コモレビ ――既視感―― −後編−
投稿者名:veld
投稿日時:(03/ 6/14)
『それは幻なのか?』
『それとも、心の中に浮かぶ願望が具現化した姿なのか?』
『『記憶』の中に生まれた、幾ばくかの惑い』
『そして、熱く焦がれる思い』
『既視感・・・』
既視感?
・・・ふっと。
意識が戻る。
彼は、隣を歩く彼女を見つめ。
繋がっていない腕を見つめて、振ってみる。
思わず、唇に触れて見るものの、何が変わる事でも無い。乾いた唇はただ、何時もと同じように、楽しくも無い感触を指先に与えるだけ。
彼女は訝しげな表情を浮かべて彼を見た。
何ですか?と、目で尋ねてくる。彼は首を誤魔化し笑いを浮かべながら、首を横に振った。
「何でもないよ」
微妙に感じる距離感。
何故だろう?―――と、思って。
ふと、空を仰いだ。
こんな風に、意識する事も無かったのに。
眩しい―――霞む目を、二度三度瞬いて。緑の枝葉から漏れる光を見つめた。風は緩やかに、彼女と彼を包む。圧倒されそうなほどに―――重く侘しい時間を刻む・・・木々の中で。
見覚えのある光景・・・まだ、一度もここには来たことが無いはずなのに。
何とも言えない、感覚。
使命感?義務感?違う―――そんなんじゃなくて。
口をもごもごさせながら。考える。
歩みは止める事無く。―――振り返り、彼女を見つめ、そして―――見つけた。
視界いっぱいに入る―――木漏れ日の下に佇む苔むした大木―――。
その大木の前で立ち止まる。
あたりに生える木々の中で、最も大きいその大木の前で。
「・・・小鳩ちゃん?」
彼は、そっと、彼女に手を差し出した。彼女は彼の顔を見、照れくさそうに手を差し出し、重ねた。
「何ですか?横島さん・・・」
尋ねる声に、不安の響きはない。心中ほっとしながら、大木を見つめた。重ねていない左手を木の方に向け―――
「この、木の下で・・・さ」
「・・・?」
「キスを・・・しよう」
「・・・はい」
ムードなんてもん、わからないけど。
キスの仕方ってのも、分からないけど。
ただ、既視感のままに―――。
消えた『既視感』―――
帰ってくる時間―――
ただ、そこにあるのは。
彼と彼女の一瞬の時。
帰ってくることは無い、帰る必要もなく―――
美しい、ただ、一時の軌跡。
早い話が―――おもいで―――。
たいせつな二人の―――思い出。
「・・・横島さん?何してるんですか?」
大木の前。彼がポケットから六つ、文珠を取り出した。
「ん?」
何でもないよ。―――微笑みを浮かべて。
彼女の頬をそっと撫でる。くすぐったげな彼女の表情に、きゅん、と胸を締め付けられる思いを覚えながら、彼はそっと文珠を地面に置いた。
煌き、そして、文珠は消えた。
「・・・何をしてたんですか?」
彼女がほわん、とした顔で尋ねる。隠す意味も無かった。
「・・・そだね・・・簡単に言うと・・・」
過去の二人に・・・。
『アドバイス』・・・かな?
終わり
今までの
コメント:
- 甘っ!veldさんの甘ラブSSキタ──(笑)
というか、小鳩SSって久しぶりに見たので新鮮でした。
おキヌやルシオラもいいけど、小鳩の健気さもうやっぱイイと思える作品でした♪ (ユタ)
- さすがはveldさん・・。感動するやら色々勉強になるやら・・。
小鳩ちゃんの小説って少ないですよね。
ステキだ!!ビバ!!veldさん!!(笑
個人的にキスをするところがたまりません〜
投稿お疲れ様でした〜 (かぜあめ)
- 3度目のデートでのKISS・・・甘く、センチメンタルな気分です。
・・・ところで、“いなごの佃煮とマヨネーズのサンド”って、ひょっとして貧のアイディアなんでしょうか?
“チーズあんシメサババーガー”という最強の食べ物を開発した神ですし。(笑)
一度食べてみたい・・・そのサンドイッチ。 (ヴァージニア)
- さきを越されたΣ(゚ロ゚)
小鳩ちゃん狙ってたのに狙ってたのに(涙)
切なくてでも綺麗で面白かったです’(つーかこんなコメントいいのかなあ (hazuki)
- うぃ、ユタさん、かぜあめさん、ヴァージニアさん、犬御所様、コメントありがとうございます!
感謝の気持ちと共にコメントを返させて頂きます!
・ユタさん
甘ラブなお話になっていると言ってもらえて嬉しいやら恥ずかしいやら(笑) 感謝です!
小鳩SS珍しいですネ(笑) だから書いた、と言うわけでもないですけども。好きなキャラだから、書いて見ますタ。
健気、そう、健気なんですヨ。健気さ故の高ポイント。いえ、皆大好きなんですけども(ゑ?) (veld)
- ・かぜあめさん
うぃ・・・(照) 褒めていただけて嬉しいです。褒められると伸びる子です故に(笑) 感謝です!
少ないですネ・・・薄幸の少女故でしょうか、違いますか。違いますね。(勝手に自己完結) むぅ、何故だろう・・・。
キスですかい・・・むぅ、あっさり風味を意識してたわけですが(ゑ?) 失敗です(笑) (veld)
- ・ヴァージニアさん
甘くセンチメンタル。センチメンタルってなんだろう?と、そんなことを思って調べてみた次第です(笑) 感謝です!
蝗の佃煮とマヨネーズのサンド・・・どうなんでしょうね?でも、貧ちゃんが作ったら昇天するような代物が出来そうですし(笑) ですから、違うのではないかと。思ったりしまふ。
ふふふっ、比較的実現可能な範囲なものであるっぽいので試してみればいかがか・・・、と無責任に薦めてみたりなんてしたり(コラ) 味は保証しませんが(笑) (veld)
- ・犬御所様
切なくて綺麗で面白い・・・自分の望んでいる評価をいただけたあぁぁぁっ!!と、空に向かって吼えつつコサックダンスをば。(笑) 感謝です!
先とか後とか、あんまり意識しないで下さい(笑) というよりも、犬御所様の小鳩ちゃんの話が読みたいですし。ですんで、期待させて頂きます。頂かせてください。
(こんなコメント返しで良いのかなぁ・・・と、不安がってたりする私、許してください〜) (veld)
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