ザ・グレート・展開予測ショー

〜『君とワルツと星影と』〜 (4)前編


投稿者名:かぜあめ
投稿日時:(03/ 6/11)

分岐前ラストのお話です。目立たなかったヒロインたちがようやくメインです(笑
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ガラガラと・・・。瓦礫の中から男が2人。

「く・・・生きてるか・・横島君・・。」
「・・・なんとかな・・。」

・・・本当によく生きていたとほめてあげたい。
あのあと2人は・・・地面に全霊力を叩きつけ・・・、衝撃の緩和に成功した。

「ほんと・・ほとんど無傷なのが信じられねえ・・。」
「・・全くだ。」



〜『君とワルツと星影と』 (4)〜


(1)

朝日の差し込む公園を・・美神とおキヌが歩いていた。
ダンスパーティーは今日の夜。
別段それまですることもない。

「ダンスかあ〜。私・・なんだか緊張しちゃうなあ・・。」

・・そんなおキヌのつぶやきに美神は少しため息をつく。

「でもねえ。おキヌちゃん・・。こういうのは相手が居てなんぼのモノなんだから・・。」

相手がもしも見つからなければ・・それはそれは空しいことに・・、
なんて・・彼女は身震いするようなことを言い出した。
一人悲しくダンス場に立ちすくむその情景は・・笑えないどころか・・ドナドナが流れてきそうであり・・、

・・・・。

「もう・・。美神さんは意地悪なんだから・・。」
からかわれたことに気が付いて・・むくれたようにおキヌが言った。

「ふふっ。」

いつものように談笑が起こり・・、
・・。
・・・・・。



それから・・



・・少し静寂が生まれる。

「・・ダンスの相手かぁ・・。」

おキヌは下を向いたまま・・、おもむろに池へと踏み出した。


「・・・・私・・。横島さんがパーティーに行かないって聞いた時・・、少しほっとしたんです。」

ぽつりと彼女がつぶやいた。

「・・どうして?」

「一緒に来ても・・多分横島さんは・・つらいだけだと思います・・。
 ・・ルシオラさんがいないから・・。」

うすく・・陽光を反射する水面に・・ぽちゃりと小石が落ちていく。


顔をあげないおキヌを見つめ、美神も少しうつむいた。
視線の先には・・・買ったばかりのドレスと仮面。

・・相手が居てなんぼのもの・・自分で言って笑ってしまう。

本当にドレスを見せたい相手は・・いつもの事務所に留まったまま。



・・公園に・・少し冷たい風が吹いた。

 
(2)

「待つでござるーーー!!」
犬塚シロは走っていた。
彼女の目指すものは・・、宙を舞い上がる風船だ。
大人でも・・まず取れないであろう・・そんな位置。

依然上昇を続ける球体に・・しびれを切らしてこう言った。

「ひきょうものーーー!!降りてきて神妙にするでござるーー!!」

・・いや・・色々つっこみたいのもやまやまだが・・この際無視して話を進める。

シロのそばには半べそをかきながら・・、少年が一人立っており・・、

「・・お姉ちゃん・・もういいよ・・。ジェニファー(風船の名前)はもうあきらめる・・。」

・・なんてことを口にした。

「だめでござるよ!!ジェニファー殿(風船の名前)は大事なものなのでござろう?」

「・・でも・・また買えばいいよ・・・。」

言葉とは裏腹に・・彼はまだ真っ赤な風船を見つめている。
どんなに安価であろうとも・・やはりいくらか愛着が起こる。子供の心理とはそういうものだ。

「むうう・・。思い入れがあるなら引き下がることなどないでござる。・・見てるでござるよ〜」

てい!!!!

タンタンタンと屋根を昇り・・・、そのまま大きく跳躍する。

・・・。
パシッ!!!

・・そんな音がして・・、
「あ!」
少年は驚きの声をあげる。

「とったでござるよ〜」
そこにはシロが得意気に手を振っていた・・。

・・ただし・・空中で・・・・

「お・・お姉ちゃん・・。着地!!」

「へ?」

・・・・・。
ヒューー・・。
・・・・・・・。
・・・・・・・・。
バキッ!!!  

・・・・・わおーーーーーん!!
本日2度目の鼻に対する直撃に・・彼女は派手に悲鳴を上げた。
             
             ・
             ・ 
             ・

「ごめんね。お姉ちゃん・・。」
「なんのなんの。ジェニファー殿(風船)が戻ってよかったでござるな?」

・・なでなでと・・。やさしく少年の頭を撫でて・・、そのまま彼女は言葉を続ける。
「いいでござるか。少年。ほんの少しでも抵抗があるなら・・・、簡単にあきらめちゃダメでござるよ。
 がんばれば、きっとなんとかなるでござる。」

頷く子供に笑いかけ、ぴょこりと立って、また走る。

彼女の言葉は・・そのまま彼女を支える行動理念でもあるのだが・・・、
しかし彼女は未だ知らない。
まだ・・遠くない昔・・、彼女が慕うある青年が・・、彼女と同じ理屈をもって・・・・、

結果・・大切な人を奪われたことに・・。

「パーティーは夜でござったな・・。」

・・そういえば・・先生は今ごろ何をしてるでござろうか?


〜あとがき〜
どこで切るか悩んだのですが・・とりあえず前編はこの3人です。
余談なのですが・・、今回登場の風船のジェニファー・・。
実は作者の小説のトレードマークのようなもので・・、聖剣3の小説やエヴァの小説にも出てきたりします。(本当に余談ですね(汗))

それでは後編はタマモとルシオラです〜

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