ザ・グレート・展開予測ショー

とら、トラ、虎!32) 金髪の少女(後編)


投稿者名:ヴァージニア
投稿日時:(03/ 6/ 6)


■六道女学院女子寮 食堂■
タイガーが以前働いていたこの食堂には、タイガーのほかに、六道の寮生である一文字・水樹・洋子など、
3年生が中心に集まっており、更に隣町の高校生、白石茜とその後輩2人がいる。

「 ちょ、ちょっとまてよタイガー!
  まぐれで一度吹けたぐらいで決めるのは早すぎるぜ!! しかもこんな奴に!! 」 
「 あんだと魔理!! 」

ピルルルルルルルルルルルルルルッ

金髪の少女こと白石茜はもう一度、エミがタイガーの暴走を抑えるために吹いていた笛、“獣の笛”を吹いた。
六道の寮生の誰もが吹くことが出来なかった笛を、いとも簡単に吹いた茜に対し、
かつてのケンカのライバルであった一文字は、信じられないような顔をしていた。

「 どうだ魔理! てめえには吹けなかったんだろ? 」
「 で、でもよタイガー! こいつ、霊能力者でもなんでもないんだぜ!! 」
「 え? そうなのか、あかねサン? 」
「 ・・・だからなんだよ。 」
「 ちょっと待って。 」

エミの弟子である黒髪の少女、仙香は茜と向かい合い、茜の両手を握った。

「 なにするつもりだよ!! 」 「 いいから黙って!! 」

仙香の真剣な顔つきを見た茜は、大人しく黙っていた。
そして仙香は茜の両手を握ったまま、額から霊体触手の念波を茜に向けて接触させ、目を閉じて茜の体を調べている。
・・・しばらくして仙香は目を開けた。

「 ・・・やっぱりね。 このコ、わずかだけど霊能力をもってるわ。 」
「 え!? 」 「 ほ、ホントか!? 」

驚く一文字。 嬉しそうな顔をする茜。

「 私の能力でこのコの霊質を探って見たけど、間違いないわ。
  でなければ、魔力を持った笛を吹くことなんて出来ないはず。
  おそらくあなた、霊と関わりを持ったことがあるんじゃなくて? 」
「 た、確かに霊に殺されかけたり、ジジイの霊に幽体離脱させられたことはあったけどよー。 」
「 それって、あなたのおじいさん? 」
「 ひいじいさんだけど。 」
「 やっぱり。 そのおじいさん、おそらくある程度の霊能力者だったのね。 」
「 ジジイが!? 」
「 いくら霊体でも、そう簡単に生きているものを幽体離脱なんてできないわ。
  あなたはそのおじいさんの血を引いているし、
  一度幽体離脱を経験したあなたは霊と触れ、力に目覚めたってことも考えられるわ。 」
「 ・・・あたいに霊能力が? 」

茜は信じられないような顔で、自分の両手を見つめていた。
ついさっきまで、自分にはなんの力もないと悩んでいた少女が、霊能力という特殊な能力を持っていたことを告げられたのである。
その衝撃は大きかった・・・

「 なにはともあれ、これで決まったわね。 一文字さんも水樹もよくて? 」

「「「「「 よくねー!!!!! 」」」」」
「「「「「 納得いかなーい!!!!! 」」」」」

「 あ、あんたたち・・・。(汗) 」
「 落ちつきー2人とも。 」   

前髪で目を隠している少女、洋子は、一文字と水樹の肩を押さえた。

「 エミさんが言うには半年間、つまり、経営が軌道にのるまでの間ってことやろ?
  ちょうどその頃うちらも高校卒業しとるし、急ぐ必要もないやろ。 」
「 だけどよー。 」
「 寅吉の師匠のエミさんがそういう条件を出してるんやからしゃーないやろ。
  それに、パートナーを決めるのは寅吉であって、うちらじゃない。 」
「「 ・・・・・・。 」」

沈黙する一文字と水樹。
とそこに、茜の後輩の由布子(ゆうこ)が横島に気づいた。

「 あ、センパイ! この男いつかの!! 」 「 えっ? 」

横島をじっと見る茜。

「 ・・・ああ、あたいの幽体離脱中におかしなまねしやがった野郎か。
  悪いがあたいは今、それどころじゃねーんだ。 」
「 えっ? えっ? 」

横島は、何のことか思い出せなかった。

『 霊能力・・・・・・あたいに霊能力が!! 』

横島のことより、自分の秘めた力に興奮していた茜は、タイガーのほうを見た。

「 なっなあ、さっきあたいを助手にするとかいってたよな!? 時給いくらだ!? 」
「 あ、ああ、2500円でどうジャ? 」
「 !! 」

茜はいきなりタイガーの服をつかんだ! 寮生たちがざわつく。

「 ああん!? GSの助手は5000円以上じゃねえのかよ!! 」
「 ワ、ワシ、まだ事務所ももってないケン、
  それにあかねサンはまだ、除霊のことについて何もしらんようじゃし―――! 」
「 なんだと!? 」

