ザ・グレート・展開予測ショー

君ともう一度出会えたら(03)


投稿者名:湖畔のスナフキン
投稿日時:(03/ 6/ 7)

『君ともう一度出会えたら』 −03−



 俺は修行のために、山に入った。
 妙神山には行かなかった。俺がする修行は、未来での経験を取り入れた独特の内容である。
 未来のことを知らない少竜姫さまがそれを見れば、俺に対して疑念をもつ恐れがある。
 いずれ歴史の流れは大きく変わるであろうが、初期の段階から大きく変化すると、俺の記憶が役に立たなくなってしまう。
 可能な限り、歴史の流れを変えたくはなかった。

 人影もまばらな山中で、俺は修行の日々をおくった。
 多少は肉体を鍛え霊力も強化したが、それが本来の目的ではない。
 肉体を酷使する一方、山の霊気を全身に取り入れ、霊魂と肉体の波長を少しずつ調整していった。



 山に入ってから四週間後に下山した。目的はほぼ達成している。
 普段の生活では以前よりもやや霊力が強くなった程度であるが、精神を集中させた時に発揮する力は大幅に強化されている。
 1対1の戦闘であれば、ベスパやパピリオとも互角以上に戦うことができるはずだ。

 下山してアパートに戻った俺は、普段の生活に戻った。
 学校に行った後、美神さんの事務所に出勤する。

「あら横島クン、久しぶり。学校の方は大丈夫?」

 久しぶりにみた美神さんは、とても若々しく見えた。
 もっとも美神さんを最後にみたのは逆行前だから、当然といえば当然である。
 美神さんの顔を見た俺は、逆行前にキスされたことを思い出してしまった。思わず赤面してしまう。

「いったいどうしたの? まぁ、いいわ。今日は3件も仕事の予約が入っているからね。早く準備してちょうだい」

 危ないところだった。この時代の美神さんにあの時のようなことはありえないし、変に勘づかれたら半殺しでは済まないかもしれない。
 さすがにルシオラと再会する前に、あの世に送られたくはなかった。



──── ・ ──── ・ ──── ・ ──── ・ ──── ・ ──── ・ ──── ・ ────



 雪之丞と弓さんが正体不明の魔族に襲われて入院したという知らせを聞いたのは、下山してから四日後のことであった。
 俺は美神さんとおキヌちゃんとともに病院に向かった。逸る気持ちを必死で抑える。


「いったい何があったの?」
「いきなり攻撃を受けて、センサーみたいなもので霊力を探られた。パワーをむりやり吸い出す荒っぽいやり方さ」
「ひどい……全身のチャクラがズタズタじゃない」
「おかげで、怪我は大したことないのに立てやしねえ」

 雪之丞は目を点のようにしながら、ボソボソとあの時の様子を語りはじめた。
 弓さんの方は口を開くのも大変らしく、横になったまま動こうともしない。

「西条のダンナは……、オカルトGメンは連中のことを何か知ってないのか?」
「あいにく西条さんは、別件でいないのよ。ただデータは調べてもらったけれど、それらしい魔族や妖怪は記録にないって──」
「一つはっきりさせたいんだ、雪之丞!」

 壁際にいた俺はつかつかと歩き、雪之丞のベッドの脇に立った。

「映画館の前で弓さんと何をしていた! え!? デートだなっ!」
「い……いや、それは──」

 雪之丞が、急にしどろもどろの口調になる。

「あんた、いい加減にしなさい!」

 バキッ!

 美神さんの一発が入り、俺は壁に叩き付けられた。
 いや……わかっていたんだ。わかっていたんだけれど、ちょっと道化になってみたかった。

「そいつら誰かを、あるいは何かを探している感じだったのね?」
「何か心当たりがあるのか?」

 雪之丞が美神さんに尋ねる。

「え!? なんでもないわ。ただ小竜姫やワルキューレたちには知らせておいた方がよさそうね」

 美神さんがそう言った次の瞬間、俺は強い霊圧を感じた。非常に強い霊力をもった存在が、この部屋に近づいてくる。

「こ、これは!?」
「間違いない。あの時と同じだ!」

 いよいよか……。
 俺は期待に胸を膨らませつつも、警戒体制をとった。
 最初に会った時は敵どうしだったからな。万が一ということもある。油断は禁物だ。


(続く)

今までの コメント:
[ 戻る ]
管理運営:GTY+管理人
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa