父の息子
投稿者名:矢塚
投稿日時:(03/ 5/24)
深夜のネオンが煌めき、地上に現れた人工の星座郡。
東京の街はいつ眠るともなく、燦然と息づいていた。
無論、いつの時代になっても、深更の住人が人間だけであるはずもなく、魑魅魍魎こそが深い闇の主役であった。
その中に林立する高層ビルの一室で、人とかつては人であったモノとの現世での生き残りをかけた熾烈な戦いが繰り広げられていた。
闇に住まう悪霊を冥府に送り返す為、命を賭して人は戦い、死してなお現世にしがみつく為に悪霊は戦った。
そして、悪霊と戦う者達を、人々はゴースト・スイーパーと呼ぶ。
「くらえっ!」
男の右手に構えた霊波を凝縮した刀剣が風を切り、一体の悪霊を見事に切り裂く。
切り裂かれた悪霊は怨嗟の悲鳴を残しつつ、闇に消え去っていった。
「よっしゃ! おわりっ!」
男は嬉しそうに言うと、髪をかきあげる。肩ほどまである、闇と見紛うほどに漆黒のつややかな髪がゆれ、額に汗が滴る。
汗の浮いたその顔は、とても女性的であり、男とは呼べないほどに美しかった。
どことなく、魔的な印象さえ受ける。
自分の仕事の成果を確認した彼が、嬉しそうに傍らに立つ女性に声をかけた。
「どうっすか、犬塚先生! このGS美神 流汐(るしお)にかかれば、この程度の悪霊なんぞ、ちょちょいのちょいっすよ!」
声をかけられた犬塚シロは、やや苦笑しつつ、それでも愛弟子の成長を心から喜んだ。
「ああ、なかなかやるようになったでござる。でも、まだまだ、美神どの達には遠く及ばんよ?」
その言葉に、流汐は美しい顔を少しだけゆがめてふてくされた。
「ちえっ! そりゃ、母さんにはまだ勝てないかもしんないけど、親父にはもう楽勝っすよ」
ケラケラと笑い声を上げるその顔を、やさしく眺めてシロは言う。
「そんなことはないでござるよ。先生、いや、忠夫どのはお前のことを心から愛しておられる。以前、稽古とはいえ流汐にはどうしても剣を向けることが出来ないと、仰っていたでござるよ。だから、拙者がこうして指導することになったわけでもあるんだが……ともかく、もう少し、忠夫どのを敬うでござるよ」
その諭すとも言えないような口調に、流汐が微笑み返す。
もしこの場に、あのアシュタロス戦役を戦い抜いた者がいれば、その笑顔に何かしら感じ入るものがあったかもしれない。
「わかってます。……全てわかってますよ、先生。世界では先生の次に俺が、親父を尊敬してるんですから」
言うと、流汐はくるりと振り向いた。
「さあ、次の現場に向かいましょう! 先生! まだまだ、成仏できない輩はごまんといるんですから!」
「そうでござるな、いくとするか」
颯爽と立ち去る二人の前に、夜はまだ深く横たわっていた。
〜GS美神外伝エピローグ 終〜
今までの
コメント:
- エピローグじゃない! プロローグでした!(←間抜け)
もちろん続きません(笑)きれ―な息子と父親の日常に乾杯w (矢塚)
- 転生先は男だったんですか・・(笑
本当に彼らの日常に乾杯ってかんじですね。
投稿お疲れさまでした。 (かぜあめ)
- 男に転生っていう設定と師匠がシロっていうのがイイ!!w
今回のお話はプロローグで止めたからこそいい味が出てると思います♪ (ユタ)
- >かぜあめさん。
まあ、そのありがちネタを書き散らした感もあり、もうちょいなんとかしたかったなぁと、投稿の後に思っております(爆)
きれ―な息子に萌えるオヤジも、それはそれで面白いかなと(笑)
>ユタさん。
ほんとただの思いつきなんで、お話の始まりだけを書いてみました。
やっぱり、こう、シロとタマモ(←?)がアフターストーリーには出てこないといけませんや(笑)
実わ、続きなんか思いついたら書こうとも思ってたりして(爆) (矢塚)
- 転生して男に……。
良かった…。これであの子は、一生胸の事で悩まずに済むんですね(←おひ) (黒犬)
[ 戻る ]
管理運営:GTY+管理人
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa