ザ・グレート・展開予測ショー

とら、トラ、虎!15) 人骨温泉の地鎮祭(後編)


投稿者名:ヴァージニア
投稿日時:(03/ 5/11)


■人骨温泉跡地■
翌日、神野父の許可をもらったタイガーと水樹は、早苗の父が行う地鎮祭(じちんさい)の見学にむかった。
場所は御呂地村の南東部、昨年まで存在した、人骨温泉ホテル跡地。
新しくホテルを建設するために、安全祈願を願って、土地の神様に奉告する(=神に告げる)儀式である。
とはいえここは、地霊:死津喪比女によって壊された建物であり、人的被害ではなく、霊的被害を防ぐ意味合いのほうが強かった。

タイガーと水樹(もと六女G組の黒髪長髪の少女)が現地にかけつけると、巫女姿の早苗と、学校妖怪のメゾピアノがいた。
すでに祭壇の準備も終わり、工事関係者も集まりだしていた。


「 氷室おじさま、お久しぶりです。 」
「 おお、水樹君か、久しいね。 ここの学校には慣れたかい? 」
「 はい、おかげさまで。 」
「 ほう、きみがタイガー君か。 娘達がお世話になるね。 」
「 い、いえ、こちらこそ! 」
「 父っちゃ、オーナーが呼んでるべ。 」
「 お、もう時間か。 それではこれが終わったらうちに来なさい。 久しぶりにゆっくり話をしよう。 」
「 はい。 」

早苗の父は、工事関係者との打ち合わせに行き、早苗も父の仕事を手伝っていた。

「 急がしそうジャノー。 」
「 ええ、とくにこの辺りでは地の霊や神に対しては敏感だからね。
  去年あんなことがあったんですもの。 慎重になるのもしかたないわ。 」




そしてまもなくして、地鎮祭がとりおこなわれた。

まず、お供え物と参列者を祓い清める祭儀 ≪修祓(しゅばつ)≫が行われ、次に神を迎える≪降神(こうじん)の儀≫がおこなわれた。
そして早苗の父は、の神にささげる御神酒(おみき)と水の蓋を取ったあと、この土地に建物を建てることを神様に奉告し、工事の安全を祈ることばを申し上げる、 ≪祝詞奏上(のりとそうじょう)の儀≫を申し上げていた。



「 ・・・・・・なんか不思議だな。
  ひょっとすたら、いま奉告している神様がおキヌちゃんだったかもしれねえなんて。 」
「 ほんとジャノー。 でも、降神の儀が行われたのに、神様の気配がまったく感じられんノー。 」
《 土地神というものは、その地すべてに存在するものだから、その地域の祭事は耳に届いているはずさ。
  大安の日など、多いところで1日何十件もの祭事が行われたりするからね。
  実際にわざわざ足を運んで、すべての儀式に出席しようとする神様はそうそういないものだよ。 》

《 へえ〜そーなんスかー。 》

「 メゾピー先生、物知りジャノー。 」
《 フッ、僕は天才だからね。 》
「 んなこと関係ねえべ。ん? 」

《 お久しぶりッス、早苗ちゃん。 》

「 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 」



「「 えっ!? 」」



早苗達が話している後ろで、いつの間にか会話に参加していた山の神がいた。

「 や、山の神様!! 」   
「 こいつが!? 」

ざわっ
工事関係者たちの注目をあびる早苗達。 ちなみに山の神の姿は普通の人にはみえない。
早苗の父は儀式に集中して、早苗の声は聞こえていたが、後ろを振りかえらなかった。
早苗達は儀式の邪魔にならない程度に、山の神とその場を離れた。





「 山の神様! おめさ、来てたんだか!? 」
《 自分はまだまだ新人の神様っスから、儀式にはなるべく出席するようにしてるっス。 》
「 でも全然気配を感じなかったべ。 」
《 修行のおかげで、霊能力者にも気配や姿を悟られないようにすることが可能になったんスよ。 》

自分の鼻をつまむタイガー。 

「 なんか酒くさいノー。 」
《 いやーはは、さっき御神酒(おみき)をいただいたっスから。 》
《 これが【山の神】・・・・・・・・・・・・醜い。 》

目をそらすメゾピー。

《 ・・・・・・神様に対して失礼な妖怪っスねー。
  おっと、自分はそろそろ儀式に戻るッス。 それでは早苗ちゃん、またあとでー。<フッ> 》

山の神は姿を消した。

「 なかなかキサクな神ジャノー。 」
「 もともと人間だったからな。 さ、わたすらも戻るべ。 」


早苗達が戻ると、祝詞奏上が終わり、敷地をお神酒等で清めていた。
その後、≪鍬入れ(くわいれ)≫≪玉串拝礼(たまぐしはいれい)≫を行い、最後に≪昇神(しょうじん)の儀≫という、神様【ここでは山の神】に元の座に戻っていただく祭儀を行った。
その後の≪直会(なおらい)≫は簡単に乾杯だけで終わらせた。



                              ◆



■氷室家自宅■
地鎮祭が終了した後、タイガーたちは早苗の父の車に乗り、早苗の神社へとやってきた。
早苗の自宅で、タイガーと水樹は早苗の母の用意した昼食をいただいており、メゾピーは縁側で携帯していたハーモニカを吹いていた。

