ザ・グレート・展開予測ショー

ルシ混♪(いち)


投稿者名:パープル遼
投稿日時:(03/ 5/31)


『ルシオラと横島が混浴風呂に入りました♪』

季節は初冬。木の葉は既に落ち、地面には雪がうっすらと積もっている。
ここは東北地方のとある豪雪地帯。雪がちらほらと降り始めたその中を、一台のRV車が走っている。
本来ならこの道路は、有名で寂れた温泉宿――矛盾しているが事実だ。有名な秘湯とでも言おうか――への道で、この季節、もう少し車の往来があってもよいはずである。
しかし今は『とある事情』により、このRV車しか走っていない。
車には四人の男女が――男性一人女性三人――乗っている。
雪の降っている外の景色を眺めて、後部座席に座っている黒髪の女性――ルシオラが感嘆の声を上げた。

「わあ・・・・・これが雪なのね。綺麗・・・!」

「ん?・・・そっか、ルシオラは雪見るの、初めてか。確かに綺麗だよな。でも俺は、どっちかっつーとルシオラの方が・・・」

「え・・・?」

ルシオラの隣の後部座席に座っている、このメンバー唯一の男性――横島がその感嘆に答える。
しかもさりげなく、くさい台詞を吐いている。
その台詞にルシオラは胸を高鳴らせる。横島は、こんな台詞をあまり言わないから。

二人並んで窓の外を舞い散る雪を黙って眺める。良い雰囲気だ。



「「ごほんっ!!」」



「二人とも、今から仕事に行くのよ!?分かってる!?」

「はい、横島さん。今回の除霊対象の書類です。向こうに着くまでに目を通しておいて下さいね。」

後ろでいちゃつかれて、運転席に座り、明らかに不愉快そうに言う亜麻色の髪の女性――美神と、助手席に座り、顔はにこやかに笑っていても目がちっとも笑っていない黝い髪の女性――キヌが、水を差してせっかくの良い雰囲気をぶち壊す。

そう、今日美神除霊事務所の一行は、『とある事情』――悪霊のせいで客が来なくなってしまった温泉宿の依頼でこんな山奥まで出張してきていたのだ。
もっとも除霊対象そのものは大して強力な悪霊という訳ではなく、そして依頼料もそれにふさわしくそれほど高くはない。
むしろ『みんなで温泉につかりに行こう♪』という事でこの依頼を受けたのだ。
ぶっちゃけ、社員旅行みたいなつもりで来ている。依頼主が知ったらなんと言うであろうか。


きききぃぃぃ!!・・・きっ


そんなような和気藹々(?)とした雰囲気の中、運転していた美神が突然ブレーキを踏んだ。

「うわっ!――っと、い、いったいどうしたんですか!?美神さん!?」

急制動のせいで前につんのめりながら横島が言う。
ルシオラも似たような体勢である。・・・後部座席の二人はシートベルトを締めていなかったようだ。
ちなみにどさくさに紛れて横島がなにかしようとしたらしいが・・・上手くいかなかったようだ。
なぜか表情を残念そうにしている。

「・・・ちょっと車から降りてくれる?」

言われて車から降り、車の前方を見た。
そして美神が急ブレーキを掛けた理由を知る。
大量の土砂が崩れて道路を完全に塞いでいたのだ。
道路の左側は土の壁、右側は切り立った崖――とゆーほどでも無いがかなり急勾配な坂。下は針葉樹の森になっている。
車が通れるような所は無い。

「あっちゃー、まいったなー。これじゃ、先に進めないわ。横島君、あんたの文珠でどうにかならない?」

「無茶言わんでください!!いくら何でもこんな大量の土砂、どうにもなりませんよ。そもそも、ストックも残り少ないし・・・
 そうだ、ルシオラ、おまえならみんなを連れてこれを飛び越えられないか?」

「うーん、『延命』のおかげでだいぶパワーが落ちたから・・・一人ずつなら運べるけど、さすがに車を抱えては無理よ。
 美神さん、まだだいぶ距離あるんでしょ?これを飛び越えても車が無くちゃ意味が無いわ。」


立ち往生するはめになった美神除霊事務所一行。
仕方がないので美神が携帯電話で依頼主に話を付けるまでの間、その辺りをぶらぶらと散歩していた。


「しかし温泉に行けないのか・・・くそー、残念だなー。
 ・・・ん?・・・あれは・・・?」

ぶつぶつと何事か呟きながらぶらついていた横島が、道路の端でなにかを見つけた。

「どーしたの?ヨコシマ。」

「ほら、あれ。なんだろう、光ってるけど・・・鏡か?」

横島の様子に気づき近づいてきたルシオラに、それを指さす。
それは道路の右側、三メートルほど坂を下りたところにあるようである。
その回りには浅く雪が積もっており、ぱっと見ではその鏡もそれら雪の一部にしか見えない。
しかしよく見れば、時折きらきらと光を反射するように光っているのが分かった。
二人が並んでそれをよく見ようとガードレールから身を乗り出した瞬間、二度目の崖崩れがよりにもよってそこで起きてしまった。

「う、うわあっ!!」

「きゃああっ!?」

あまりにも咄嗟の事で飛ぶこともできずに、二人はもつれ合って転がり落ちていった。





「つっ・・・ルシオラ、大丈夫か?どこにもケガ、してないか?」

「ん、大丈夫よ。・・・ちょっと服が汚れちゃったけど。」

かなり高い位置から転がり落ちたはずなのに二人とも傷一つついていない。
せいぜい、ルシオラの純白のワンピースに泥が着いた程度である。
やけに丈夫なカップルである。まあ、ルシオラは魔族だし横島は横島だし、そんなものかもしれないが。

「早く上に戻ろう。下手すると美神さんの事だ、置いて行かれちまう。」

かなり真剣な表情でそんな事を言う横島に苦笑しながら、ルシオラは落ちてきた坂を見上げようとした。
しかしそれは出来なかった。
辺り一面、さっき上から見えた針葉樹の森なのだが、落ちてきたはずの坂が消えていたから。
適度に見通しの良い森が広がっていた。

「どうしたんだ、ルシ・・オ・・・ラ・・・」

驚愕の表情を浮かべるルシオラを見て、不審に思った横島がその視線を追い、同じように愕然とする。

「ど・・・どーなってるんだ、これ・・・・?」

「わ、わかんないわよ・・・」

「・・・どーする?」

「どーって言われても・・・とりあえず、飛んで、上から見てみるわ。」

そう言い、とんっ、と地を蹴る。そして自分の身長ほど飛んだ所で――

くるんっ

べしゃ

なぜか空中で半回転し、地面に落下した。

「・・・なにやってんだ?ってゆーか今モノスゴイ姿勢で落ちたぞ。首、大丈夫か?」

「・・・・・」

むくり

無言で立ち上がり、もう一度。

くるんっ

べしゃ

「・・・・・」

「・・・・・」

どーしたもんかなあと困った顔をしている横島と、先ほどにも勝る驚愕の表情をしているルシオラ。

「・・・ええと、ホントに大丈夫か?」

さすがにちょっと心配になったらしく、再度横島が声をかける。

「ここ・・・結界の中だわ・・・!」

しかしルシオラはそれには答えず、この状況を結論づける一言を口にした。

「結界?」

「そう、『閉じられた空間』――結界よ。」

「ええと?どーゆーことだ?」

結界。そう聞いて横島が思い浮かべるのは、悪霊から身を守ったりする壁のようなものや、以前ひどい目に合わされた、火角結界や土角結界である。
しかしこの場合での結界とは、『外から入れず中から出られない空間』である。
ルシオラは横島にそのような説明をした。

「で、でも、それっておかしくないか?俺達が入ってるじゃないか。」

「うーん、このての結界ってたまにほころびが出来るのよ。神隠し、ってのがあるでしょ?
 あれ、自然発生した結界に迷い込んじゃった、ってものなのよ。
 でも、今回は人為的・・・まあ『人間』が作ったかどうかは分からないけど・・・
 さっき鏡があったでしょ?あれをヨリシロにして作られてるみたいね。」

横島が疑問を口にし、ルシオラがそれに答える。

「・・・どうすれば出られるか、分かるか?」

「ほころびを探すしかないんじゃないかしら。もしくは自然に結界が消えるのを待つか。」

当然、歩き回ってほころびを探すことになった。





「さ・・・・・寒い・・・」

「ってゆーかいきなり吹雪くなー!!」

「ふふ・・・私って・・・寒さに弱いのよねえ・・・」

「ルシオラー!!ふふ、とか!!笑っちゃいやー!!ヤバイって!!」

「あああああああ・・・・・眠い・・・」

「寝るなー!!ルシオラー!!」

「ああ、ヨコシマ、おやしゅみなさい・・・」

「だから寝ちゃ駄目だってばー!!」

がっくんがっくん

歩き始めて数十分。二人はとーとつに吹き始めた吹雪の中を歩いていた。
そして当然とゆーかなんとゆーか、蛍の化身たるルシオラは寒さに弱かった。
防寒服も着てはいるのだが、そんなもの問題にしないくらい吹雪は強かった。
まあ、シリアスモード(?)に入らないうちはまだ大丈夫だろうが。

「もー、ヨコシマってば、女の子の胸ぐらなんか掴んじゃイ・ヤ♪」

「そーじゃないだろー!?
 ってゆーかいっそのこと肌と肌とで暖め合おう♪とか言いたいけどこの状況でそんなことしたらさすがに死ぬし!?
 ああ、一体俺はどうすれば!?」

・・・なんだこの錯乱カップル。危機感とか無いんだろーか。



まあそんなよーな事をやりながら更に数分、少し先に明かりが見えた。

「!!・・・ルシオラ、明かりだ!!多分人がいるぞ!!あそこまで頑張れ!!」

「ふみゅ?あかり?・・・・・ほーたーるの、ひーかーぁり?」

「いやー!!そんなこと言っちゃいやー!!ってゆーかそれは無い!!それは無いぞお!!」

どうやらルシオラも限界らしい。
が、どーにかこーにか、そこまでたどり着いた。
そしてそれはやはり人家で、しかも温泉宿のようだった。

良かったね二人とも。とりあえず助かりそうだよ?

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