ザ・グレート・展開予測ショー

悪夢 第八夜


投稿者名:ライス
投稿日時:(03/ 5/25)




「吸引っ!!」


 ある廃ビルの一角。今、吸引札で悪霊が吸引される。

「ふぅ……。これで終了っと。」

 男が汗を拭い、一息つく。

「よし、これで後は報告書を書いて、依頼主に代金請求しなくちゃあな……」

 彼は後始末をすると、ビルの一階へと下り、入り口の前に停車するコブラにまたがると、そこを後にした。車は軽快に都内を走り回る。しかし、運転する彼の顔をは険しい表情のままであった。

「…………」

 彼は無言のまま、ハンドルを切る。その表情は何かを心配している、何かを思い悩んでいるようにも見える。交差点を差し掛かる時、彼はある事に気付く。自分は何者かに追跡されている。バックミラーーをチラッと覗くと、車が一台、コバンザメのようにある程度の距離を保ちながら、付いてくる。運転しているヤツの顔は日差しが強いせいか、まぶしくて見えない。

「……?」

 妙に思った彼は、車を人気の無い所に向かわせる。背後の車も当然、追跡してくる。そして、着いた先は見覚えのある廃工場だった。
 彼は車から降りると、後から来た車の方に立つ。すると、その車から坊主のようなスキンヘッドの男が降りてくる。

「久しぶりだね……。」

「………あの、どちら様で?」

 スキンヘッドの男はズルッとずっこけると、車の中からあるものを取り出す。ロングウィッグだった。彼はそれを後ろに振り返って、頭に取り付けると、再び相手のいる方に顔を見せた。

「アァ!?テメェは………………西条!!」

「やっと思い出してくれたか…………」

































「横島クン!!」



































「西条……お前、いつ戻ってきたんだ?」

「さっきさ。報告がてらの休暇でね。隊長に電話したら、令子ちゃん、一昨日から意識がないそうじゃないか?」

「………お前には関係ないだろ?」

「いいや、あるね。僕にだって、知る権利がある。今日の昼過ぎに、令子ちゃんの検査の結果がわかるんだろう?隊長から聞いたよ。」

「じゃあ、なんで俺を追った?結果が知りたけりゃ、病院に直行すればいい話だろ……。」

「まぁ、そうだな。でもな、横島クン。行く前に君に話があってね……。」

「話……?」

「そうさ……、令子ちゃんを愛する男同士の………ね!!」

 西条は、いつも持ち歩いている聖剣ジャスティスを鞘から抜くと、横島に振り下ろした。が、横島も神通棍で応戦する。剣と神通棍で力と力がせめぎ合う。

「……僕がアッチに行く前に言ったよな!?彼女に何かあったら、ただじゃ済まんぞ?となぁ……!!だが、今日、日本に戻ってみればなんだ?令子ちゃんは無意識だって言うじゃないか?僕は憤りを覚えずにいられなったよ……。横島クン、君は一体何をしてたんだい?」

「黙れ……、黙れ、黙れ!!」

「いや、言わせてもらうよ。彼女が倒れた時、君は何をしてやれた?なにもしていないはずだ。いや、出来なかったという方が正しいのか。ともかく!!君は倒れた彼女の前で、立ち尽くすことしか出来なかった、違うか?」

「あぁ、そうだよ!!」

「!?」

 横島は神通棍で剣をはねのけると、剣を持つ構えで西条と対峙する。そして、短い静寂の後、工場の壊れた蛇口から、ピチャンッと水滴が落ちる音が聞こえた瞬間、二人は同時に斬りかかった。金属の軋む音。何度も重なり合い、その音が工場内に響き渡る。

「あぁ、そうだ、確かにオレはあの時、なにも出来なかったよ……。けど、何だって言うんだ?オレは、またアイツの様に、また何も出来ずに失うのか、と気が気じゃなかった。オレは不安だったんだ、そして、ただ祈る他、無かったんだ……。そうじゃなかったら……、」

「!!」

 横島は一瞬の隙を突いて、西条の剣を振り払う。剣は宙に舞うと、音を立てて、地に落ちた。

「腕を上げたな、横島クン……。」

「……見ろよ、肉体的にも霊力的にも今のオレは多分ピークの時期だろう。彼女を守れるくらいの自信はあったよ……、なのに、オレはあの時、何も出来なかったんだ……。とんだお笑い種さ。」

「…………悪かった。」

「いや、謝る事でもないさ……。にしても、西条。」

「ん?なんだ?」

「お前、そのカツラ、全然似合ってねぇな……、もうちょっと年相応のカッコしたらどうだ?」

「黙れ、君に自分の格好の事なんか、言われたくも無いね。君こそなんだ?似合わない背広なんか着て。バンダナはもう付けないのか?それにこれはカツラじゃなくて、ウィッグだ。」

「………」

「………」

「………ブッ、ハハハハハハハ……ッ!!」

 二人とも吹き出すと大声で笑う。悲しみを吹き飛ばしてしまうかのように。

「……ハハハハ、っと、もうこんな時間だ。病院で隊長が待ってるはずだ。急がないと…。」

 西条は腕時計を見る。針はすでに正午を過ぎていた。

「そうだな……、じゃあ、行くとするか、西条!!遅れるなよ?」

「それはこっちのセリフだよ。」

 二人はおのおのの車に乗り、その場を後にした。まだ、風が冷たい新年の出来事であった。どこらと

も無く、風に混じってテレビのニュースが始まる声がする。

「2010年1月6日、正午のニュースをお伝えします。まず最初のニュースです、政府は……」

























 私は光の中にいる。それは暖かく、自分でいうのもなんだが、優しく慈愛に満ちたものであった。私は、何かに導かれるように黙々と歩く。そして何も無いのに何か満ち溢れた感情に包まれていた。

――こっちよ、こっち……。

 『声』は私の手を引っ張るような感じでそっと囁いている。そして、ある程度歩いた所で、私は命令されたかのように立ち止まった。すると、私の背後から私の名を呼ぶ声が聞こえる。

「美神さん……」

「あ、あなたは……!!」

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