ザコ1  美神ひのめ

脇役   江藤幸恵


設定協力・・・

原案・・・














(ひのめ・・・・・何かあったのか・・・?)

簡易木刀で裏モードになったままの幸恵が顔しかめる。
先ほどまで感じていたひのめの霊力が急に小さくなったためだ。
いくら性格が変わろうが基本は幸恵、親友が心配でその場を離れようとしたとき・・・

「待ちな・・・よ」

ガクガクと震える足、笑う膝、揺らぐ視界、走る激痛、切れる息。
そんな状態で・・・・・・・・・かすみは立った。

「まだ立てるのか・・・」

内心は少し驚いているのだが、今の幸恵はそれを表には現さない。
無表情のまま再び中段の構えをとってみせる。

「京華達のところへは行かせない・・・何も分かってないあんたなんかに・・・」

満身創痍・・・それなのにかすみの瞳はギラギラと幸恵を睨みつけた。
執念、怒り、誇り・・・・・・その瞳にはいろいろなモノが込められている、
その中でも一番輝いているものそれは・・・・・───『想い』

「お前・・・・・・・・ただの取り巻きとかじゃないな・・・金でも権力でもない・・・京華に何かカリでもあるのか」

「金?権力?カリ?取り巻き?・・・・・・・・・・笑わせないでよ・・・。京華のことを何も知らないあんたなんかに何が分かる!」

カーン!コーン!!ガンっ!

今まで以上の気迫の一撃、何とか受け止めたものの今度は幸恵が押される番だった。
かすみは今までのダメージを感じた素振りなどみせず猛攻を仕掛けた。

「何がお前をそこまで動かす!?京華に何がある!?」

「・・・・・・・・・・・・・・京華は!京華はっ!!」

手は止めない、しかしかすみの表情が明らかに曇っていく。
悲しみ・・・その言葉が一番しっくりくるだろうか・・・・・・・・・そして
かすみはその表情のまま語りだした・・・───京華の過去を















セル画担当 ・・・・・

スポンサー ・・・・・

     ・

     ・

     ・


『ひのめ奮闘記』  完






「ふぅ・・・・・・・・・これでいいですわ」

「よくな───────────────いっ!!!!」

「!!?」

その怒鳴り声に京華の目が丸くなった。
声の主・・・ひのめはハンドスプリングで「よっ」と起き上がるとまりで何もなかったように服の汚れを手で払う。
その余裕ぶった態度が当然気に入らない京華。

「あら・・・美神さん。やせがまん?それともただの強がりかしら・・・」

あくまで余裕を持って挑発してみる。
だが・・・

「ん?ああ何か思ったよりあんま効かなかっただけ」
『どうでもいいけどセル画担当なんていないわさ』

京華はひのめと心眼の言葉に怒りでカーっと顔が赤くする。
こんな格下相手に!!その感情と共に一気に間合いを詰め右拳を放った。しかし、

「なっ!」

その拳はいとも簡単にかわされる。
さらにジャブ、ハイキック、ロー、エルボーとコンビネーションを交えた攻撃もまるで当たることはない。

「生意気なっ!」

ムキになり突き出した左ストレート。
だが、それはひのめが待っていた瞬間だった。

「でやああぁっ!!」

ミシぃっ・・

電光石火の一撃。
京華の左ストレートをかわしながら放った正拳・・・・それは見事に京華の腹部へと突き刺さっていた。

「うっ・・・がはっ・・・」

ともすれば吐き出してしまいそうになる嘔吐感が京華を襲う。一気に体から力が抜け動きが止まる。

『ひのめ!今だわさ!!』

「うああああああああああああああああああっ!!!!!!!!!!!!!!」

咆哮。
それと共に霊力のこもった連撃が京華に叩き込まれた。
人の急所の集まりである正中線を中心におよそ相手を戦闘不能にするための攻撃。
それでも顔を狙わないのは同じ女性としての感情だろうか、
とにかくひのめの人生史上最も強烈な打撃が繰り出されていた。

(チャンスはここしかない!)

