ザ・グレート・展開予測ショー

ルシ混♪(ろく)


投稿者名:パープル遼
投稿日時:(03/ 5/31)


ぺたぺたぺた

ルシオラを探して旅館内を歩き回る。まだ他には誰も起き出していないようで、静寂の中にスリッパの音が響く。
廊下。食事をした部屋。除霊をした部屋。廊下。・・・浴場。廊下。玄関。
見つからない。

「・・・あとは、外、か。」

がろがろがろ

玄関の引き戸を引き、外へ出る。まだ、日は昇っていない。
辺りを見渡す。いた。
旅館の側の、ほんの少しだけ高くなっている、丘とも呼べないような土地の膨らみの上。
まだ横島には気づいていないようだ。昨日の吹雪で積もった雪を踏みしめて、東を向いて立っていた。
声を掛けようとした。


その瞬間、光が満ちた。


冬とは思えないほど強烈な朝日と、それの雪からの照り返しと。
それに挟まれてまるで光に浸かっているかのようで。
――思わず、声を失って立ちつくしてしまった。それほどまでに、彼女は。

「――あ・・・起きた?ヨコシマ。」

横島に気づいたルシオラが、微笑みながら声を掛けてきた。何となく、やられた、と感じた。

「あ、ああ。おはよう・・・こんなところで何してんだ?」

問いかけてから気づく。決まっているではないか。

「決まってるじゃない。朝焼けを見てるのよ。」

ふふっ、と楽しそうに笑った。
コイツは、笑った顔がスゲーきれーだよなー、とか、そんなこと考えて見つめてしまう。

「なによ、ヒトの顔じろじろみて・・・恥ずかしいじゃない・・・」

そう言って、はにかんだような表情を見せた。

「ん・・・いや、その」

何となく気恥ずかしくて、口ごもってしまう。

「なに?」





「・・・綺麗だな、と思ってさ。」

一瞬、惚けたような顔をした。俺がこんな台詞を言うのがそんなに予想外だったのだろうかと、ちょっぴり悲しくなったりした。
が、次にはくすくすと笑いながら言った。

「――――ありがとう――」






「どうも、お世話になりました。」

時刻は昼頃。旅館の玄関先で、横島とルシオラの二人がこの宿の主人夫婦に挨拶している。

「いえいえ、こちらこそ、わざわざ遠くから有り難うございました。」

ぺこり、と夫婦二人揃って深々とお辞儀する。
仕事をして、それが感謝されている。それを実感出来て、横島はなんだか嬉しくなった。




「で、ヨコシマ、美神さん達、もうすぐ来るって?」

横を向いて、ルシオラが横島に問いかけた。
先ほど朝日を眺めた後、彼らは旅館に戻り朝食を取ったのだが、その席で彼らはやっと思い出したのだ。
美神達へ連絡を取ることを。





なぜ今まで思いつかなかったのか不思議がりながら、その旅館の電話を借り――そう、美神は電話でここと連絡を取っていたではないか――美神の携帯に電話を掛けた。しばしの発信音のあと・・・繋がった。

「あ・・・あの、美神さん・・・横島です。」

ものすげービビリながら、横島が電話に向かって言う。それはそうだろう。
今までの扱いから考え、連絡を怠ったことを想像すると・・・どうなることやら。

しばしの沈黙。

の、後。

「・・・ねえ、携帯の着信履歴見たんだけど、依頼主の所にいるわね・・・?」

ぎくり

(ど、どうする?正直に連絡を忘れていたことを言うか?それとも適当に誤魔化し・・・いや、相手は美神さんだぞ、きっとすぐにばれる・・・それならいっそのこと正直に答えて許しを請うたほうが・・・?)

そこまでを一瞬にして考えて、横島は答えた。

「ス、スンマセン!!今まで連絡する事忘れてました!!
 あ、でも、ちゃんと依頼は果たしましたから・・・お願いします給料下げないで――――っ!!」

あっさりと、それはもうあっさりと嘘をつくことを諦めて、謝った。すごい勢いで謝った。・・・いつものことだが。
しかし美神の答えは横島の予想を裏切って、いつものそれとは違っていた。

「そう・・・つまり、昨日はそこにルシオラと泊まったのね・・・?」

なんだか静かに語りかけるように・・・違う、確認するように話してくる。
横島はそれに言いようのない不安感を掻き立てられたが、しかしどうにか肯定した。

「そ、そうです・・・ハッ!?あ、あの、宿泊費はタダでいいって言ってくれてますから!!
 ・・・ええとその、あの、どうかしました?」

はっきりと『的はずれ』なことを叫んだ後で、ついにこらえきれなくなったのか、尋ねた。
しかし答えが返ってくるとは思えなかった。こういう、機嫌の悪そうな美神に関わると、ろくなことがないと分かっているから。
大抵、よく分からない理屈と共に、凶悪な打撃の嵐を浴びせてくるから。
・・・そんなのが当たり前な生活っておかしいとも思わなくもないが。
しかし今回はとことん異常だった。

「・・・これから行くわ。道路、通れるようになったから。」

なんだか落ち着いた、静かな――美神がそんな声を出すなんて信じられないが――暗い声で、そう言った。

「え?あの?」

つー、つー、つー

電話は、切れていた。

そこには全身に嫌な汗をかき、恐怖に震える横島だけが残されていた。





「・・・そろそろ来るかな。」

電話を掛けた時間と、麓からの――おそらく美神達はこの山の麓で宿を取っただろうと言う推測した――距離。
それを考えると、確かにそろそろだ。

う゛ぉろろんっ!!

ちょうどそのタイミングで、車の駆動音が聞こえてきた。
そして砂煙を上げながら横島達の前を通り過ぎ、数メートル先で急停車した。

ばむっ

ドアを開け、美神が降り立つ。少し遅れておキヌも。
そしてずかずかと横島達の方へ・・・とゆーかなぜかルシオラの方へ歩いてくる。

「ルシオラ・・・ちょっとこっち来なさい・・・」

「え?」

「いいから。横島君はそこにいなさい。」

少し離れて手招きしながら、そんなことを言う。二人はなんなんだと思ったが、逆らわないことにした。
よく見ると、額に「井」マークが付いて――しかもおキヌにまで――いたからだ。

「・・・なんですか?」

「単刀直入に言うわ・・・“昨日何かあった?”」

妙なニュアンスを持たせて、美神が問いかける。とゆーか詰問と言った方が近いかもしれないが。

「――――っ!!」

そのニュアンスを理解するルシオラ。自然、“思い出して”しまう。

「あの、その・・・」

ぼんっ、と音を立てたかのように、顔を真っ赤に染める。
そして両手で方頬を押さえ、目線をさまよわせる。
音をつけると「いやんいやん」とでも言っているかのように。
それをじとーっ、とした目つきで見る美神とおキヌ。
もう、だいたい理解した。何があったか。もはや、何も言うべきことはない。やるべきことも、決まった。

すうっ

息を吸い込む。手に、力を込める。





「この、馬鹿横島が――――――――っ!!!!」

轟音を立てて陣痛棍が空を切り裂く。
標的はむろんのこと・・・

「ぎゃ――――――――!!!!」

ま、いつものように。



今までの コメント:
[ 戻る ]
管理運営:GTY+管理人
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa