ザ・グレート・展開予測ショー

闇とキツネと温もりと


投稿者名:かぜあめ
投稿日時:(03/ 5/12)



一の矢が・・・わき腹深く突きささる。
散る鮮血と舞う火の粉。
かすむ視界と激痛に・・・私はがくりとひざを付いた。

赤。赤。赤。

赤が全てを染めあげて・・・・わが身の終わりを告げている。

口が動いた。助けて、と。無駄なことだと知りつつも、何度も何度も口にした。

・・ああ・・。
どうして涙が止まらないのか・・。

「何もしてない・・私は何もしてないのに・・。」

それが最後の言葉だった。

刀が振られる音がして・・
世界が沈む。闇に沈む。
消えゆく意識に身をゆだね、私は何度も思うのだ。
次の目覚めは来るのだろうか・・と・・・。
        
 

〜『闇とキツネと温もりと』〜



(1)

「!!!!!」

目が覚めたのは夕刻のこと。
・・汗ばむ背中と止まない悪寒・・・・
そのきっかけに思いを馳せて・・タマモは軽く身震いした。

・・夢を見た・・。昔の夢を・・。


少し眩暈を感じながら、静かに窓へと歩み寄る。

赤い夕陽に顔をしかめて・・それでも視線を外さない・・。
・・・外には・・風が流れていた。

視界を覆うこの色はきらい。否が応でも思い出すのだ・・。
命を絶たれたあの時の・・記憶ではない・・漠然とした強い恐怖を。

・・・・・。
時計の音がいやに響いた。
部屋を見渡し時々思う。
・・いつか・・いつか消え去る時が来るのかと。
仲間たちに囲まれた・・ひどく居心地のいいこの場所も・・、


なんの根拠も考察もない。心にあるのは不安だけ・・。


誰でもいい・・。
ただ一言だけ言って欲しかった。『大丈夫だ』と。
・・・・。
タマモはゆっくりヒザを抱える。

・・らしくもない。あんな夢を見たからだろうか?
         
         
(2)
「な〜に景気悪い顔してんだよ。」

そんな声がして・・タマモは後ろを振り向いた。

すぐそばには・・馬鹿で優しい青年が・・馬鹿で優しい笑顔を立っており・・・

「・・よこ・・しま?」
気付けば・・なんだか間の抜けた声を出していた・・。
「いなり寿司が特売でな。買ってきたんだけど・・。」

食べるだろ?、少し気遣うような表情でその青年はそう言ったのだ。

           ・
           ・
「・・夢か・・。」

一通りのことを聞き終わり・・、横島が一人頷いた。

・・不思議なことだ。
いつもなら・・自分を勇気づけるはずの夕焼けが・・
今は真っ赤な血だまりに見える。


彼女は言った。笑ってしまう・・と。たかが夢。そんなものに捉われている。
たかが夢。そんなものに自分は震えていた。

青年は思う。少女は光を恐れている・・と。死という闇から抜け出して・・ようやく手にした幸福も・・
砂のようにこぼれ落ちてしまうのではないかと。


これはもしもの話である。


もしも光に形があって・・心を映す鏡のように・・
人の前へと現れたなら・・
今の彼女はどんな光を見出すのだろう。

・・・・。
言葉が途切れ静寂が生まれる。数刻なのか数分なのか・・・2人はしばし押し黙った。

そして・・

「タマモ。ちょっとこっちに来てみろよ。」
一体何を思ったのか・・・不意に横島が立ち上がる。
うつむくタマモの手を引いて・・彼はもう一度窓へと向かった。

「・・ちょ・・横島・・!」

「なあ・・タマモ。お前は夕焼けが嫌いみたいだけど・・。」

そう言って・・青年は勢いよくカーテンを開ける。

「・・・・。」
そこからは・・街の様子が鮮やかに一望できた。


公園では、子供たちが遊んでいる。近所にできた服屋ではカップルたちが楽しげに笑い・・、
道をゆく学生たちは馬鹿騒ぎをして歩いていた。

事務所のまわりもよく見える。
勢いよく飛び出すシロに・・、いつものように金を数える美神。
おキヌが静かに花を愛で・・・・・


・・それは・・少なくとも自分にとって・・世界で一番愛すべき光景だった。

・・・・。

「この景色も・・嫌いか?」

「・・・・ううん。」

まわりが赤に包まれて・・しかし恐怖は溶け出していた。


―――・・かわりに流れ込んだのは・・・

「オレが思うに・・お前は少し慣れたほうがいいぞ・・。」

「・・何に?」

「ん〜・・。難しいな・・。強いて言うなら・・幸せに・・かな。」

―――・・何ものにも代えがたい安息であり・・

気付けば涙が流れていた。

「・・もし・・本当に危なくなったら・・その時はどうしよう・・。」
うかがうように聞いてみる。
・・その時は・・。

彼は少女をみつめたままで・・

・・オレがなんとかしてやるから。

こんな言葉を紡いだわけで・・・
・・影が一つに重なった。
「お・・おい・・。タマモ・・。」
戸惑うような声が聞こえて・・気付けば夕日は消えかけている。

世界が沈む。闇に沈む。
だから彼女は思うのだ。・・もう少し・・もう少し・・と。

・・そう・・あとほんの少しでいい・・。
せめて・・心の闇が遠のくまでは・・腕に感じる温もりが・・
私を・・包んでくれますように・・。


〜おしまい〜

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