ザ・グレート・展開予測ショー

〜『君とワルツと星影と』〜 (3)


投稿者名:かぜあめ
投稿日時:(03/ 6/ 6)

お待たせしました(笑)さて・・各ヒロイン分岐まであと2話です。

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それは最高のフライトだった。
いくら飲み食いしようと勘定はGメン持ち。
酒は美味いし姉ちゃんはきれい・・もう言うことなしという状況だ。

「あ〜あコイツさえいなけりゃなあ〜」

「・・声に出てるぞ横島君・・。」

横島と西条・・。
お互いに、「なんでお前と」という感想を抱いているのは間違いない。
飛行機が動きはじめてから今に至るまで・・、
まさに一触即発、・・いや触らなくても即発しそうな雰囲気が続いている。

「大体・・君は緊張感がなさ過ぎる!これは仕事なんだぞ!」

「パリにつくまで何もやることなんてないだろ?
 それにな、今のうちに楽しんどかんと後悔するぜ?
 ・・こういう移動ってうまくいった試しが・・。」

・・そんなセリフを横島が発した・・次の瞬間である。

ドオオオオオオオオオン!!!
大きく機体が縦にゆれ・・、そして爆音が響きわたる。
「!・・なんだ・・。」

「ほら来た・・。不測の事態ってやつが・・・。」



〜『君とワルツと星影と』(3)〜




『・・・すると・・かの箱からは『災厄』が飛び出した。
 病気、悪意、妬み、憎しみ、偽善、保身、悲しみ、飢え、暴力、狂気・・・。
 ありとあらゆる災いの種がこの世にその根を下ろしたのである・・・』 

                      〜ギリシャ神話より抜粋〜


・・機体の左翼。炎が燃えるその場所に・・、
奇妙な異物が腰掛けていた。

ひしゃげたように、いびつな翼。
ボコボコと・・不自然なまでに落ち窪んだ顔面が、楽しそうに歪められている。

『悪魔』は・・あらゆる紛争を司る者だった。

「・・思ったより脆いものだ・・・。」

醜い唇から・・、つまらなそうな声が響いた。
彼は本来・・、言語などというものを持ち合わせてはいない。
言語とは人が作り出したもの・・、その必要性については・・常々疑問に思うのだが・・、

「人間をほふるのなら・・、せめて遺言ぐらい理解しなくてはな・・、
 どうだ?なかなか勤勉で慈悲深いだろう・・?」

彼があえて『言葉』を使ったのは・・背後に気配を感じたからであり・・、

「いや・・全く逆で・・虫唾が走るぞ・・。」

すぐそこに・・若いゴーストスイーパーが立っていた。
強烈な突風に顔をしかめて・・にも関わらず悪魔を睨みつけている。


「・・・・下男に用は無いのだが・・。」

「誰が下男じゃ!!!」

失望したような悪魔の顔と・・・今までの緊迫感を皆無にするこのセリフ。
当然のごとく声の主は横島であり・・・・・、
・・。

・・しかし彼は・・軽口を叩きながら、内心舌打ちしていた。
損傷した翼。加速を止め、じょじょにと下へと傾き始める機体。
戦闘になったとして・・、あまり時間はかけられそうもない。

・・・。



「一応聞くが・・、お前なんだな?Gメンと敵対してる悪魔ってのは・・。」

「・・でなければ、わざわざ奇襲をかけたりすると思うかね・・。」

ゲッゲッゲ、・・と、悪魔が心底愉快そうに笑ったあと、
場の空気が・・一瞬にして凍りつく。


瞬間だった。

2人の体躯が・・・常軌を逸した速度で交錯し・・、

「・・・・ほう・・。」
悪魔の腕から朱が飛び散った。

「・・超加速・・のようなものだな・・・。こんな真似ができる人間・・、君は文殊使いということか・・」

自らの傷にはさして興味が起きないのか、彼の視線は一つ所に注がれていた。

横島の手の内で光る三つの文殊・・・。それぞれに『超』『加』『速』の文字が埋め込まれている。


(マジかよ・・。しっかり追いついてきてるじゃねえか)
顔には出さないように努めているが・・、横島はかなり・・なんというかびびっていた。
文殊三つの同時使用など・・そう何度も出来ることではない。
・・それが通じないとなると・・。



「おや・・。もうネタ切れかね?」

・・前言撤回。実は思いっきり顔に出ていたらしい。

悪魔がじょじょに距離をつめる。


「・・日本式に言えば・・年貢の納め時・・と言ったところかな?」
・・などと嬉しくもないウィットに富んだ言い回しを使ってきたりするわけで・・、

「・・・。そうだな・・年貢の納め時だ。」

横島があっさり肯定した。
いさぎの良すぎるその態度に・・わずかに悪魔が狼狽する。
彼は・・少し近づきすぎていた。
久しぶりに手応えのある獲物に歓喜して・・・、敵の間合いに踏み込みすぎたのだ。

「!!」

「・・横島君だけがな!!」

後方に丸い穴が空き・・、そこから斬撃が繰り出される。
刃が煌きながら弧を描く。


・・・・・直撃した。

ギィィィィン!!!

鋼鉄を殴ったような音がして・・魔族が・・一気に吹き飛ばされる―――。
               
                  ・
                  ・
                  ・

「・・今横島さんの声が聞こえたような・・。」

「ええ〜気のせいよおキヌちゃん。・・でなきゃアイツが生霊になってこっちに来たか・・。」

・・さりげにけっこう失礼だが・・、
美神はそんなことを言いながら・・、ショーウィンドウを眺めていた。


「・・な・・なんでござる!この丈の長いスカートは・・。」

「・・・動きづらい・・。」

・・なんて声が後ろから聞こえるが・・、
ついでに・・買ったばかりのドレスをズルズル引きずる音も聞こえてきたりするが・・、
とりあえず無視して、前方を見やる。


ケース越しに見えたのは・・舞踏会用の仮面だった。

「王朝時代でもあるまいし・・、今さら仮面舞踏会なんてねぇ・・・。」

仮面舞踏会。
・・文字通り仮面をつけた紳士淑女が踊るパーティーなのだが・・
現代においては・・大して意味などありはしない。
強いて言えば・・仮面の装着により素性がわからなくなる・・。それだけのことだ。

呆れ顔の美神に・・店の主人が苦笑して・・、
「さっき来たお客様とは正反対のことをおっしゃってますね。
 そのかたは素性が分からない方が、相手に迷惑をかけずに済む・・と」

「ふ〜ん・・。なにかワケありってこと?」

「さあ・・。わたくしもそこまでは・・・。」



                 ・
                 ・

そのころである。


「「ああああああああああああああ!!!」」
横島と西条はなぜか空の上で落下運動に身を任せていた。

「取り逃がした上、てめえ・・なに穴なんて空けてんだよ!!飛行機だぞ!?墜落するにきまってんだろ!!」

「なにを!!僕が居なかったら今ごろ君は死んでたぞ!!いいから早く文殊を出したまえ!」

とりあえず・・全く余裕が無いということだけは言えるだろう。
しかし、横島の答えは意外なものだった。

「ない。」   「へ?」

・・・・・。
・・・・・・・・。


「どういうことだ!横島君!!」

「いや・・だって・・乗組員の脱出に全部使っちゃったし・・。お前だって承諾しただろ?」

「・・っ。まあそれは良しとして・・。このままでは確実に死ぬのは気のせいかな?」

・・・・・。
・・・・・・。
「「ああああああああああああああああ!!!!!!」」

グングン近づく地面を見つめ、つくづく今日は厄日だと・・、彼らはそんなことを思うのだった。

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