とそこに、横島がわってはいる。

「 あのー。 」
「 なんだよ! 」
「 俺が初めて助手になった時は、時給250円だったっスよ。 」
「 ・・・・・・・・・・・・・ 」

ぼかっ  =☆

「 バカも休み休み言え!! 」 「 ああっ、ホントなのに・・・!(泣) 」

茜に殴られ、しくしくと泣く横島。

「 ちっ、しゃーねえな。 とりあえずそれで手を打つか。 」
「 こんのやろ! 」 「 魔理落ちつきい! 」

茜の悪態にキレかかる一文字を、洋子が後ろから抱きつくように止めた。

「 だってこいつ、GSの仕事を完全になめてるぜ!! 」
「 待ちいて。 すぐにわかる・・・・・・すぐにな。 」

じ―――――っ

「 ・・・なんだよ、お前らその目は。 」

寮生たちは茜に対し、冷たい視線を送っていた。 

「 何センパイに、ガンとばしてんだ!! 」 「 いてまうぞワレーー!! 」

チェーンを取り出す茜の後輩たち。

「 やめねえかおめえら!! 」
「 センパイ・・・。 」
「 いいよ。 どうせ、こういうのは慣れてっからな。
  タイガーっていったっけ? これからあたいはどうすりゃいいんだ? 」
「 あ、ああ、とりあえずワシの元上司のエミさんの所に・・・・・・ 」


                                    ◆


■エミの除霊事務所■
タイガーは茜を連れて、エミの事務所にやってきた。

「 え!? もう見つけてきちゃったワケ!? 」
「 はいっ!! 」
「 ふ〜ん、とりあえず、吹いてみて。 」
「 ああ。 」

ピルルルルルルルルルルルルルルルルルッ

「 ・・・・・・いいわ、合格よ。 」
「 やったぜ! 」
「 タイガー、あとは指示した通りやっていきなさい。 」
「 はいっ!! 」

その後エミは、茜と2人で話がしたいと言い、タイガーだけを部屋から出した。
エミは茜と2人きりになると、所長用のイスに座り、肘を机にあてて、組んだ両手の甲をあごにあて、淡々と茜に質問しだした。

「 おたく、高校何年? 」
「 2年。 」
「 学校は行ってるの? 」
「 ・・・たまに。 」
「 親はなにしてるの? 」
「 ・・・・・・さあ。 」
「 友達はいるの? 」
「 ・・・・・・・・・よけいなお世話だ。 」
「 ケンカ好き? 」
「 ・・・・・・・・・・・・キッ! んなことどうでもいいだろ! 
  なんだよさっきから、どうでもいいようなことばっかり聞きやがってよ!! 」
「 あら、大事なことよ。 だっておたく、これから死ぬかもしれないんですもの。 」

エミの言葉に、茜はドキッとする。 エミは今だ両手の甲をあごに当てて、茜をじっと見つめている。

「 ・・・死? 」
「 そうよ。 あなたなぜ、GSが高額の報酬がもらえるか知ってる?
  あらゆる職業のなかで、最も危険な職業の一つだからよ。
  だからGSは、本当に力のある者しかなれないワケ。 」
「 だけどあいつはその試験で優勝したんだろ!? 」
「 そのタイガー、今朝除霊に失敗して、死にかけたわ。 」
「 えっ!? 」
「 幸いなんとかしのいだけど、次はおたくしか助けられる人、いないワケよ。 」

しばし戸惑う茜。

「 ・・・怖気づいた? 」
「 はっ、なに言ってんだよ! 上等じゃねーか!! それでこそ退屈しないですむぜ!! 」

その強気な茜の様子を見たエミは少し微笑んだ。
エミは立ち上がって軽く腕を組み、茜に近づいた。

「 フッ、いいわ。 おたくの役割は聞いてるわよね。 」
「 あたいの笛で、あいつのの精神をやわらげることだろ? 」
「 もうひとつ。 その笛は動物や動物霊、更には魔界の獣を操ることができるわ。
  まあ、すぐにはは無理でしょうけど、なくさないでね。 その笛、1億するから。 」
「 い、いちおく!? 『 じゃあこいつを売れば何も危ない目に合わなくたって――! 』 」
「 <キランッ☆> ネコババは考えないほうがいいワケ。 私が呪いの専門だってこと、忘れないように。 」

エミは茜の真横にきて茜の肩を叩くと、目を怪しく光らせてそう言った。
茜はドキッとし、額から汗が流れる。

『 あ、あなどれねえぜこの女! 』
「 ま、何か困ったことがあったらうちにきなさい。 タイガーをよろしくね。 」
「 あ、ああ・・・ 」


                                    ◆


■その頃 六道女学院女子寮 食堂■
タイガーや茜が出て行った後、食堂にいた寮生たちも大半は自分の部屋に戻っていた。
そんな中、食堂に残ってた仙香は水樹の愚痴を聞いていた。
一文字や洋子ならともかく、何も知らない不良少女が助手になったことに、理不尽さを感じていたのである。
そして水樹は、事務所が出来たらすぐ駆けつけることを心に決めたのである。
一方で水樹同様不機嫌になっていた一文字は、ふとある男の存在に気づき、洋子にたずねた。

「 ・・・そういやあ横島はどうした? 」
「 寅吉が出た後すぐに帰ったようやけど? 」
『 あいつホントに何もせんで・・・何しにきたんだ? 』

一文字は、横島が女子寮に来てナンパもせず、すぐに帰ったことに疑問に思っていた。
そのとき横島は、自宅へと歩いて帰っていた。


『 ・・・タイガーの奴も前に進んでるんだよな。 俺もそろそろ・・・ 』

横島はいつになく真剣な顔をして歩いていた。
その表情には、いつものおチャラケた雰囲気はなかった。

「 だが・・・・・・ 」

ふと横島は立ち止まり、肩を小刻みに震わせていた。


「  やっぱりナンパしときゃあよかった〜〜〜!! じょしこーせーとの貴重な機会〜〜〜!!  」


・・・横島はやっぱり横島であった。


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