優勢なのにひのめは焦っていた。
なぜなら・・・・ひのめの霊力はあと少しで尽きようとしていたのだから・・・・
それは先ほどダウンしたときの話し合い・・・









『ひのめ・・・このままの体勢で聞くだわさ』

脳波に乗せて聞こえる心眼の声に耳を傾けるひのめ。

『今の攻撃まさか効いてないわよね?
 ちゃんとヒットする瞬間に他の箇所から霊力を集めてその部位だけ守ってやったんだから』

(説明的なセリフどうも・・・・ちゃんと私だってヒットポイントをずらしたわよ・・・
 まぁ・・・何発か食らったけど)

『まだ戦えるね?んじゃ作戦言う話さ。
 結論から言うと勝てるわさ』

(最初からそのつもり♪)

『冗談はいいわさ。いい?今の攻撃で分かったわさ・・・・・・・・
 京華は自分と同レベル以上の相手との戦闘経験、そして対人訓練が少ないわさ。
 今の攻撃も確かに霊力と体の動きは申し分ない・・・でも、微妙に相手の急所を外してるわさ』

(それは気づいてるけど・・・・持久戦になったら霊力尽きていつか強烈なのくらっちゃうわよ?)

『そこで作戦。あんた京華の攻撃に目と体はついてけるわね?
 あんたが避けてる間に防御の分の霊力を攻撃用に変換するから、
 相手が空ぶったら一気にいくわさ!全身全霊を賭けて!』

(結局・・・・玉砕覚悟ってことよね・・・トホホ)








といういきさつがあった。
つまりここで京華を仕留め切れなければひのめの負けなのだ。

ひのめは今まで何度も負けてきた・・・。
しかし、今回は心眼に制御されているとはいえ霊力が覚醒しているのだ、
才能だけでやっているお嬢様なんかに負けるもんか!
ひのめの心の叫びと同時にその拳が唸りを上げ京華の腹部にめりこんだ。

「ごっ・・・は」

その瞬間、京華の膝がガクっと折れた。瞳に生気なく、拳から伝わる筋肉の感触のも力はない。

(勝った・・・)

ゆっくりと倒れていく京華の姿に勝利を確信するひのめ。いや、ひのめだけじゃない・・・・京華自身も・・・・

(負け・・・・・・・・る?・・・・・・・・・このわたくしが?・・・・・・・・・・誰に・・・・・・・・・・美神家に?
 ・・・・・・・・・・・・・・何で・・・・・・・・・美神家・・・・・)

混沌とした意識の中倒れ行く京華・・・そのとき、胸元から何かが垂れ下がった。
それは───朱色のロザリオ。

「ぐっ!」

真紅の十字架が瞳に映った瞬間、京華の目の色が変わった。
全身の力をかき集め上体を起こすと、力を振り絞り左手をひのめの顔に被せ、足をひっかけると・・・

「うああああぁぁぁぁ───っ!!!!!」

およそ京華から聞いたことのない叫びと共にひのめを地面に叩きつけた。
その一瞬の動作と油断で受身を取りそこなったひのめは背中を強打し、少しの間体が痺れ、呼吸が止まる。

「わたくしは!!私は敗けるわけにはいかない!!あなたなんかに!!
 美神家何かに敗けるわけにはいかなのよぉぉ──っ!!!!」

「くっ!」

華麗を自負するようなそれまでの攻撃とは違う攻撃・・・踏みつけを転がりながらひのめは避けた。
何とか起き上がるがすかさず振り上げた拳がひのめを襲う、何とか両手でそれを防いだ・・・そのとき・・・

キィィィィィンっ!!!

甲高い音がひのめの耳に聞こえてくる。そして次に聞こえたのは心眼の声だった。

『ひのめ・・・・・・・・・・・・・・・・・少し京華の過去を・・・・・・・・心を見てみるわさ・・・・・・・・・・・』

「え?」


──その言葉と同時にひのめの視界はブラックアウトした


                              その26に続く

今までの コメント:
[ 戻る ]
管理運営:GTY+管理人
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa