ザ・グレート・展開予測ショー

幼馴染SS『未来』


投稿者名:犬御所。
投稿日時:(03/ 5/15)


あの時は、本当にこんな時がくるとは、思ってなかった。

ひらりと、桜の花びらが一枚、舞う。
手のひらに、乗る薄いモモイロの桜の花びらを眺めながら横島は、はあっとため息をついた。

ぬけきった青い空には似つかわしくない、ため息である。

いやまあ見てるぶんには、目にも楽しいしなんというか、綺麗だなああとも思えるが、いかんせん気分が重い(汗)

ここはある大学から少し離れたカフェテリア。
どうやら、学生の溜まり場であるらしく、周りには大学生とおぼしき若者で、しかもその大半はカップルで溢れかえっている。
ま、それもそうだろう。
カフェテリア目の前には桜並木があり、満開の桜が風に揺れている様は見惚れる事間違いなしだ。

よーするに絶好のデートスポットなのである。


この先一生大学なんぞに、いく頭もかねもない横島は、アイスコーヒーを、ストローでかき回しながら再び、ためいきをつく。

ため息の原因は、こんなところにいる自分でもなく、周りのやろーと嫉妬の視線ではない。
目の前には、もう目をみはるよーな美少女だったりする。
いや、美少女というのはもう、大人びているだろう。
かといって美女というには何か違う。

この年代でしか表せない、神秘的にすら思える美しさを思える女性といったほうが一番しっくりくるであろう。


艶やかな栗色の髪の毛は、腰まで流れるように伸びており肌は驚くほど白い。
容姿は、濡れたような、黒曜石というのが相応しいであろう瞳にバランスよく配置された、すこし高めの鼻にモモイロの薄い、桜を思わせる唇。
抜群のプロポーション。
文句のつけようの無い美しいひとである。


これだけのひと。
ふつーなら。横島ならば有頂天になり踊りの一つでも踊りだすものなのだが。
今の横島はまるで、機嫌の悪い美神と一緒にいるかのような、憂鬱な表情である。


が、その女性は、にこっと笑い桜色の唇で
「どしたん?腹でもいたいんか?横島」
といった。。

美しい
ほんとうに美しいひとである

口を開かないでいるならば。

「てーか本当にくるとわ」

手のひらで顔をおおい、横島は唸るように言う。


「何言うてんの?うち二年前に東京くるいうたやん」

きょとっと首を傾げ夏子。
からんと、涼しげな音をたてて、手の中のオレンジジュースの氷が溶ける。

「いやくるとわ言ったが…本当にくるか普通」
これからの生活のことを考え横島ははげっそりとした顔つきで言う。
なにしろ、此処に夏子がくると分かった時点の、美神とおきぬの地と這うような声と凍りつきそうな視線に、シロのライバル剥き出しの…だけどちょっとだけ楽しみにしてそーな声。
なんだかとっても、面倒な予感がする…というかまあ確信といったほうが正しいだろう

『うちの夏子よろしくね(はーと)』

電話口でのとっても楽しそうな某人物の声が、そりゃもう楽しんでますと言わんばかりの声でいってくれた言葉が頭をよぎる。

きっと……すんごく楽しんでる事間違いなしである。

ちなみに、二年前ある出来事で横島は、初恋の相手である夏子と再会し、その時そりゃもーこれえもかっというほどに訪れた出来事のお陰で、夏子は横島にこくはくした挙句に大学は東京にくると宣言したのだ。

そしてこの有言実行女は、その言葉どうり東京まではるばるきたのである。

夏子はオレンジジュースをかき回しながらそりゃもう嬉しそうだ。

「これでやっと証明できるわ」

「なにをだ?」

「うちが横島をどれくらいすきかって」

にっこしと、艶やかな思わず見ほれそうな笑みを浮かべ夏子。
さらりと紡がれた言葉なのにひどく、真摯な響きをもつ。

ただの会話のなかに埋もれるべきではない、言葉に。

そして、その真摯さの影に、妙なものも感じたりする。
なんだか嬉しいと思わないと、いけないのだろーがものすんごく、恐ろしい気がしたのはきのせいだろうあか?

「………かくごしときいや。十年越しの女の純情は恐ろしいでぇ」

ふふっと笑うその姿に怨念のよーなものが見え隠れするのもきのせいだろうか?

「……なんか恨みでも晴らしにこられた気分やなあ」
げっそりと横島が呟くと

「半分恨みみたいなもんやし」
あっさりと夏子

「をい」
思わずつっこみをいれそうな横島にたいし夏子はゆったりとした笑みを浮かべると

大切そうに、言葉を紡いだ。

「でもな、うちずっと横島のことすきやったけど、ずっといえなかったやん…だからさ、これからの時間いままでずっと言えんかった分まで、すきやって言おうおもてるんや…」

優しくて、綺麗な笑みだと、思った。
まるでこの桜のように、艶やかで優しくて、綺麗でそして、
潔い。

「………」

つと、胸をつかれる。

「だからさ、付き合ってくれな? こんなになっても諦められないんやから、すきにさせたって」

言ってることはひどくわがままな事なのに、その声音は優しい。


そしてすっと手をだし、言う

「だから、よろしくな、横島」

そこには媚びるものも、高圧的なものも、ない。
まるで仕合の前にある、握手を思い出させる。
あまりの色気のないそれに、だけどらしいなあと思い横島は苦笑しながらも手を差し出す

「おお」

といいてを握った瞬間

ぐうっと鬼のよーな力で握り締められた。
えらい握力である。

「て、てええええええええええっ!!!!!!!!」
痛い
つーか女の握力じゃない。


「よ・ろ・し・く・なぁあっ!!」

一言一言区切るようにわざとらしく大声をだし
にいっこしと、夏子はこれまでで一番意地の悪い笑みを浮かべ
宣戦布告やといった。

周りはなんだなんだっとこちらを注目する。

なんの宣戦布告だ(笑)


横島は、赤くなった手のひらをさすりながら、やっぱ夏子や

と大笑いする。


「ををっ確かにうけとったぞ!つーか俺は手ごわいからなあっ」

「望むとこやっ!!障害がおっきいほどうちは燃えるたちやからなっ!」

ばちばちと二人のなかにほとばしる火花。

………どうでもいいがまるで、喧嘩や、仕合でも始めそうな勢いである。



この二人、この先どおなることやら。


おわり


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