ザ・グレート・展開予測ショー

猫の恩返し


投稿者名:777
投稿日時:(03/ 5/14)

ある晴れた昼下がり。

これからのお揚げの行く末について真剣に論議していた俺とタマモの前に、シロが物凄く嬉しそうな顔でやって来た。

「せんせ〜。猫って恩返しするんでござるか?」

「するものか」(←即答)

「そうでござるか…」

シロは寂しそうにしっぽを丸めて奥へと引っ込んでいった。

おしまい。










「って、え!? 何、今の会話それでおわるの?」(←クールが売りのタマモさん。現在ツッコミ修行中)

「当たり前だろう」

「だって、もうちょっとこうボケてくれないとツッコミのしようがないじゃない!」(←ツッコミ初心者)

「それはお前が未熟だからだ」

「うぐ…。でも、会話の発展とかそういうのしてくれないと、練習にならないじゃない!」

「年がら年中ボケていられるものか」


##タマモは寂しそうになった!##


さすがにシロとタマモの寂しそうな表情は、俺の海より広いと自称する良心には堪える。

しょうがないので二人の希望を満足させることにしよう。それこそ大人の男である。

「わかったよ。お〜い、シロー!」

「なんでござるかー」

飼い主に呼ばれた犬のように、嬉しそうにやってくるシロの姿は、俺の飼い主冥利に尽きると言っても過言ではないだろう。

「猫が恩返しするかどうか、これから町にでて実地検証といこうか」

「せんせーは馬鹿でござるか? 猫が恩返しなんてするはずがないでござろう?」

これはさっきの仕返しなのだろうか? それとも3歩歩けば全部忘れるシロ頭のせいなのだろうか? それとも実は相棒をツッコミの達人にさせるためのボケなのだろうか?

