ザ・グレート・展開予測ショー

ひのめ奮闘記(その24(A))


投稿者名:ユタ
投稿日時:(03/ 6/12)





シュバッ! ゴガぁぁンっ!!!

鋭い風切り音と粉砕音が彼女の鼓膜を揺らす。
そして『粉砕された物』がパラパラとしゃがんだ彼女の頭に落ちてきた。

「ひ、ひえ〜直撃してたら死んじゃうよ」

『粉砕された物』、六道女学院・コンクリート校舎の欠片を払う間もなく『敵』の間合いから逃れようとする少女。
だが、それを執拗に追って攻撃を仕掛けるのもまた少女だった。

「お、なかなかすばしっこいじゃない・・・・江藤幸恵さん?」

「あははは、出来ればこれ以上の暴力行為はやめてほしいなぁ・・・橘かすみさん」

かすみの余裕の笑みとは対称的に冷や汗交じりの苦笑いを浮かべる幸恵。
まだ買って2か月くらいの制服は砂に汚れ、ところどころ破れてしまっている。
私立ということもあって高価な制服のなれ果てを母の千穂が何と言うか・・・
ニョキニョキと2本角を生やし激怒するであろう母を思い浮かべうなだれる幸恵だった。

「何ボサっとしてんのさ!!」

「わっ!?」

幸恵はかすみの声と共に飛んでくる攻撃の手・・・・トンファーを間一髪で避ける。
ギリギリでかわした為かパラパラっと幸恵の黒い髪が数本裂け宙を舞った。

「ぶ、武器攻撃は卑怯なんじゃないかなぁ?」

「なら、あんたも使っていいのよ?」

「と、言われましても・・・」

クルっと周囲を見渡すが学校の裏庭何かにそうそう武器が落ちてるわけもなく、
右往左往するだけの幸恵。しかし、相手が素手だろうがかすみは容赦などはしなかった。

「戦いになるって分かってたんでしょ?自分の準備不足を恨みな!!」

「そんな無茶なぁぁぁ!!きゃぁっ!」

ひのめほど身体能力のない幸恵はかすみの攻撃を大きくバックステップでかわすと、
ここは兵法「走ぐるを上計となす」に習って・・・つまり簡単に言うと「三十六計逃げるが勝ち」と
背を向け走り出す。

「こらぁ!待ちなさーい!」

「トンファー振り回しといて何言ってんのよぉぉ!!!」

幸恵は『元いじめられっ子の逃げ足は伊達じゃない』とばかりにかすみを引き離す。
相手が武器を持っているということを考えても幸恵の逃げ足はハンパではなかった。
それでも全力疾走すれば息が切れ呼吸が荒くなる、酸素をくれと肺が要求し、
心臓の動きが加速していく。

(はぁはぁ!・・・何で私がこんな目にぃ)

幸恵は走りながら疲れでボーッとしてきた頭でその要因を思い浮かべる。










15分前


ザッ・・・ザッ・・・

今日の授業も全て終了し、下校する者、部活へ行く者、補習する者に別れる六女の放課後。
ひのめは帰宅部なので現在の時刻4時10分は帰途につく時間だが、
こないだの体育で起こした問題(不良三人組を吹っ飛ばした)の罰で一週間体育館裏の庭掃除を命じられていた。

「はぁ〜・・・どうしてこう無駄に広いのかしら」

竹箒の動きを止め、周囲を見回すひのめ。
夕日に照らされる裏庭は到底一人で掃ききれるほど狭くはない、と言っても一週間もあるし、
鬼道も一日でやり切れとは言っていない。それに・・・ひのめは一人ではなかった。

「ほら、ひーちゃん!口より手を動かす」

規則正しく左右に竹箒を動かしながら声をかけたのは幸恵だった。
元は自分が原因ということで初日から手伝ってくれており、今日もいつもと違わず一緒にいてくれる。
しかし、ひのめはそんな親友にタメ息で答える。

「はいはい、やりますよ〜だ。でも修行の毎日なのに放課後庭掃除ってどうよ?」

「そっか、霊力の制御上手く言ってるの?」

『それが全然ダメだわさ。才能ないさ』

「コラァ!この3日でかなり成長したでしょーが!!」

「はは、うん。グっと伸びたよねひーちゃん」

幸恵が美神邸にお邪魔してから3日。
ひのめと幸恵、そして蛍も加えて連日修行・・・というか霊力制御の修練を積んできた。
幸恵の言うとおりひのめの霊力制御はこの3日でかなりのものとなり、
早くも才能の高さを見せるのだった。

