ザ・グレート・展開予測ショー

ひのめ奮闘記(その19(B))


投稿者名:ユタ
投稿日時:(03/ 5/21)

















「うわーー!振ってきた振ってきたーーー!!」

パシャ、パシャっと出来立ての水溜りの上を駆けるひのめ。
曇り空というのは分かっていたが、走れば間に合うと思ったのが間違いだった。

「しかも、折りたたみ傘わすれちゃうし!あーもう!!」

そんなこと言っても後の祭り。
雨は容赦なく制服を濡らし、ひのめの体温を奪っていく。
しかも運の悪いことにこの登校路は雨宿りなど出来る場所などない河川敷。
今のひのめにはバッグを傘に走り続けるしかなかった。

「うー!寒い!!え〜とこんな時は・・・・そうだ!」

ひのめは何かを思いついたように左手でカバンを持ち、右手を天にかざした。

「炎よ出ろ!」

そして叫ぶ。
そう・・・ひのめは発火能力で炎の傘を作ろうとしたのだ・・・
しかし

「あれ?出ない・・・って当たり前か」

発火封じの護符が自分の背に貼られていることを思い出し、
ポリポリと頬かいた。そして、キョロキョロと周囲を見回す。

「ほっ・・・誰も見てなかったわね」

少しだけ顔を赤くし呟いた。
誰だって失敗したマヌケなところは見られたくないものだ、
しかし、幸いにも時間と場所と天気がひのめの失態を知らせること防いだ。

「だー!こんな事してないで早く学校行かなきゃ!!」

ビューーーー!という効果音が聞こえそうな速さで駆けていくひのめ。
そのとき・・・・

『こいつバカだわさ・・・』

「ん?」

ひのめ一瞬自分の耳に入った声に周囲を見回すが、
そこにはひのめ以外誰もいない。
少しの間怪訝そうな表情を浮べたのちひのめは再び駆け出して行った。


ひのめは気付かなかった・・・右手のリストバンドがあの奇妙な言葉と一緒に青白い光を浮べたのを。


















「がはっ!」

不良の右拳が幸恵のわき腹を容赦なく突き刺さった。

「この!」

幸恵は何とか左手でパンチを繰り出すが、それは難なく目の前の不良に避けられてしまう。
そして、次の瞬間には別方向からの蹴りが幸恵の右側頭部を襲った。
その衝撃にバランスが崩れグラつく幸恵、そこへ・・・

「おらぁ!!」

「かはっ・・!」

背に落とされた肘鉄に息がつまり幸恵はそのまま床に膝をついた。

「はぁはぁ・・・けっ!こんなもんかよ」
「やっぱりひーちゃんとやらもおめぇも大したことねーんだよ」
「いや、このクラス全部弱ぇんじゃねのか?」

三人組は一向に立とうしない幸恵に罵声を浴びせる。

(ふん・・・江藤さんもここまでか。現場じゃ霊力を消費してたから失敗しましたじゃ済まないのよ)

京華は冷たい瞳のまま幸恵を遠くから見下ろした。
例え霊力が消費してようが、除霊現場では言い訳にならない。
京華はそんなプロ意識を既に見につけているのであった。

(とは言え・・・・あんな三バカにこのクラス、
 ひいてはわたくしを弱いと思われるのは心外ですわね)

とにかく幸恵を引かせてあとはあの三人を始末するかと歩み出す京華。
しかし、そのとき結界フィールドの周囲でざわめきが起こった。

「ぜー、ぜー!」

何と幸恵がゆっくりとだが立ち上がってきたのだ。
しかし、立ち上がったと言ってもそれが限界とばかりに足は震え、肩で息をする。
明らかにもう戦える状態ではなかった。

「てめぇもしつけぇなぁ」

リーダー格の不良があからさまに不機嫌な表情で拳を振り上げる。
その拳は振り降ろされた瞬間誰もがもうダメだと思った。
だが、

「なっ!?」

幸恵はその拳を横回転しながらくぐり抜けた。
そして、半回転の勢いのまま回転肘を不良のアゴへと叩きこむ!!

ドガっ!!

決まった・・・見事、寸分違わずその左肘は不良のアゴを捕られた。
例え鍛えた男子だろうが、立っていられるはずのない角度だった・・・・
───実戦なら。


「おしかったじゃねぇか」

「!?」

幸恵の表情に焦燥が浮かぶ。
悲しいかな、この結界フィールドの中では発生した攻撃には『霊力』が込められない限りダメージは与えられない。
今の幸恵は体力があっても、幸恵は霊力が先に尽きていた。

「じゃあ・・・・なっ!!!」

ドゴッ!!!

乱暴な蹴りが幸恵の腹部に強烈に入った。
幸恵の足腰は自重支えることが出来ず、そのまま背から床へと落ちていく。
周囲のギャラリーは幸恵が受身も取れず床に叩きつけられる・・・・誰もがそう思った。











トサ・・・・
















しかし、幸恵の背に訪れた感触は体育館の冷たく固い床ではなかった。
温かく柔らかい人の腕・・・それは───


「あはっ・・・・遅刻だよ、・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ひーちゃん」

ひのめ・・・
脱力した幸恵の背を支えるのは美神ひのめだった。
幸恵は久しぶりのひのめの顔を確認すると笑いながらゆっくりと目を閉じる。
そんな親友にひのめも少しだけ、笑みを浮かべると面前の三人を憤怒の瞳で睨みつけた。

「よくもよくも・・・・・さっちゃんをやってくれたわねぇ・・・・」

静かで・・・それでいて怒気のこもった言葉に不良三人組、
いや、周囲の生徒全員が何かプレッシャーのようなものを感じていた。
そんな中で・・・
   
  ───三世院京華だけは静かに微笑を浮かべているのだった───








                                       その20に続く


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あとがき

いやぁ〜、久しぶりに本編書いたんですけど・・・その19を書き始めて、

「ああ・・・そうか。ひのめはもう覚醒したからいじめれないのか・・・何か寂しいような物足りないような・・・」

と、考えた僕は病気ですか?(笑)
後半戦も頑張るのでどうか応援のほうよろしくお願いしますm(__)m




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