君ともう一度出会えたら(02)
投稿者名:湖畔のスナフキン
投稿日時:(03/ 6/ 7)
『君ともう一度出会えたら』 −02−
俺は逆行前の時空から消える寸前に、『因』『縁』『消』『滅』の文珠を発動させた。
時間を遡るにつれ、俺が通過していった時空から、俺という存在が消滅していく。
もともと魂という存在は、時間に縛られない存在だ。
しかし肉体をもつことで三次元空間に束縛され、因果律の影響を受けるようになるのである。
肉体ごと過去に戻ることも考えてみた。しかしその場合、肉体を通した因果律の影響を避けることができない。
たとえば未来の俺が過去に戻り、その時代の歴史に干渉する。
その結果は未来にまで影響し、未来の俺にまで変化が生じてしまう。
俺は過去の歴史に大きく干渉しようとしている。その結果、数年後の未来にどういう影響が出るかについてまでは、俺の貧弱な頭脳では計算できなかった。
この問題を解決する手段が、魂だけの逆行であった。
未来の知識と経験をもったまま過去へと遡る。
さらに遡った後の俺の因縁を消しておけば、因果律も作用することができない。
過去に戻った俺は今までとは別の道を歩むわけであるから、そこから別の未来が生じるはずである。
さらに俺がいなくなっても俺を知っている人たちが困らないように、俺の因縁そのものも消すことにした。
ただそれでは少し寂しかったから、美神さんにだけは記憶が残るように文珠を調整した。
あの人ならば俺のことを分かってくれる……そう思った。俺の甘えにすぎないかもしれないが。
──── ・ ──── ・ ──── ・ ──── ・ ──── ・ ──── ・ ──── ・ ────
パチッ!
俺は布団の中で目を覚ました。どうやら目標とした時間帯に到着したようである。
起き上がって周囲を見渡すと、あのボロアパートであった。
未来の俺は、高校を卒業した後美神さんが正社員にしてくれたので、普通のワンルームマンションに引っ越していた。
こうしてみると、この部屋にもいろいろと思い出があって懐かしい。
だが今は感傷にひたっている暇はない。俺は新聞を探して、日付を確認してみた。
ルシオラたちと出会う日から数えて、ちょうど一ヶ月前だ。ここまでは狙いどうりである。
俺は着替えると、霊力のチェックをはじめた。
……誤算があった。
霊力の絶対量が5年前に戻っている。
つまり今ここにいる俺は、5年先までの記憶をもっているにせよ、やはり5年前の自分なのだ。
だが取り返せないわけではない。
今から修行をすれば、まだ間に合う。
霊力そのものを短期間で強化することは難しいが、修行をして今ある力を最大限に引き出すことは可能だ。
人は心と体を一致させれば、驚くほどの力を発揮することができる。武道でいう心技体一致の境地だ。
昔の俺はこんなことも知らなかった。やはりこの5年は無駄ではなかったようだ。
今の俺でも最大限に力を引き出せば、おそらく強化後のベスパとも十分に闘えると思う。
俺は美神さんに電話をして、進級が危ないから一ヶ月ほどバイトを休むと連絡した。
学校の方は……まあ、何とかなるだろう。
俺は寝袋と着替えの衣服をリュックに詰めると、部屋を出た。
しばらくは山ごもりだ。昔と違ってサバイバル技術を身につけているから、山の中で何ヶ月でも生活できる。
次にこの部屋に戻った時には、今とは見違えるほど強くなっているはずだ。
それでも5年後の俺と比べれば、まだまだのレベルであるが。
待っていろよ、ルシオラ! 今度こそは必ず、お前を助け出してみせる。
(続く)
今までの
コメント:
- 横島の性格ですが、未来からきたということもあって、多少大人っぽくなっています。
それから私が書くお話では、たいてい横島はカッコよくなっているんですね。芸がなくてすみません(;^^)
強さについては、若干パワーアップさせました。
どう考えてもアシュタロスに勝てる強さにするのは無理ですので横島最強物語にはなっていないとは
思いますが、ルシオラ救済を目指す以上、それなりにパワーアップをせざるをえませんでした。
一応シリアスっぽい書き方はしていますが、ルシオラーによるルシオラーのための作品ですので、
多少はご都合主義が入ってしまうかもしれません。
(既に二話の段階で設定が一部合わなくなってしまい、修正をかけています。;^^) (湖畔のスナフキン)
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