ザ・グレート・展開予測ショー

ルシ混♪(さん)


投稿者名:パープル遼
投稿日時:(03/ 5/31)


気が付くと脱衣所の床に倒れていた。腰にはタオルが掛けられている。

「おー、いてー・・・だが・・・悔いはない!!」

先ほどルシオラにひっぱたかれた頬がひりひりと痛い。
が、ルシオラの白い裸体を思い浮かべ、にやける。

「うん、なんだかんだで、結構良かったよな。『闇』の文珠も。最後にいいもん見れたし、背中も洗ってもらったし。」

前向きな男である。良いことだ。

「は、そうだ。俺がここに寝ていたとゆーことは、もうルシオラは風呂をあがっているはずだ。
 つまり、今頃は浴衣を着て俺を待っていてくれるはず!・・・こーしてはおられん!!」

なんだかよく分からない理論を並べ立て、跳ね起きる。
そして用意されていた浴衣を手早く着ると、脱衣所を飛び出していった。





ちょうどその頃、ルシオラはやはり横島よりも少し早く風呂からあがっており、旅館のロビーにたたずんでいた。
手には中身の半分ほどに減ったコーヒー牛乳のビンを持っている。
彼女は以前横島ととあるテーマパークに行って以来、色々な飲み物に興味を示すようになっていた。
いわく、

「食事にバリエーションをつけるようにしたのよ。」

とのこと。
ちなみに現在のお気に入りは、オレンジジュース、コーラ、砂糖を大量に入れたコーヒー、砂糖を大量に入れた紅茶。
要するに甘い物が好きらしい。

「うん、確かにおいしいわ、『お風呂あがりのコーヒー牛乳』。ヨコシマの言っていた通りね。
 ・・・・・ヨコシマ、そろそろ気が付いたかしら。思いっきり叩いちゃったからなあ・・・」

その時の状況を思い出し、多少の罪悪感を感じながらつぶやく。

「そもそもあの状況が、ヨコシマにとってはちょっとキツかったかもね。後で謝らないと。」

とその時どたどた、と盛大な足音が聞こえてきた。むろん、横島が走って来たのだ。

「あ、ヨコシ・・・」

「ルシオラ――――――!!!
 やはり黒髪美人に浴衣は・・・」

似合う――とでも叫ぼうとしたらしい。

「っていきなり何を――――――!!!」

がんっ、べちゃ

例によって例のごとく、やたらと長い距離を水平に飛行してルシオラに飛びついた横島は、いともあっさりと撃墜されたが。

「ううう、なんでいきなり殴られた・・・?」

「なんで、って・・・いきなりでびっくりしたのよ。だいたい、いつも言ってるでしょ?人前ではやるなって。」

「そんなことゆーてさっきも駄目だったぢゃないかっ!!なんかこー、理不尽を感じるぞっ!?」

だくだくと、目とか鼻とか額とかから、いろんな液体を垂れ流し、なにやら魂のこもった叫びを上げる。

「いや、あの、えっと・・・・・ごめんね♪ てへ☆」

それに対するルシオラの返答は、やたらひたすら軽かった。あまつさえ、語尾に音符やら星やらが付いていた。

_| ̄|○(←横島)





「・・・で、だ。これからどうしようか?」

数分後、どうにか持ち直した横島は、のろのろと立ち上がるとルシオラに問いかけた。
ちなみにその間、ルシオラは、膝をついてなにやらぶつぶつとつぶやいている横島を、コーヒー牛乳を飲みながら眺めていた。
まあ、ちょっと面白がってからかってみただけだったのに、ここまで大きなリアクションをとられてしまって困っていたのだが。

「そうねえ。この旅館、今悪霊がいるんでしょ。とりあえず女将さんに話を聞かない?」

内心、横島が持ち直したのを見てほっとしながら、ルシオラは答えた。

「だな。結局渡された資料はまだ読んでなかったし、浴衣のまま仕事するワケにもいかないしな。動きやすい運動着でも借りないと。」

「でもどこにいるのかしら。売店にも人いなかったし、呼んでも来てくれないし。
 しょうがないからお金置いてこれ持って来ちゃったんだけど。」

中身のからになったビンを見せながら、ルシオラが言う。

「それって変じゃないか?・・・何か感じなかったのか?」

「特に何も・・・」

がしゃあああんっ・・・!!

