ザ・グレート・展開予測ショー

〜『水晶迷宮』〜


投稿者名:かぜあめ
投稿日時:(03/ 6/14)



幾重にも入り組んだその回廊を・・、青年は一人歩いていた。

水鏡の闇が立ち込めて・・。
そこにあるのは己が姿を確認できるだけの・・ただ一片の陽光。

色彩というものを否定した壁面が、うっすらと輪郭を映し出す。

先に広がる黒へと沈み、

・・。


それは不朽の迷宮であり続ける。

彼が意図しようと意図しまいと、


望みさえすれば


その透明な廊下はいつまでも・・

自分と・・その延長上の「彼女」をつないでくれるのだから。

          
            
              ◇



陽差し。


かたわらから静かな寝息が聞こえてきた。
部屋には二人以外の影はなく・・
食後、ソファーで休んでいた彼女は、
そのまま まどろみへと意識を落とした。


「・・重いって・・。」

安心しきって身をよせる少女。青年は苦笑した。

彼女の、光に透ける金色の髪を・・ゆっくりと手ですいてみた。
木漏れ日が乱反射を起こす。

「・・・・ん・・。」
睡眠の邪魔だとでも言うのだろうか?
・・彼女は少し嫌そうな顔をして・・、しかしさらにぴったりと体を預ける。

・・青年はもう一度苦笑していた。








・・・・。

彼は思う。


せめて自分がこの娘に・・
この娘の思いに心から応えることができたのなら、
多分それは・・双方にとって救いにも等しい行為なのだろうと。


・・あの日。
彼女が想いを告げた日に・・、
自分は一体何を話した?


―――『・・昔話をしてもいいか?』

『昔話・・?」


・・・それは夢の破れた男の話。



・・・。
・・・・・・。


差し入る光に目を細め、両の手をきつく握り締める。

拒絶か・・あるいは彼女に知って欲しかったのか・・。
青年は未だ答えとは程遠い場所にいる。



「・・・・横島・・。」


夢を抱き始めた少女の瞳は・・、夢の壊れた青年とその延長にいる一人の蛍を・・一体どのように捉えるのか?

思えばそれは迷宮にも似て・・、

そばにいても手の届かない。見えない壁に阻まれて近づくことすらままならない・・。


・・青年は・・思考を中断する。

今しばらくは・・、答えを出すのを避けたかった。


錯覚だとは思いたくなかったから。
少女を見つめる現在の・・、自分の想いが偽りだとは思えなかったから。


・・だから青年は・・
・・・未だ入り組んだ迷路の中にいる。
ともし火すらない道程に・・静かに自分の身をおいて・・、



「一体お前は・・どんな夢を見てるんだろうな・・。」


・・今のうちに泣き溜めでもしておこうか。
彼女が目覚めたその時に、屈託のない・・、優しい笑顔で迎えられるように。




                   ◇




―― そこは水晶の迷宮だと・・

夢の中で少女は悟っていた。

暗闇にただただ煌く、ガラスの扉。

自分は足を踏み入れようとしている。
愛しい人に触れることすらままならない・・夜天に輝くその場所へ。

それでもいいと少女は思った。


・・この中には今、「彼」がいる。
たとえ迷って朽ち果てようと・・、それは「彼」へと近づくことに他ならない。


・・だから微笑んだ。

無限の回廊の平行線には・・いつだって彼が待っているのだから。








〜no one knows other stories....〜





〜あとがき〜

たまにはタマモにラブコメを書いてあげなさい>自分(笑)
いかがでしたでしょうか?
ひさしぶりにタイトルのつけ方を変えてみました。
やっぱり横タマははお互いの気持ちに気付いた後から問題なのではないかなぁと思います。
タマモだと分かりにくくしてみたので、少しいじれば他のカップリングが好きな方も楽しめるかと思います(爆)

それでは次は 〜君とワルツと・・〜第5話でお会いしましょう。ご意見ご感想お待ちしています。


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