ザ・グレート・展開予測ショー

ひのめ奮闘記(その23(B))


投稿者名:ユタ
投稿日時:(03/ 6/ 9)





「で、私達は今回は林間学校・・・・つまり山で除霊」

『なるほど・・・面白い行事だわさ』

「本当はもう少し授業をやってかららしいけど、いろいろ予定が押してみるたい。
 この行事は海より山のほうが除霊簡単だし現役GSも同伴するから今年は早めにするんだって」

幸恵が説明を少し付け加えた。
私立とはいえ六女も高校の一つだ。当然教育委員会はあるし、勉学というのもおろさかには出来ない。
それなりの授業プログラムというのがあるのだが、どうもそれが少し遅れ気味らしい。

「はぁ〜、GSになるための修行と普通高校生と同じくらいの勉強しなきゃいけないうえに、
 私なんて霊力低かった分苦労したし・・・・よく考えたら結構キツい学校よね〜」

そう言ってゴロゴロと床を転がってみるひのめ。

「まあまあ・・・・でも将来のためと思ってさ、みんな頑張ってるし新しい友達も出来てきてるし」

クスクスと笑いながら幸恵は言った。
クラスでは3分の1がいわゆる三世院派だがそれ以外の生徒や、委員会などを通して違うクラスの友人なども出来てきている。
それなりに楽しい学校生活なのだが・・・・

「でもさ・・・何で三世院さんはあんなにひーちゃんにつっかかるのかな?
 ・・・・・そりゃ性格的に合わないとかあるかも知れないけど」

幸恵は唯一の気がかりを声に出す。
入学して自己紹介がすんでというからもののここ1か月ひのめは苛めにも近い扱いを受けてきた。
気の強いひのめから見れば「苛められてなんかない!ケンカだよ!」という心境なのだが、
第三者から見ればとてもそんなふうには見えなかった。

「う〜ん・・・まあ心当たりがないわけじゃないんだけど・・・・」

「え?」

「ちょっと待ってね」

ひのめはガサガサと机の引き出しを漁ると一冊の雑誌を取り出しポンっと幸恵の目の前に置いた。

「・・・GS・・・通信?」

幸恵は表紙に書かれた題字を口に出す。
『GS通信』とは簡単に言えばGSの会報誌だ。
除霊数ランキングや事件、賞金首のかかった悪霊、妖怪などGSとして最低限必要な情報を載せている。
そしてページをペラペラとめくっていく幸恵。

「え〜と・・・
『民間ゴーストスイーパー(以下GS)VSオカルトGメン・・・・昨今騒がれる民間GSとオカルトGメンの協力体制の是非。
 業界TOPのGSである美神(現姓・横島)令子さんのコメント「金さえ払ってくれるならどっちでもいいんじゃない」と
 興味を示さない様子・・・・』」

「そこじゃない、そこじゃない!」

少し慌てながら2、3ページめくっていくひのめ。
そして幸恵はまた新たな文章を読み始める。

「うんと・・・・
『一年前に亡くなったGS界のドン・三世院京介氏(享年72歳)の法事がしめやかに都内某所で・・・』
 ・・・・・・・・・・・・・・って三世院!!!?」

珍しい名字だが今では見慣れたその文字に目を丸くする幸恵。

「これってもしかして・・・・」

「そ。あの三世院京華の祖父だよ」

幸恵はひのめの言葉にますます驚きを露にする。

「でも・・・私はよく知らないけど・・・この会報誌に載るってことはやっぱ三世院家って有名なんだね」

クラスメイトの祖父の名を知ってますますその記事に興味を示す。
そして、しばらく読み続けてるところでひのめの声が聞こえた。

「さっちゃんさぁ・・・三世院家がこの十年で何人GSを輩出したか知ってる?」

「え?・・・・・・・・・そうだなぁ」

ひのめの問いにう〜んと考える。
毎年は無理でもそれなりに出てるから名家なのだろうと考え・・・答えた。

「8人・・・・くらい?」

少し自信なさげな声にひのめは首を横に振る。

「10?もっと多いの?」

「答えはね・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

ひのめは少しだけ目をつむって言った。

「0よ」

「ぜ、ゼロ?」

意外な回答に声が上ずる。
そりゃ六女に入って初めて三世院家の名声は知ったが今ではどのくらい有名かくらいは認知している。
その名家が10年で一人もGSを輩出していないという事実に頭が混乱する幸恵。

「まあ11年前に一人いるけどそれは三世院家の傍系だしね・・・
 今はGSの名家って言うより、大企業としてのほうが有名なんだよ」

「で、でもそれなら何でこんなにGSとして有名なの?」

「う〜ん・・・そりゃ六道家と並んで平安時代から続いて陰陽の家ってこともあるけど・・・
 やっぱこの人が有名だからかな・・・」

そう言ってひのめはトントンっと雑誌を指で叩いた。
叩かれた文字・・・『GS界ボス・三世院京介(享年72歳)』

『現役時代は日本史上最強と謳われたほどの導師だったわさ、生きてれば今でもTOPレベルだったかも』

「あれ?あんた知ってんの?」

自分に代わって説明してくれた心眼を不思議そうに見つめる。
まだ生まれて数日なのにどこからそんな知識をと。

『あたしの知識はあんたと横島令子と小竜姫に作られてるからね・・・まあ世の中のことは大抵』

頷きつつもその嫌味な人格は誰をベースにしたんだとツッコミたいひのめだった。

「へ〜そんなに凄い人だったんだね〜」

雑誌を持ち上げ三世院京介の顔写真を見つめる。
確かにいかにも『実力者』と思わせる恐い顔つきだった、
『老いてますます盛んな老人』という言葉がピッタリだろうか。

「でもね・・・・・・・ちょっとやり過ぎた人だったみたいよ」

「?」

『除霊、調伏するためなら方法はいとわず、あるときは邪法、禁法にまで触れ、
 金の払えない貧乏人の依頼は決して受けない・・・人間的にはやばい人だったわさ・・・』

「それでも政界の官僚達とつながりがあったり三世院家という権力もあった・・・
 引退後はGS協会を乗っ取るような形で理事長になったらしいわ・・・」

「いろんな意味で凄い人だね・・・」

幸恵は自分が生まれる前の話だが、
それでもGS界にもこんな汚れた話があるのかとちょっとだけ複雑な気分になるのだった。

「でも今から10年前に反三世院派によって失脚・・・・んで一年前に失意をうちに逝去・・・」

買っといたクッキーを食べながらひのめは話を締めるとパサっとGS通信を閉じた。

「で、それとひーちゃんが三世院さんに絡まれるのとどう関係が?」

幸恵のもっともな質問。
今の話で京華の祖父がどんな人物かは分かったが、最初の疑念に答えたわけじゃなかった。
ひのめは『う〜ん』と目を逸らし頭をかきながら言った。

「ん〜・・・いや、その反三世院派のリーダーって・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うちのママらしいだったのよね」

「へ?そ、それじゃあ・・・・その逆恨みをひーちゃん買ってるってこと?」

「かな〜?」

驚きあきれる幸恵とは対称的にさして興味もなく答えるひのめ。
そのままあぐらをかきながら手元に置いてあったジュースを口に運んだ。

『そうかしら・・・・・・・・・・・あたしにはもっと・・・・・もっと深いナニかがあると思うわさ』

ひのめの言葉にちょっとだけ沈黙する二人。
確かに京華の態度はただ単に逆恨みからきてるとは思えない。

「『心眼』の勘ってやつ?」

『そうとも言うわさ・・・・・・・・・・・・・・その勘だと近いうちにあんたと京華は闘うことになりそうだわさ』

「そんなの話の流れからして分かるわよ・・・ま、新生ひのめちゃんの力見せてやるわ♪」

そう言って指を鳴らしてみせる。
今はまだ過信でもそれをこの数日で自信に変えてみせる意気込みの表れだろうか。
幸恵はそんあひのめに
『あんまケンカして欲しくないなぁ〜』
と思いつつ活き活きしている親友に苦笑いを浮べるしかなかった。

「ほら、そんな微妙な表情しなさんなって・・・ここは明るく」

と、ひのめが幸恵に声をかけた瞬間。

バタンっ
という音と共にドアが勢いよく開けられた。

「幸姉ちゃーーん!一緒にUNOやらない!あっ、ついでひの姉も!」

「こら!忠志!ちゃんとノックしてから言いなさいよ! 
 でも、ひのめお姉ちゃんも幸恵さんも一緒にやらない?三人じゃ中途半端で」

ピンポーン。

「ただいま〜。ごめんなさいねぇ遅くなって」

「あ、おばあちゃんだぁ!おかえりー♪」

「令花ただいまぁ♪ん〜相変わらず可愛いわ〜」

ミシっ(←力いっぱい令花を抱きしめる音)

「お、おば・・ぁちゃんくるしぃよ〜」


一気に騒がしくなる美神邸に思わず呆然となる幸恵。
自分に親、兄弟はいるがここまで喧騒にあふれることはないからだ。

「ほら、何してんの?一緒にやらないの?」

「う、うん。やるよ」

ひのめの手を借り立ち上がる幸恵。
ニコっと笑うひのめに少しだけ眉をひそめる。
これから京華との戦いは避けれないだろう・・・
本当はケンカとかして親友に傷ついて欲しくない・・・・それでも。

「ひーちゃんが元気なら仕方ないか・・・」

「ん?何か言った?」

「何にも〜。ほら、早く行こう♪」

「ち、ちょっと待ってよ!」

多分自分には何も止められない・・・
だけど・・・


────────精一杯力になろう・・・・・─────────

ひのめを見つめながら幸恵は心で囁くのだった。




































そして・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・──────3日が経った。






                                    その24に続く




──────────────────────────────────────────
あとがき

日常編完。
いや、別にそんなつもりで書いてたわけじゃありませんが(笑)
だってさ・・・だってさ・・・伏線って張っておかないと
「なぜそんな展開になる!!?」というツッコミがぁぁぁぁ。

と、いうわけ随分次回から急な展開DEATH。
やっと・・・やっと『バイオレンス学園・六女物語』が書けます!(マテ)



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