ザ・グレート・展開予測ショー

幼馴染SS「二人の距離」


投稿者名:弥三郎
投稿日時:(03/ 5/13)

いま、俺は夏子と一緒に歩いている。


小学校の時に俺は大阪から東京に引っ越してきた。
大阪のときは色々楽しかったなぁと今でもよく覚えている。
銀ちゃんと一緒にバカやったり、遊んだり。
まぁ、銀ちゃんと一緒に女の子をからかったときは全部俺にツケが回ってきたけどな(怒)

俺と銀ちゃん、夏子は近所同士で小さいころからよく遊んでいた。
近くに流れていた小川でザリガニ取ったり、カエル取ったり。
夏子の親御さんと一緒にみんなで遊園地に連れてってもらったこともあった。
そんな感じでずーっと遊んできたんだけど、俺の親父の転勤で東京に行くことになった。
そのときになって初めて俺は夏子のことが好きだとわかった。
いつか言おうかと思っていたけど、言えずじまいだった。

それ以来夏子とはそれっきり。


その夏子が今、俺の隣で歩いている。
勝気な性格はなりを潜めてしまったが、かわいらしい顔立ち、鈴が鳴るような
その声は昔のままだった。
それにこのプロモーション…………

「横っち、鼻の下伸びとるで。」
「ううっ、堪忍やー、仕方なかったんやー」

とまぁ、俺の好みの体型になっていたわけで。
美神さんみたいに胸がでかいって言うわけじゃないんだけど……。

「まさか横っちにまた会えると思ってもいなかったわ。一体何があったん?」
「そういうお前こそどうして東京にいるんだ?まぁ、俺はGSだから除霊に来ていてその帰りなんだけど。」
「へぇ、横っちGSになったんだ?!以前から横っちは普通の人間じゃないなぁと思っていたんやけど。」
「なんとでも言え。」
「私は大学がこっちなのよ。美術学部だし。こっちにいるおかげで標準語に慣れてきたわ。」

昔から夏子は服が好きだった。小さいころ「デザイナーになるんや!!」なんて言っていたっけ。

「へぇ〜、すごいなぁ夏子は。俺なんてそのころ『ハーレムを作る』なんてこと考えていたもんなぁ。」
「いかにも横っちらしいわ。でも、横っちに霊能力があったなんて私も思ってもいなかった。
 横っちもすごいよ。」
「そ、そりゃどうも……」
「ねぇ、この後暇?」
「なに、『茶ぁしばきにいかへんかぁ』か?」

俺は当時冗談で使っていた口説き文句を口にした。今思うとずいぶんませたガキだなぁと思うけど。

「(くすくす)その通りよ。大丈夫かしら?」
「うん、今日は直帰だからね。」
「それじゃ行きましょう!」
「お、おい、そんな手引っ張るなよ!」

俺と夏子は笑いながら駅へと向かった。


渋谷の一角の喫茶店。
落ち着いてジャズが流れているところがいい。
目の前の夏子は美味しそうにパフェを食っている。
でも、財布の中身は大丈夫なんだろうかと心配なんだけど……

「うーん、ここのパフェおいしいのよねぇ。」
「そりゃよかった。」
「横っちは何か食わへんの?」
「いや、俺はこれで十分……」

といって俺はコーヒーカップを持った。

「なぁ、横っち。いま好きな子いるの?」
「ぶふぉ!!」
「あー、汚いなぁ。そんなに驚かせてしまったかしら?」
「い、いや大丈夫だけど……」

「初恋の女の子にそういう事聞かれりゃ誰でも驚くと思うけど」と突っ込みたいところだったけど
そういうことを言うのを何とか押し留めた。
この後夏子の口からとんでもないことがでてくるとは思ってもいなかった。

「私の初恋の相手はなぁ、横っちだったんやで?」
「へっ?」
「なにそんなすっとぼけた顔しているの。そんなにびっくりする事だった?」
「そ、そりゃびっくりするよ。俺はあの時お前が好きな奴って銀ちゃんだって思っていたもん。」
「はぁ、横っちはやっぱり鈍いんだわ〜。クラスの女の子は銀ちゃんと横っちで2分されていたんだよ?」
「う、うそだ……そんな訳があるまい……」
「おーい、横っちー。ダメだわ、こりゃ。あっちの世界に逝っているわ。」

その後何とか立ち直った俺は色々夏子から言われた。
俺が鈍いでせいで泣いていた女の子が数知れず。もっと女の子の気持ちをわかってあげなさいと
説教されるはめになった。
「てか、俺ってもてるの?」と聞くと
「人それぞれには魅力とかがある。横っちの場合は色々要因が重なっているんでしょ」
といわれた。

「でもね、私はもう水に流しちゃったわ。いつまでも引きずっているわけにはいかないしね。」
「夏子は強いなぁ……」
「何か言った?」
「いや、別に……」

俺はそのときルシオラの事を考えていた。

「でね、私は今度フランスに行くことになったの。」
「へぇ、旅行か?」
「ううん、留学よ。向こうでデザイナーとして成功しない限り日本には戻ってこないつもり。」

この言葉を聞いたとき、俺は夏子との間に決定的な壁があることに気がついた。

「新しく『夏子ブランド』を立ち上げるまではね。つらいかもしれないけど、頑張ってやるつもり」
「……そうか、頑張れよ。」
「ええ、もちろん。20年後見ていなさいよ!!」

俺の心配をよそに夏子は無邪気に答えたのだった。


「今日はほんとに楽しかったわ。久しぶりに横っちにあえて。」
「うん、俺も楽しかった。フランス、頑張れよ。」
「ありがとう。大学でてから向こうに行くつもりやから。そのときまでにまたあえるといいわね。」
「うん、そうだな。それじゃ。」
「うん、また……」

夏子は笑って答えた。ドキッとする笑顔。
俺は結局自分の胸のうちをあけることは出来なかった。
弱虫だと思うかもしれないけど、明確に目標を持っている夏子を見て俺は「俺という存在」が
夏子にとって邪魔になってしまったらどうしようと考えてしまったのだ。


俺は一体どうしたらいい、なぁ、ルシオラ?

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