多分三番目だろう。

けれど、シロの心意気はタマモには伝わらず、タマモは目を丸くして呆けているだけだった。

これではツッコミの達人にはなれない。

俺はタマモの後ろ姿に、そんな感慨を覚えるのだった。









と、言うわけで町にでてきた俺達3人である。







『検証その1』

猫にちくわを与えてみた。

美味しそうにちくわをたいらげた猫は、そのままどこかへ消えていった。

シロが『恩返しするでござるよー』とその後ろ姿に声をかけていたが、多分無理だと思う。

タマモは相変わらず呆れ顔だった。っていうかつっこめ。





『検証その2』

『ちくわじゃダメ。油揚げが良い』というタマモの助言のもと、油揚げ(タマモさんの食いかけ)を猫に与えてみる。

猫はタマモの食いかけを美味しそうにたいらげたあと、そのまま毛繕いして寝てしまった。

恩返しするかも?と言う期待を胸に、猫が起きるまで待ってみようかと思ったが、飽きたのでやめた。

タマモは油揚げの半分を猫にやってしまったことが微妙に悔しげだった。

っていうかお前のために買った訳じゃない。





『検証その3』

だ〜いぶ飽きてきた俺は、買ってきたソーセージを眠っている猫にぶつけてみた。

猫は最初激しく驚いていたが、ぶつけられたのがソーセージだと分かると猛烈な勢いで食べはじめた。

猫がソーセージを食べている途中、突然シロが『あ、そういえば拙者、動物と会話できるでござるよ』と、いま思いだしたかのように言った。

タマモも『ああ、そういえば』とか言ってた。

その二つの後ろ頭にケリをぶち込みたくなったが、まぁ可愛い妹でも見守る兄貴の気分で我慢することにする。

猫が食べ終わったあと、シロは動物語で猫と会話していた。

どうやら交渉は不成立らしい。

『ソーセージをぶつけた精神的慰謝料を要求する』とかそんな言葉で論破されたようだ。

役に立たない犬ッコロである。





『検証その4』

ここいら一体の猫のボスっぽい奴に、最高級の猫缶を譲渡する。

食べ終わった猫にシロが会話、タマモが人間語に翻訳という役割で恩返しをねだる。

『恩返しを目的に恩を売るとは、見下げ果てた人間だ』

なんかそんなことを言われた。

猫に説教された人間は、もしかしたら俺が初めてかも知れない。

さすがはボスっぽい奴だ。






『検証その5』

騙された。

さっきの奴はボスじゃなかった。

ここいら一体の真のボス猫に出会う。

さっきの奴は、どうやら表番長らしい。こいつは裏番長だ。

『奴に猫缶をやって私に猫缶を渡さない、それはここいら一体の猫すべてを敵に回すことだよ?』

という脅し文句に負け、最高級の猫缶を献上する。

猫の脅しに負けた人間は、もしかしなくても俺が初めてだろう。

さすがはボス猫だ。風格が違う。

シロタマがすげぇ情け無さそうな顔でこっちを見ていたのが、酷く心残りだ。

猫缶を美味そうにたいらげたボス猫は、もちろん恩返しなどせず、『あばよ』とばかりに去っていった。

この辺で日が暮れたので、実証は終わることにする。

猫は恩返ししない、それが俺の結論だ。











夕暮れの帰り道。

3人並んで美神宅へ向かう俺達の間に、会話はなかった。

タマモは不機嫌そうにそっぽを向いているし、シロは下を見ながら歩いている。

そんな二人に、俺はどう声をかけて良いか分からず…不自然に明るく『明日は晴れるかな』などと言う馬鹿な言葉をかけてしまった。

俺の言葉に、二人はぴたりと歩みを止めた。

キッと俺を睨み付けるシロ。その目に、大粒の涙が浮かぶ。

「拙者の心は、ずっと雨でござるよ…」

涙を流しながら俺に叫ぶシロ。

俺は何も言い返せない。

「拙者は…拙者は情けないでござる! 拙者の中で、せんせーは強い男でござった! でも、せんせーは、せんせーは…」

シロが泣いている。

何か言葉をかけるべきなのに、俺の口は鉛のように動かない。

「せんせーの、よわむし…!」

最後に一言そういって、シロはこっちを見ずに駆けていった。

その後ろ姿に、俺は声をかけられない。声をかける資格が、俺にはない。

「…バカ犬に同意よ。シロの気持ちを少しは考えなさいよ、バカ横島!」

タマモは酷く冷めた瞳で俺を見て、シロの後を追って駆けていった。

殴られたわけでもないのに…胸が、痛い。

心が、痛いのか…。

踵を返す。

俺は心に傷を抱えたまま、夕暮れの町へと舞い戻っていった。

やるべき事を、やらねばならない事を自覚して。














ボス猫は公園にいた。

配下の猫たちを従え、滑り台の上にふんぞり返っていた。

ボス猫は俺を一瞥し、『昼間の人間か』という侮蔑のまなざしを送ってきた後、興味を無くしたように目を瞑る。





「俺とタイマン張ってくれよ…」




もちろん人間語である。

人間語ではあるが…俺とボス猫は、魂で会話していた。




『俺とタイマン張ってくれよ』

『正気か、若造…。 あまり跳ね回っていると、死ぬことになるぞ』

『こっちも引けねぇ事情があるんでな…』

『ふん、覚悟を決めた瞳をしている。…良いだろう。相手してやる。死んでもしらんが、な』

『ありがたい。さすがはボスだ』

『………ゆくぞ、人間!』





決闘は、明け方まで続いた。

死闘だった。

俺は身体中の爪痕から血を流し、ボス猫には無数のハゲが出来ていた。

河原で倒れ込んだ俺とボス猫を、上ってきたばかりの太陽が眩しく照らす。

決闘は河原でやるものだ。そして河原で死闘を演じた者は、お互いの強さを称え合うものだ。

俺とボス猫は、朝日の中でがっちりと握手する。





『男を上げたな、人間。これが私からの恩返しだ。………さぁ、早く帰ってあの二人の少女に報告してこい』

『なっ…! あんた、まさか全部分かってたのか?』

『もちろんだ。伊達や酔狂でボスをやっているわけではない』

『かなわねぇな、あんたには…』

『まだまだ、若造には負けんさ。と言っても、喧嘩自体は本気だったがな。胸を張って誇ると良い』

『………ありがとう、ボス』

『言っただろう、恩返しだと』




俺達は、朝日の中で笑い声をあげた。








血をだらだら流したまま、俺は美神家のチャイムを鳴らす。

シロとタマモが許してくれるかは分からない。だけど、俺はあいつらに謝らなきゃならない。

ドアを開けてくれたおキヌちゃんを押しのけるようにして、俺は屋根裏へと走る。

そこは二人の寝室であり、二人の寝床である(←同じ意味)

扉を開け、謝ろうとした俺の目に飛び込む情景。

泣きはらした二人の瞳。















………4つの白い饅頭(さくらんぼ付き)………









着替え中だった。













ボス猫より美神さん&おキヌちゃん連合軍の方が強かった。

2人(と言うか4人)に許してもらえたかどうかは………ここで語るべき事ではない。

ただ、ベストを尽くした人間にのみ、世界はベストな結果をもたらしてくれる、とだけ言っておこう。





















「はぁ? ボス猫と引き分け? 弱い弱いとは思ってたけど…あんた本当に弱いわね」

ツッコミチャンプは美神さんで決定。










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ども。猫の恩返しは見てません、777ですお久しぶり。

自分で言うのもなんですが、どうにも妙なお話ですね。

実はIFの続きにどうしても『ツッコミ』が必要なので、タマモさんで練習しようかと思ったのですが…。

つっこんでません。

っていうかつっこめません。

IFの続きは、もうちょっと後になりそうです。ごめんなさい。

嗚呼、文章力とかボキャブラリーとかボケとか色々パワーダウンしてるなぁ…。



感想よろしくなんて、口が裂けても言えそうにないお話でした(←言ってる)

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