その時どこか遠くの方で何かが割れるような音が聞こえた。

「今の・・・!?」

「向こうからかっ!?行こう!!」

音のした方へ、横島が先導して走り出す。それにルシオラが続く。
その音が聞こえると同時に、そちらの方向から霊波が漂ってきていた。
彼らの霊感が告げる。魔物だ。





がしゃ・・・けを・・・さ・・って来い・・・がしゃんっ

断続的になにかの割れる音、怒鳴り声などが聞こえる。
二人はその音と、霊波とを頼りにそちらへと走っていた。

「ルシオラ!この霊波に覚えがないか!?」

「ごめんない!ヨコシマはあるの?」

「俺もない!くそー、もう少し真面目に資料読んどくんだった!!」

どうやら敵の情報がなさすぎて困っているようだ。
日頃から仕事の前に資料を読むクセでも付いていれば良かったのだろうが、あいにくいつもは美神に口で説明してもらっていた。
自業自得とも言えよう。

「しょうがない!臨機応変にいこう!!」

「でもそれって行き当たりばったりとも言うわよね!!」

そんな軽口など叩きながら、走る。そろそろ近くなってきた。

だだだだだだだだだ――がらっ!!

霊波の漏れてきている部屋の前に到着し、その襖を勢い良く開ける。
そして目にしたものは。



「酒やああ〜〜っ!!酒持ってこーい!!」

「ああっ!?あなた、正気に戻ってー!!」

明らかに泥酔している小太りで中年の男と、それをなだめようとしている女将さん。
あなた、と呼んでいることから、この二人はどうやら夫婦らしい。
しかしこれはどういうことか。確かにかなり強力な霊波をこの部屋の中から感じたのだ。
それなのにいざ到着してみれば、下手なドラマのワンシーンのようなこの光景。
はっきり言って、リアクションに困る。

「・・・ええと?悪霊はどこだ?」

「・・・あのおじさんから霊波が漏れてるような気がするんだけど・・・?」

確かに、ルシオラの言う通りなのだ。しかしどこから見ても、酔っぱらいの駄目亭主が奥さんに絡んでいるようにしか見えない。

がしゃんっ!!

あ、酒ビン投げた。

「・・・とりあえず、あのおっさんを止めるか。」

「・・・そーね。」

横島はそう言い、手のひらに文珠を作り出し――文字は『醒』――いまだ何事かわめき散らしながら暴れているその男の方へ向かう。
しかしいくら何でも油断しすぎていた。
いかに見た目ただの酔っぱらいであったとしても、先ほどの強力な霊波に間違いは無かったのだから。

「これでおとなしく・・・」

腕を引き、軽く文珠を投げようとした。
しかし、不意にその男がぴたりと動きを止め、横島を凝視する。
つられて横島も警戒し、眉をよせ、その場で足を止める。
ぴん、と空気が張りつめ、睨み合う。

「・・・・・」

「・・・・・」

横島は内心焦っていた。距離が近すぎる。
ほとんど戦闘訓練など受けていない彼だが、非常識なほどに命がけの闘いを繰り返してきていた。
その経験のカンが告げる。ここは、ヤツの間合いの中だ。
しかし下手に動いて隙を作るワケにもいかない。
『動き初め』は無防備になりやすい――その瞬間に攻撃を受けると防御しにくい――からだ。
そしてそれは相手も同じこと。
文珠を使った変則的な戦い方をする横島だが、サイキックソーサーや霊波刀といった直接的な戦闘能力も持ち合わせている。
相手はそれを知っているワケは無いが、本能的にそれを悟って隙をうかがっている。

一触即発。

しかしその状態はあっさりと破られることになる。



ごぎんっ!

・・・ルシオラの投げた酒ビンが、男の後頭部に直撃した。ちょっと、シヌほど痛そうだ。

「・・・あの、ルシオラ?その人は取り憑かれているだけであって、被害者だろうから、もう少し優しくやるべきでは・・・?」

「いーのよ。女将さんから話を聞いたの。その人、ここんとこ酒浸りで、そのせいでタチの悪い妖怪に取り憑かれたらしいわ。
 まったく。くだらないことで奥さんに迷惑かけて・・・それぐらい当然よ!」

かなり憤慨しているようで一気にまくし立てる。
その横では女将さんが嬉しいんだか悲しいんだか、微妙な表情でたたずんでいる。

「それより気を付けて!多分そろそろ憑依が解けるわ!!」

ルシオラがそう叫んだ瞬間、ばしいっ、と何かがはじけるような音と共に、鬼のような姿の妖怪が男の体から飛び出してきた。
頭には二本の角を生やし、手には一升瓶を持っている。

「サキャッ!?」

悪魔アセトアルデヒド。横島達は知らないが、かつて唐巣神父によって滅ぼされたはずの、酒飲みに取り憑く妖怪。
ピートをあっさりと下したことすらある、かなり強力な魔物である。
そいつが今、どういう経路をたどったのか、横島達の前に立っている。

「サッキャアアア――――――ッ!!」

床を蹴り、跳躍する。狙いは・・・近くにいた、横島。かなりの早さで接近する。

「くっ!?」

身を投げ出すようにしてその第一撃をかわす。そして即座に起きあがり、対峙する。
戦闘が始まった。

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