「ふっふっふっ・・・今なら三世院にも勝てそう!」

『その調子にのる癖なおすわさ』

鋭いジャブを放ってみせるひのめを諌めるリストバンド心眼。
ひのめは『はいはい』と答えながら気づいた、
幸恵が少しだけ表情を暗くしてることに。

「ん?どうしたの?さっちゃん」

「え?ううん・・・その」

「ほら〜、そうやってすぐ口ごもるの悪い癖よ?
 お姉さんに言ってみぃ?」

「わ、私のほうが誕生日早いんだけど・・・」

ちなみに幸恵は4月16日、ひのめは10月27日生誕。

「ホントに三世院さんと戦うの?」

「な、何いまさら言ってるのよ!?今はそのために修行してるんじゃない?」

「そうかも知れないけどさ・・・正直勝っても負けてもひーちゃんが傷つくの見たくないし、
 それに・・・・殴られるのも殴るも痛いんだよ」

「・・・・・・・・・・・・・・」

ひのめは幸恵の言葉に口を閉じる。
確かに幸恵の言ってることに一理はあるし、極論で言えばこんなものは力試しでもないただのケンカ。
第三者から見れば無駄な行為に見えるかもしれない。

「ごめん、・・・・でもやっぱ三世院さんとは戦わなきゃいけない気がする」

「ひーちゃん」

「この間恨まれてる理由話したけど、それ以上のワケがきっとあるんだと思う。
 ここまで来たら多分話し合いじゃ解決出来ないしさ・・・・・それに」

ひのめはグッと右拳を握りしめてみる。

「私の力がどこまで通じるか試してみたいのよ」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

今度は幸恵のほうが黙る番だった。
ここまで来たら彼女の意志は変えられない、
そう分かると大きなタメ息を吐きながら言った。

「はぁ〜・・・分かったよ。ひーちゃんは昔から言っても聞かないんだから」

「はは、悪いね。さっちゃんは見てるだけいいからさ」

「あんみつ一杯で助けてあげるよ?♪」

「ん〜それ高い」

ひのめはそう言って笑いながら幸恵と肩を組んで笑いあった。
談笑も冗談の穏やかなひととき・・・・それは心眼の一言で破られた。


『来たわさ・・・』

心眼の静かな声。
それと同時にひのめに緊張感が一気に走る、はじめは何だろうと思った幸恵もすぐに気づいた。
周囲に凄まじい霊圧をかけながら近づいてきてる者に。
15m、10m、・・・・どんどん接近してくるそれが・・・・・ついに校舎の陰から現れた。

「ふふ・・・・お掃除お疲れ様ですわ」
「遅かったじゃない・・・」

ひのめは竹箒をコトリと壁にもたれかけるとソレ・・・・・三世院京華をキッと睨んだ。
一方の京華は余裕の笑みで答える。
これから何があるかはお互い分かっている。
負けるはずがない・・・その言葉を体全体で表しているような自信。
そしてそれを証明するような霊力・・・心身ともに戦闘態勢。

「ひーちゃん・・・」

「大丈夫大丈夫・・・・あっちょっと待って」

ひのめは幸恵に声をかけると京華にタイムを提案してそばに置いてあったバッグから何かを取り出す。
それは・・・幸恵が答えた。

「ふぃ、フィンガーグローブ!?」

「いや〜、やっぱ直接殴ると拳痛めちゃうし・・・よっと」

ひのめはフィンガーグローブを肩にかけると制服のジャケットと・・・そしてスカートを脱ぐ。

「スパッツまで履いて・・・・・・・・・・・ひーちゃん準備いいね」

親友の準備の良さに少し飽きれてしまう、『あなたはケンカ屋かい?』と。
しかし、準備の良さはひのめだけではなかった。

「ふふ・・・用意周到ですわね」

京華がパチンと指を鳴らす。
すると校舎の陰からツインテールの少女・かすみが現れた・・・・・フィンガーグローブを持って。
それを受け取り自分も上着とスカートを脱ぐ京華。
もちろんちゃんとハーフパンツを履いている。

「さ、こちらは準備完了ですわ・・・そちらは?」

「こっちもOKよ・・・・」

ピリ・・・ピリ・・・・。

二人の霊力と気合が呼応しているのだろう。
その場にいる幸恵とかすみに何かが刺さるようなものある。
無風なのに吹き飛ばされそうな、鋭いナイフをチラつかされているような感覚。
ゴクリと喉が鳴る・・・いよいよ激突かと思われた・・・そのとき。

「かすみ・・・・あなたも見てるだけじゃ暇でしょ?
 何なら江藤さんとNO.2決定戦でもやったら?」

「!!!?」

    
突飛なその言葉に目を丸くする幸恵だった。


                  
                                          その24(B)に続く




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あとがき1

こんなバトルな女子高あるわけねー( ゜Д゜)y-~~

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