ザ・グレート・展開予測ショー

姉妹H


投稿者名:アフロマシーン改
投稿日時:(03/ 5/24)




バスのタラップをたんたんと降りると、懐かしい風が少女のほほを包んだ。

「ただいま」

バス停には、誰もいないのにおもわずつぶやきがもれる。
少しほほを染めて荷物をもつと、うつむき加減に少女は歩き始めた。

ガラガラガラッ

「ただいま〜。……誰もいないの〜?」

神社である実家は、無用心にも鍵はかけられておらず人気がなかった。

「寄り合いかしら?もう、今日帰ってくるっていったのに。」

今は慣れてしまった都会生活とのギャップに、ややとまどいつつも少女は、自分と姉の部屋にはいると、荷をときはじめた。

「先にお風呂でもはいっちゃおうかな」

神社の裏手には、天然の温泉がわきでている。無論家内用なのだが、時々動物も入りに来る。よく姉の早苗と一緒に入って、世間話に熱中し、のぼせたものだった。

(よくのぼせて、鼻血をだしてお姉ちゃんに部屋までおぶってもらったっけ)

脱衣所について、かごにふわりふわりと身につけているものを放り込みながら、生まれたままの姿になると、ふと少女は同僚の少年を思い出した。

(横島さんは今頃、美神さんのお風呂を覗いているのかしら?)

なんとなく少年にまじまじと見られているような気になって、少女は真っ赤になると、あわててタオルを胸に巻いた。


「ふぇっくしょん!ちきしょう、誰かオレのこと噂してんのかな?」

「だ〜れ〜が〜、あんたのこと噂にしてるって!」

「ひいっ、美神さん、いやちょっと壁の修理を、おおお!?まるみえじゃ〜」

ぐしゃっ、ぼきっ!、どしゃっ


(男の人ってどうしてああなのかな〜)

実際に美神事務所では、予想通りのお約束が行われていたのだが……
準備ができると少女は温泉の衝立を抜けようとした。


ガサリ


「…あ……」

温泉場に人の気配、話し声もする。

(誰!?)

あわてて衝立の陰に隠れると、少女はおずおずと隙間から覗き込んだ。

(お姉ちゃん!?……山田先輩もいる……)

右手につかんだボディソープの容器を思わずぐっと握り締める。

(…え……あ……)

凝視する少女の脇の下はいつのまにか、じっとりと汗をかいていた。

(……お、お姉ちゃん…すごい……)

ゴクリ

思わずのどをならしてしまう。

(…いつのまに……でも…うわ…うわ〜……)

とくとくとくとく

バスタオル一枚を通して高まる胸の鼓動が伝わってくる。

(…すごい……、ええ…あんなに……)

容器を握り締める力が次第に強くなる。

(でも私も……さんとだったらいいかな……)

だんだん、自分の妄想にふみこんでいく少女。

(…えへ……やだ!わたしったら何考えているのかしら)


ギュ!ぴしゃっ!

「キャッ!?」

と、あまりに強く握り締めたために、ボディソープの中身が少女の顔にとびちった。

「誰かそこにいるのけえ!」

早苗のいくぶんどぎまぎした声が露天温泉に響いた。

「お、おねえちゃん〜、ふえ〜ん」

少女は、いささか罰の悪い顔をしながら衝立から姿を現した。

「あ、おキヌちゃんでねえだか♪もーそったらとこでそんな格好してたら風邪ひくだよ。」

「でも、お風呂はいろうと思ってたら……お姉ちゃんきれい……」

「うふ、そうだか?ちょっと式の前にどうしてもきてみたくなって…えへへ、似合うだか?」

「うん、すごくきれい……お姉ちゃん」

「今日、わたすの結婚式のために、おキヌちゃんが帰ってくることはわかってたんだども、ウェディングドレスにすっかり舞い上がっちゃったんだぁ〜、ホント、ごめん〜」

ドレスに身を包んだ早苗は、微笑むと山田先輩もとい新郎山田氏の腕に寄り添った。


(おねえちゃん、本当におめでとう。そしてわたしの未来の……)


おキヌは、おもわず空を見上げた。

よく晴れた6月の青色だった。











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