ザ・グレート・展開予測ショー

ひのめ奮闘記(その24(B))


投稿者名:ユタ
投稿日時:(03/ 6/12)




『かすみ・・・・あなたも見てるだけじゃ暇でしょ?
 何なら江藤さんとNO.2決定戦でもやったらどうかしら?』


京華の突然の提案・・・・それに一番驚いたのは声をかけられたかすみではなく、傍観者の幸恵だった。

「な、何言ってるの!?ね、ねぇ〜橘さん?」

慌てた口調で幸恵はかすみに同意を求める。
私たちが闘う理由などない・・・と。しかし・・・

「ま、いいけど・・・」

「ちょ!?」

かすみの一言にますます顔が青ざめる幸恵。
生来気が弱く理由なきケンカなどしたことない幸恵はどうにかして話しをまとめようとするが、
対戦者はそう思っていなかった。
かすみはスカート大きく両手でまくりあげる、男性ならずも同姓がそんな行動をとれば戸惑うのが人間だろう、
しかし次の瞬間その行動に真意を理解する。

「私の武器これなんだよね」

太ももにつけられた大きめのホルダー・・・そこから取り出されたのは。

「じ、神通トンファー!?」

幸恵の言葉と同時にヒュンヒュンと2本のトンファーを回してみせる。
準備運動であろうその動きから見てもかなり使い慣れていることが分かる。
一方の幸恵はこんな展開は予測していないので武器など用意しているはずもない。

「・・・・ひ、ひーちゃぁん」

情けない声で親友に助けを求めてみる。
その親友の反応というと・・・



「ごめ〜ん!私も1対2じゃキツいから頼むわ☆」

「嘘つきぃ─────っ!!見てるだけでいいって言ったじゃいの─────っ!!!!?」

苦笑いでシュタっと手で『悪い』と合図するひのめに泣きながら抗議する幸恵。
だが、もう戦いは始まってしまった。

「行くよっ!!!?」

「来ないで!わぁ!!!」

ヒュンっ!!!

かすみのトンファーを危機一髪でかわす幸恵。
2、3発・・・様子見で手加減もあるだろうが何とかわしていく。
だが、その振りはしだいに細かく、鋭くなり幸恵の身体能力ではそろそろ対応がきつくなってきた。

「こうなったら!」

幸恵の目の光が強くなる。
何かあるのか!?とかすみが動きを止めた瞬間だった。

「逃げる!」

「なっ!?」

かすみは幸恵のそこ行動にガクっとこけそうになる。
何せホントに背を向け逃げ出したのだから。

「待てぇぇ!!」

「うわぁぁぁぁん!!何で私までぇぇぇっ!!?」

「ごめ─────んっ!今度あんみつおごるからね──────────っ♪」

「そんなんじゃワリが合わないわよぉっ!!ひーちゃんのアホ─────ぉぉぉぉ・・・(←ドップラー効果)」

泣きながら逃げる幸恵。それを追うかすみ。この状況をあんみつで済まそうとするひのめ。
『こいつはいつか友人を無くすんだとうなぁ〜』と、思う心眼と京華だった。











で、現在に至る。


「はぁはぁ・・・鬼ごっこはここまでよ」

肩で息を切らすかすみ。
両手にトンファーを握り、追い、攻撃を仕掛け、そして獲物は仕留め切れない。
それらがかすみの体力を削っていく。
しかし、その獲物・・・・幸恵も限界が来ていた。
とうとう裏庭の隅っこゴミ捨て場まで追い詰められ逃げ場はない。

「も、もうやめない?ほら、私達花も恥らう女子高生なんだし、
 こんな殴り合いより部活や恋愛に青春したほうが・・・・・」

「バカにしてるのか!!!?」


ドカァァァっ!!!バキバキィィィ!!

かすみの怒りの一撃は捨ててあった学生用机を真っ二つに粉砕し、
幸恵はその破片に足を引っ掛け転倒してしまう。
デモンストレーションのつもりでわざと外した為幸恵に傷はない、
しかし、それを食らえばいくら霊力でガードしたからといっても骨の1、2本は折れてしまいそうだった。

「大丈夫よ・・・手加減して脳震盪くらいですませてやるから・・・・」

そう言って右腕のトンファーを振り上げた。
かすみが夕陽をバックにしているため幸恵からはその表情は見えない。
いや、それは幸恵から見ればよかったかも知れない・・・

(・・・怖い・・・いやだぁ・・・)

腰を地につけながらガタガタと震える。
幸恵の脳裏に焼きついて離れない理由なき罵りと理不尽な暴力、
いじめという過去はいくら性格が明るくなろうが心の傷を残したのは変わりはない。
今、幸恵はその過去と現在の状況が重なり一種のパニック状態に陥っていた。

(助けて・・・誰か助けてよ・・・)

グッと目を閉じる。
そんなことで現状が変わるはずもない、逃避行動に他ならない。
そのとき・・・幸恵のまぶたにある光景が浮かんだ。






『うえぇぇ・・・ううっ・・やめてよぉ・・』

地面に丸くなり泣き震える一人の女の子・・・・・いや、中1になったばかりの幸恵。
そして幸恵を囲うように立っている4、5人少女。
泣き叫ぶ幸恵を楽しそうに見下し、蹴り、罵る、それは幸恵が泣けば泣くほどエスカレートしてきた。
そのとき・・・

また新たな少女が登場する。
新品のセーラー服に肩まである亜麻色の髪の少女。
そしてその少女は・・・・・・・・・・殴った。

いじめっ子達を蹴りとばし追い返すと・・・そっと幸恵に手を差し出す。

『大丈夫?』

逆行で顔は見えない・・・それでも・・・
幸恵はその少女の名はわかった・・・

『うん・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



そして幸恵はカッっと目を開いた!


ひーちゃん!!」

幸恵は瞬時に『何か』を手につかみ振り下ろされたトンファーをかわし、かすみの懐へ飛びこんだ。

「なっ!?」

そのいきなり行動に反応しきれず、驚きをあらわにした瞬間。

ドフっ!

かすみの腹部に鈍い痛みが走った。
その痛みはかすみの呼吸を一瞬止め、体を硬直させる。
何とか倒れるのだけは堪えたが、ヨロヨロとした足取りで少しだけ後ずさった。

「ごふ、ごほっ・・・も、モップの柄?」

幸恵が手にしているものそれはブラシの部分がない木製の柄。
おそらくもう使えないとこのゴミ捨て場に誰かが捨てたのだろう、
それを幸恵が手にしたことは偶然、しかし、それを幸恵が握ろうとしたのは自分の意思、必然だった。

「そんな棒っきれ一本で何をするつもりよ」

かすみはやっと落ち着いきた呼吸でさっと構える。
例えどんな武器を持とうが幸恵に負ける気などなかった。
当の幸恵は無言のまま2、3回程モップの柄を振り回してみる。

ヒュンっ、ヒュンっ、

と素早く鋭く空気を裂くと、

「真剣とはやはり具合が違うな・・・竹刀・・・いや、木刀と思えばいいか・・・」

静かに中段の構えを取って見せた。

(な、何なの・・・)

トンファーを構えながらかすみは動けない。
いや、動くことが出来なかった。
幸恵の構えには隙などなく、うかつに踏み込めばやられるということが分かっているからだ。

「どうした・・・こないのか?」

前髪で陰って見えない幸恵の表情。
しかし、あからさまに挑発が怒りでかすみの体を動かした。

「なめるんじゃないわよ!今まで手加減してやったのに!!」

ダッ!

かずみは地を蹴ると左手のトンファーを力いっぱい加速させ幸恵のわき腹を狙い済ました。
しかし・・・


ドンっ!


「がっ!」

突如左肩に激痛が走る。
腕の力が抜けトンファーを落としそうになるが何とか耐え、
右腕のトンファーで再び仕掛ける・・・だが

ドガッ!

「ぐっ!!」

今度は右肩。また激痛が走り後退する。
不可思議な鈍痛、対戦者の幸恵は何もしていない、いやしているようには見えなかった。

「このぉっ!」

気合の叫びともに再び踏み込む。だが、実は今回は囮。この痛みの正体をつかむのめの。
3m、2m50cm、2m・・・幸恵との距離が詰まっていくそのとき


シュッ!

突如幸恵の武器が大きくなった。
いや、大きくなったんじゃない。

「突きかっ!!?」

ガチーンッ!!

腕を十字させ神速の突きをトンファーで受け止める。
このまま反撃と思いきや・・・

「くっ!」

幸恵の突きの威力は凄まじく防御を解けばたちまち腹部を打たれるだろう。
今までの不可思議な衝撃、それはあまりにも速すぎて深く注意しなければ見えない突きだったのだから。

「はぁはぁ・・・」

2、3歩下がり再び間を空ける。
相手が即席の木剣を使いこなしている以上トンファーの間合いでは不利なのは明白だからだ。
トンファーは本来防御に優れた武器、ならばまずは相手の出を伺う。

(・・・・にしても)

この幸恵の変わりよう。
これが一番かすみを動揺させていた。
霊力が高いのは知っている、それでも身体能力や格闘戦では自分に及ばない・・・
そんな認識だったはずなのに。

かすみが心で舌を巻いていると

「来ないならこっちから行くぞ・・・・」
「!!?」

ハシュ・・・

幸恵は一足飛びでかすみの間合いに入る、いやさらに踏み込んだ。
即席木剣もトンファーも使えない超近距離、お互い決め手に欠ける距離。

(こんなに近づいたら攻撃なんて出来るわけ・・・)

と、思った瞬間。

ゴカンっ!!

かすみの顎が跳ね上がった。

(なっ・・・)

グワングワンと揺れる視界で幸恵の攻撃見る。

(柄頭・・・)

そう幸恵は肉薄するほどかすみに接近した瞬間に刀剣でいうところの柄(つか)の末端で、かすみの顎をついたのだ。
もちろん本気でやれば骨が砕けるのだが、そこは絶妙な手加減で脳を揺らす程度ですました。

「あっ・・・」

かすみはそのままガクっと膝をつくとトンファーを手から離しうつぶせに地面に倒れこむ。
幸恵はただその光景を冷たい視線で見下ろすだけだった。

「・・・・あんた一体何者よ・・・二重人格ってやつ・・・・?」

体が動かないかわりに口を動かすかすみ。
かすみの言うとおり今の幸恵は鋭い眼光に、冷血な表情、そして相手を威圧する雰囲気。
さらに口調まで変わっている。
普段の幸恵を知っている者が見ればとても同一人物と思えないと口を揃えているだろう。

「私は刀剣を持つと少しだけ性格が変わるだけ・・・・・ただそれだけだ・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・」




『少しじゃねー』裏・人格モードの幸恵に激しくツッコミたいかすみだった。






                                 その25に続く



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