ザ・グレート・展開予測ショー

ひのめ奮闘記(その21)


投稿者名:ユタ
投稿日時:(03/ 6/ 2)







突如二人に聞こえた謎の声、それは何とひのめのリストバンドからだった。
ひのめのリストバンド、それは道場に通い出してからずっと使ってきた愛用品。
その青い愛用品に爛々と輝く・・・・・『一つ目』。

「じじじじじ、人面瘡!!!!?」

ひのめは顔に縦線を引きながら思わずあとずさる。

『失礼なこと言うんじゃないわさ!』

『一つ目』は口ならぬ目を尖らせてひのめを睨んだ。
その瞳にますます気分が悪くなるひのめ。
確かに女子高生の装飾品に『目』がついているなんてかなりシュールな光景だろう。

「ひーちゃん落ち着いて!」

親友の幸恵はまともか?と『一つ目』が思ったのもつかの間。

「私達の力(霊力)はこんなときのためにあるんじゃない!早く除霊を!!」

『待たんか──っ!!』

こっちも混乱中ですか!?『ない』けど頭が痛くなる『一つ目』。
そして当事者のひのめはというと・・・

「そうね!!死に晒せこの悪霊───っ!!」

と姉そっくりなセリフを吐きながら霊力を込めた左拳を振り上げる。
しかし・・・

ポシュ・・・

その拳に込められた霊力はひのめの意識とは無関係に消え去り、光を失う。
さらには急に体の力も抜けその場にヘタレこむひのめ。

「ち、力が入らないぃ〜〜〜」

ひのめは苦しいというよりはむしろ「たれパ●ダ」のようにダレながら床に寝転ぶ。
幸恵も親友の容態に異変はないということでひとまず安堵を浮べた。

『そのままでいいから聞くわさ』

今までとは少し違う雰囲気の言葉に押し黙る二人。
そして『一つ目』は静かに語り出した・・・

『あたしはあんたらの敵じゃない・・・むしろ味方と言っていいわさ』

「味方?」

ひのめはあからさまに『嘘っぽ〜い』といった眼差しを一つ目にむける。
その眼差しを敢えて無視しながら一つ目は自分の正体を語り始めた。

『あたしの名は『心』の『眼』と書いて『心眼』・・・・』

「シンガン?」

聞きなれない言葉に顔をしかめる幸恵。
しかし、ひのめはポンっと手を合わせて言った。

「心眼って確かお義兄ちゃんの昔話に出てきた!」

『そ、まあそれと同じようなもんだわさ』

「ひーちゃん・・・で、それって何なの?」

「え〜と私も詳しくはぁ・・」

幸恵の問いに詰まるひのめを助けるように心眼が説明を始めた。

『心眼・・・神がその息吹を吹き込み、命を与えた神具の一つ。
 役割は簡単に言うと持ち主の霊的サポートや助言、力の制御・・etc』

「力の制御?じゃあさっきひーちゃんの霊力が消えたのも・・・」

『お?あんたなかなか覚えがいいわさ。
 そういうこと・・・・ひのめの霊力、筋力はあたしが制御することが出来るわさ』

「制御・・・?ってことは体育のとき3バカトリオを同時に吹っ飛ばしたとき霊力を下げたのもあんたね!!?」

『正解・・あそこで押さえなかったらあんた暴行事件で休学になってたわさ』

ひのめの声に軽口で応える心眼。
そう・・・先ほどのひのめの戦闘霊力はもちろん全開ではない、
本人は全力で叩きのめすつもりだったが、心眼が敢えてそれを押さえていた。

「ひーちゃん、あの3人を吹っ飛ばしたの!!?」

気絶して結果を見ていない幸恵は驚きの声をあげた。
ひのめの勝利はさっき聞いてはいたが、さすがに吹っ飛ばすほどの結果は予想していなかった。

「いやぁ・・・こないだボコにされたお返しと、
 ついでにさっちゃんの仇を取ろうと思ったら力が入って」

(私はついで!!?)

あれだけ盛り上げといてそれはないでしょ・・・と少し落ち込むひのめの親友。
取り合えず冗談でヘコんだ幸恵を置いときつつ話を進めるひのめと心眼。

「しかし、いつの間に・・・」

『霊力開放して寝込んでる間だわさ。
 あんたの姉さんがその日のうちに妙神山に来て、
 小竜姫様に頼んであたし(リストバンド)に竜気を込めってもらったわさ』

「お姉ちゃんが!?」

『まあ、あんたの携帯用お守りが早く必要だったんでしょ?
 あの険しい山道を急いで登り降りしてたわさ・・・』

「そうなんだ・・・」

ひのめの心に温かい何かが広がっていく・・・
姉・令子の思いやり、自分がどれだけ愛されているかが痛いほど伝わってきた。
だから・・・

「・・・・(グータラで、セコくて、家事あんまやらなくて、主婦失格で、へべれけな)
 お姉ちゃんがせっかく持ってきてくれたんだもん、仲良くやりましょうね♪」

『最初のその間は何?』

笑顔を浮べるひのめに「信用おけねー」と言った眼差しをむける心眼だった。




「へっくし!!」

「あれ?どうした令子・・・風邪か?」

「いや・・・何か悪口を言われたような・・・」

「よっぽど命のいらない奴なんだろうなぁ」

「どういう意味?」

「い、いえ・・・何でも」

令子の睨みに押し黙るしかない横島であった。



 

「でも、私に霊力の制御なんていらないよ?
 一週間もすればパーパーっと使いこなしちゃうんだから♪」

そう言って不適な笑みを浮かべるひのめ。
幸恵はそんな鼻高々な親友に少し違和感を覚える。

「ひーちゃん何かあったの?霊力は急激に上がるし・・・それに前はそんなに自信家じゃなかったのに」

過ぎたる自身は過信となる。
過信は油断を呼びその身を危険晒す。

常に道場の師範から言われる言葉。
ひのめも幸恵もその言葉に背いたことはない、
武道家、格闘家にとって『過信』がいかに危ういかということが判っているからだ。
今までもひのめは出来ることには自信をもった態度だが、自分の力の範疇を超えたことに対しては慎重に行動してきた。

「あ〜大丈夫大丈夫!まあ霊力が上がった理由はまた話すけど、
 こうなった以上私を止めれる者はいなんだから」

本気だ・・・本気で言ってる。
ひのめの言葉にますます苦渋の表情を浮べる幸恵。
そのとき・・・

『このバカっ!!!』

キーンと響く怒鳴り声、特にひのめは念波が脳に直接響くために目に星が浮かぶ。

「な、何よ!?」

ひのめは叱る心眼に少しだけ驚きながら尋ねた。
心眼はあからさまに怒った眼差しをひのめにむける。

『いい?あたしがあんたに着けられたのは霊力の制御とかサポートとかだけじゃない!
 慢心、油断・・・そういう心の隙間を生みださないため、つまり心の制御がメインだわさ!!』

「そ、そんなに怒鳴らなくても・・・判ってるわよ」

そっぽを向いたひのめに心眼は目を細めて続ける。

『あんた・・・今の自分なら三世院京華に勝てると思ったでしょ?』

「ギク・・」

『復讐してやるとか・・・少し思ってたでしょ?』

「い、いやぁ・・・・」

『母や姉くらい軽く越えれるとか考えてたでしょ?』

「あはははは・・・」

心眼の尋問にもはやまともに目を合わせることが出来ない。
文字通り『心の眼』で自分の中を探られた気分にすら陥ってくる。

『大きな力は人を狂わす・・・・あんたにはそんなふうになってほしくないわさ・・・
 みんなそう思ってる、あんたの家族も、あたしも・・・そして心友も』

そう言って心眼が眼で差す方向に目をむける。
そこにいたには『うん』と笑顔で頷く幸恵・・・
ひのめは気付いた・・・自分の心が力に躍らされようとしていたことに、
それがいかに愚かなことかに・・・。

「あはは・・・ごめんね。何か私浮かれてたみたい」

「ひーちゃん」

「だから・・・」

静かに目をつむり気分を落ち着かせるひのめ。
そして、カっと目を見開き叫んだ。

「自力で制御できるようになってから三世院と戦ってやるわ!」

「『闘(や)る気満々だ──っ!!!』」

幸恵と心眼は思わず同時にツッコんでしまう。

「ひ、ひーちゃん・・・これを期に落ち着いた高校生活送ろうよ・・・」

「ふふ、やられっぱなしで済ませるのは美神家じゃご法度なのよ!
 それにいつもケンカふっかけてくるのはあっちじゃない」

「そ、そうだけどさぁ・・・」

『はぁ・・・まあ目標と向上心(?)があるのはいいことだわさ。
 じゃあ今日からさっそく特訓するわさ』

「へーい、よろしく先生」

左手で軽い敬礼をしてみせる。
これからこの心眼がどんな試練を自分に与えてくるかは分からない、
それでも自分の中にまだある可能性、成長・・・その喜びがひのめの瞳を輝かせるのだった。



「あ、そいやちょぉっと聞きたいんだけど・・・」

ひのめはこそっと耳打ちするように心眼に口を近づける。
ずっと前から思っていた・・・長年思っていたこと・・・それを尋ねるために────






























「私の胸が小さいのって・・・・・」

『霊力関係ないわさ』

質問を先読みした心眼の短い返答にうなだれるひのめ。こんな感じで→_| ̄|○
話の聞こえなかった幸恵はいきなりうなだれる親友に何事かと近づいて心配そうに肩へ手を添えた。

「ひーちゃんどうしたの?大丈夫?」

「え、ああ・・・うん、平気・・・全然・・・全然気にしてないから」

ひのめは幸恵の声に悲しそうな目でゆっくり顔をあげる。
そのとき、ひのめの視界に入ったのは・・・・・・・・・・・幸恵の胸。
ひのめとは雲泥の差があるそれに心の中で何かがキレた。


「こらぁぁ!!あんたは何だってそんなに胸が大きいの────っ!!!」
「キャアァァ!!い、いきなり何で胸揉むのよぉ!セクハラぁ!ひーちゃんセクハラよこれ────っ!!」


こんな二人にやれやれとタメ息をつく心眼。
ひのめをサポートするように小竜姫様から頼まれたのはいいが、本当にやっていけるのだろうか・・・
先行き不安・・・それだけが心眼の心に思い浮かぶ。


──そして、5分後・・・入ってきた保健医に『うるさい!』と追い出されるひのめと幸恵だった。ちゃんちゃん。

 


                      



                                  その22に続く




今までの コメント:
[ 戻る ]
管理運営:GTY+管理人
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa