ザ・グレート・展開予測ショー

veldさんからのリクエスト〜『魔女とキツネと犬とお店と』〜


投稿者名:かぜあめ
投稿日時:(03/ 5/17)

このお話をveldさんと・・全ての横タマ・横シロ・横魔鈴好きさんたちにささげます(笑
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〜魔女とキツネと犬とお店と〜


んがああああ・・んごおおおお

午後8時。
静まり返った料理屋に・・・・呆れるほどのいびきが響いた。
近づいてみれば案の定・・青年がよだれを垂らして寝ているわけで・・、

「横島さん。もう閉店時刻ですよ。」
魔鈴めぐみが口を開いた。
・・・・。
んがあああああああ・・んごおおおおお。
「・・横島さん。起きてください。」
んがああああああああああ。んごおおおおおおおおお。

・・心なしか勢いがついたのは気のせいだろうか・・?

えい、と一声つぶやいて、鼻をつまんで呼吸をふさぐ。

んご!???・・・。
・・ふすー・・ふすー・・・・・。
・・・・・。
・・・・・。
・・・・・・・・・・・・。
・・静かになった。

「・・・・って殺す気ですかああ!!」

「やっぱり起きてるんじゃないですか!!」

・・どっちもどっちと言えなくはないが・・、魔鈴の怒りも、もっともである。
今しがたまで惰眠むさぼっていたこの男は・・
なんとコーヒー一杯で7時間以上店に居座わり続けたのだ。

「お会計・・150円になります。」
そう言いながらため息をつく。横島はあくびをしながら財布を出して・・・、
「へ〜い・・今すぐ・・・・。」
・・・・・・。 

「・・・・・・!」

・・固まったように動きを止めた。
・・・・。
「・・・・横島さん・・。会計・・150円になるんですけど・・。」
「そ・・・そうみたいですね・・。」
冷や汗と油汗が同時に流れて、
「あの〜魔鈴さん・・ツケとかには〜・・」横島の声が空しく響いた。

氷のような微笑とともに・・店内が本来の姿・・異界へと変わる。

「まさか・・私のお店で食い逃げなんて・・考えてませんよねえ・・。」
ブンブンブンとホウキが振られ・・。
脱出不能な闇の中・・悲痛な叫びが轟いた。


(2)
「・・もう!・・罰としてしっかり働いてもらいます!」

大分頭が冷えたとはいえ、彼女の怒りは収まらない。
横島の手をがっちりつかみ・・、台所へと踏み込んだ。
そこには様々な食材が用意されており・・、

「・・魔鈴さん・・?一体なんですこれ?」

「明日の料理の下準備です。最後まで付き合ってもらいますからね。」
・・ということになったらしい。
有無を言わさぬ彼女の口調。はねのけることなどできるはずもなく・・、

「・・・へ〜い・・。」
もうこう答えるしかないのである。
・・。
・・・・。

同時刻。準備の始まるキッチンに・・コソコソ忍び込む気配がふたつ。

(「こっち・・タマモ・・こっちでござる!」)   
(「・・静かにして・・。ばれるわよ?」)

ご存知、シロとタマモの2人である。
仕事をさぼった横島を探し・・、店に入ったこのコンビは・・

「へえ、横島さん結構お上手じゃないですか。」
「そうかなあ・・。包丁なんて滅多に握らないんすけど・・。」

・・・とんでもない場面に遭遇していた。
彼の横には・・見たこともない美人が立っており・・、
物陰なのでよく分からないが・・仲むつまじく料理を作っている・・(ように見えた。)

(「た・・タマモ!まずいでござる!先生が・・!先生が変な帽子をかぶっ人に!!」)
蒼白のシロが涙目で叫び、それにタマモがさらりと返す。
(「だから静かに。大体ねえ・・、・・私はあんな奴のこと・・」)

どうでもいいと続けた矢先・・、
・・。

「横島さん?ここ手をそえるとやりやすいですよ?」
ピトッ。


・・なんて場面が目の前で展開されて・・、
・・・。
・・・地面に拳打がめりこんだ。

「な・・な・・な・・なに横島の手にさわってるのよ!!」

どうでもいいんじゃなかったのかというつっこみもあるが・・
・・とりあえず静止をかける者など居るはずもなく・・、タマモが静かに腕を組む。
俄然やる気を増した仲間に、シロがコクコク頷いて・・、

「よ〜し・・。まずは拙者が切り込むでござる。」

・・密談がはじまったわけである。
飛び出す単語は・・炎に刀・・奇襲、強襲 etc....。
・・はたから見ればまさしく物騒極まりない。

「それであんたが切り込んだとして・・失敗したらどうするつもり?」

・・というタマモのつぶやきに、

「間合いを縮めてタマモが狐火を撃てばいいんじゃないか?」
呆れたように『誰か』が答えた。

「・・なるほど・・・。なかなか冴えてるじゃないの横島。」
「さすが先生!これで準備万端でござる!!」

・・・・。
・・・・・・。
・・・・・・・・・・。
瞬間、2人が固まった。

傍らには、標的となった張本人が座っており・・、
「!?いつの間に!?」

・・声がハモった。
「そりゃ気付くだろ・・。あれだけ騒げば・・。」

よく見ると・・いつの間にやら会話文からカッコが取れたりしてるわけで・・・、
「あ・・・う・・・・。」打つ手なしとはこのことである。

「なにがなんだかよく分からんが・・、不法侵入だぞ。魔鈴さんにきちんと謝れよ。」
「・・・・・。」
・・お前のせいだろ、と思わなくもない。しかし確かに一理ある。タマモとシロは、横島と・・後ろに立った魔鈴を見比べ・・・

「「・・ごめんなさい。」」
あきらめたように頭を垂れたのだった。


(3)
・・・どうにも納得いかないと・・横島忠夫が首をかしげる。
11時を回り、タマモとシロを引きつれ、帰ろうとした。
ここまではいい。
魔鈴がそれに対して『玄関まで送る』と言ったのも・・別段変わった反応ではない。
問題は・・その後だ。

移動中、4人の間でこんな会話が為されていた。

「大体、先生にだって非があるでござる。こんなところで美人とイチャイチャ・・。」

「・・はあ?なんの話だ?オレはコーヒー代のかわりに働いてただけだぞ?」
そんな横島の言葉に、少女2人は顔を上げる。瞳に安堵の色が浮かんでいるのは・・多分気のせいだろう。

「・・じゃ・・じゃあ下心があったとかは・・。」
「全くね〜よ。たまたま財布を忘れただけだ。」

・・・・。
で、横島が疑問なのは・・ここまでの会話の・・何が魔鈴を怒らせたのかであって・・、

「あの〜魔鈴さん・・。なんでそんなにむくれてるんです?」
隣を歩く本人に直接疑問をぶつけてみた。

「・・むくれてません。」 「い・・いや・・。明らかにむくれてるんじゃ・・。」

「むくれてません。」   「・・・・・・・・。」

もはや取り付くしまもない。
もう一度聞こうとした時に・・、タイミング悪く玄関についた。

外には夜風が吹いている。

その時だ。
・・突然魔鈴が口を開いたのは。

「・・・横島さん。私、嫌いな人を家に入れたりしませんから・・。」
横島が・・きょとんとしながら振り向いて・・、
「はい?」
などと・・気の抜けたコーラのような返事をした。

「・・もう!!!本当に鈍感なんだから!!私は――――」

・・・・ビューーッ。
・・勢いよく風が吹いて・・彼女の言葉を打ち消した。
もちろん彼に声が届くなどあるはずもなく・・、

「へ?すんませんもう一回・・・。」

「知りません!!!」
タッタッタ・・。彼女は一人去ってしまう。後には・・目をパチクリさせる横島と・・。
魔鈴の言葉がバッチリ聞こえた・・シロとタマモが・・唖然としたまま立ちすくんでいた。
           ・
           ・
           ・

「それで・・結局なにも言えなかったにゃ?」
使い魔ネコが半眼のまま口を開いた。

「うう・・もうちょっとだったのに・・。チャンスだったのに・・。」

それに魔鈴が暗い目で答え・・、
・・ため息しか出ないというのは・・誰が作った言葉なのだろう。
すねた様子の主人に呆れ・・、
「どうするにゃ?あきらめるにゃか?」
・・なんて言葉をかけてみる。

「い〜え!あきらめません!絶対振り向かせてみせるんだから!!」

明日の準備も半端なままに・・気合新たな魔鈴を見つめ・・、

「・・いつかこの店つぶれるにゃ・・。」

気苦労の多い使い魔は・・そんなことをつぶやいたのだった。

〜おまけ〜

「おお!!今日は財布に余裕があるぞ!
 久しぶりに外食するかあ〜。この間のお詫びにいっちょ魔鈴さんとこに・・。」
・・なんて声が事務所に響いた。

ガッシャーーーン!!!
二つの机がひっくり返り・・、続いて、
「私もいく!!!」 「拙者・・お供するでござる!!」
タマモとシロが、顔面蒼白でそう叫んだ。

「?別にいいけど・・。なんだ?そんなに外食したいのか?」
「「いいから!!」」
2人の心はひとつなわけで・・
・・2度とあの店に一人で行かせてはならないと・・身震いしながらそう誓ったのだった。

〜おしまい〜

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