「 水樹ちゃん、たんと食べてけろ。 」
「 ありがとう、おばさん。 」
ぱひゃらひらぴら〜♪ ぱぱらぱ〜♪
「 メゾピー先生は食べんのかノー。 」
《 僕は楽器の音さえ聞ければいいのさ。 》
「 それにしても早苗、式の途中で大声をだすんじゃない。 」
「 ご、ごめんだ父っちゃ。 山の神様がいきなりでてくるもんだから、びっくりしちまってつい。 」
「 山の神って・・・・・・会ったのか!? 」
「 んだ、キサクなひと・・・・いや、神様だったべ。 「またあとでー」って言ってたから、たぶん――― 」 

《 ごめんくださいっスー。 》

「 あ、きただ。 」

早苗達が玄関に行くと、そこには山の神がいた。

「 はじめましてっス、氷室サン! 山の神っス! 」
「 ・・・・・・・・・・・・ハッ! ど、どうぞ! せまい所ですが! 」



しばらく呆然としていた氷室夫妻は、居間に山の神を迎えた。



《 死津喪比女のときはお世話になったっス。
  あの時は自分も神になったばかりで、未熟者だったばかりにみなさんにご迷惑をかけてしまって! 》
「 と、とんでもない! どうか頭をあげられてください! 」
《 自分も精一杯、山の神としてこの地を守るっスから、これからもよろしくお願いしまっス! 》
「 い、いえ、こちらこそ!! 」

あわてて頭を下げる氷室父。

「 神様が土下座・・・・とことん体育会系だべ。 」
「 あんのー、神様の修行ってどんなことをしとるんですカイノー。 」
きっぱり
《 山と一体化になる修行っス!
  山と一つになるため、自分は山を愛し続けるんっス! これぞ男のロマン!! 》
「 ・・・・・・・・・(汗)」

涙を流し、熱く語る山の神。

《 タイガー君の修行の様子も知ってるっスよ。
  神野さんの修行に、あきらめずついていくことっス。 そうすればキミは必ず強くなれるっス。 》
「 は、はい!! 」
「 来年こそは、3度目の正直だべ。 」
《 2度あることは3度あるともいうが。 》
「 おめさ黙ってろ! 」

メゾピーに冷たくつっこむ早苗。

《 つれないな早苗君。 山田君のようにもっとやさしく―― 》
「「  わーわーわーーーーー!!!  」」

突然うろたえる早苗。 そして、メゾピーの所に詰めよる。

ひそひそひそ
『 父っちゃと母っちゃの前で、山田君の話をすんでねえ!! 』
《 なぜだい? 愛する者がいるということは、すばらしいことではないか。 》
『 父っちゃは男関係には厳しいんだべ! 男の子と付き合ってると思われたら、不良娘と思われちまう!! 』
《 意外と古風なんだね。 》
『 うるさい!! 』

顔を真っ赤にしながら、皆に聞こえないように話す、早苗とメゾピー。
後ろでは早苗の両親が何事かと早苗を見ている。

「 どうしたんだ早苗? 」
「 あははははっ! な、何でもないだ、父っちゃ!
  そ、そうだ、タイガーは高校卒業したらどうするだ!? 」
「 ワシは・・・・・・まだわからん。 とりあえずエミさんに認めてもらわんと。 」

そこに山の神が早苗に訪ねた。

《 早苗ちゃんはGSにならないんっスか? 》
「 え、わたす? 」
「 そういえば、去年も今年もまだ一度も試験受けたことないんじゃない? 」
《 早苗ちゃんの力なら、受かるんじゃないっスか? 》
「 ムリだ。 わたすの能力じゃあ試験に不利だ。 」
「 なんでジャ? 」
「 だって、わたすの力は霊媒能力で、実戦向きじゃねえべ。 あんたらもそうだ。
  精神感応の幻覚・心理攻撃は、遠距離戦で力を発揮しても、1対1の近接戦じゃ明らかに不利だべ。
  現に今年の試験も、合格したのは近接戦の得意な人ばっかでなかったか? 」
「 そりゃまあ、そうじゃが・・・・・・。 」

早苗の話を聞いてたメゾピーが発言した。

《 負け惜しみだね。 》
「 なに!? 」
《 違うのかい? 戦ってもいないのに、そんなことをいってるようじゃあ、そう思われても仕方ないだろ?
  それに今、試験に合格するためにがんばっている水樹君とタイガー君に失礼じゃないのかい?  》
「 うっ! 」

珍しくまともなことをいうメゾピーに反論できない早苗。

《 どうやら早苗ちゃんは自分の能力を使いこなしていないようっスね。 》
「 え!? 」
《 早苗ちゃんの霊媒力はすごく強いんス。
  呼び込んだ霊を制御できれば、その力を自分のものとして使うことが出来るっス。
  その気になれば、魔王や神すらも呼ぶことができるかもしれないっス! 》
「 魔王ってのはちょっと怖いけど・・・・・・まあ神様がそう言うんなら、わたすも来年受けてみるかな。 」
「 となると、早苗も修行せんといかんな。 」
「 父っちゃ、厳しいのは勘弁してけれ。 」
「 こりゃワシらもうかうかしておられんノー。 」
「 フフッ、そうね。 」

この日氷室家の昼食は、久しぶりににぎやかなものとなった。



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