ザ・グレート・展開予測ショー

書き散らしショート


投稿者名:アストラ
投稿日時:(03/ 5/11)

「なんや、今日もいい天気やなぁー」

 貧ちゃんこと貧乏神はある晴れた朝、外をぶらぶら散歩していた。

 暖かったせいかもしれない、あるいは昨晩、ひさしぶりに白米を食べられたからかも知れない、気がゆるみ、

「そこのちょっと変わったキミ」

 油断していたせいか、

「私の研究の手伝いをしてくれないかい? 報酬は出そう」

 白衣を着ている変な男に声をかけられた。

「手伝い?せやかて、なにするんや? むしろ、あんた何者や?」

「ああ、獣医を志して幾数年、開業してからの私はありとあらゆる動物と関わってきた。

 ある時は犬、またあるときはネコやウマ。そしてまたあるときはニホンオオカミやチュパカブラスを、

ネッシーと名乗る巨大な生物のところへ受診に入ったこともある」

「最後のほう、おかしな生き物あがっとらんか?」

「そんなことないぞ、チュカパブラスなんて、チワワのペットブームにあやかって、大量生産することになったらしい。

主な輸出先はイ○ク、アフ○ン、北○鮮だそうだ」

 わけがわからないことを口走る、山村医師。

「なあ、その依頼主の名前、聞いていいか?」

「US・ARMY、だったか、DIAだか‥そんな感じだ」

 風が、吹いた、体感温度は氷点下だ。貧乏神は話をそらそうとした。

「根本的なこと聞くで。あんた、獣医やろ? なんでそんなことすんねん」

 その通り。

「それに一介の獣医のところにそんな国際的な依頼、くるかいな」

 ごもっとも。

「気にしてはいけない。そして私は進歩的な考えをもつ獣医! 診療だけでその生涯を終わらせたりはしない!

 人の姿になれる犬−−本人は人狼といってたが−−それを見たとき以来、私は珍しい生物を見るたびこうして あきあることなき研究心を燃やしている。

いわばあれが私の人生の転換期・ターニングポイントだったのだぁ!」

 どんどんヒートアップしていく山村医師。それにひきかえどんどん冷めていく貧乏神。

「なんや、よう分からんけど、わい、遠慮させてもらうわ。おっさん、ヤバそうやしな」

「な…! て、照れなくていいんだよ」

「誰が!」

「いいから私に任せて」

「何を!」

「さあー、行こう!」

 スッパーン、貧乏神の手を無理矢理ひっぱった山村医師の頭に、何かが振りおろされた。

「あ…君は、…」

「先生、こんなところでなにやってるんですか。こんなところで珍妙な生物ナンパしてないで、早く仕事に戻って下さい!」

「いや、私はただ研究の…」

「なんですか!?」

「いえ、なにも」

「わいは珍妙な生物やないで、貧…」

「うるさいですよ!」

「……」

 一気に威圧する看護婦。蛇に睨まれたカエルのように押し黙る1人と1”神”。

「さ、早く来て下さい! 患者が待っているんですから」

 ずるずるとひきずられて、山村医師が遠ざかっていく。

「まってくれーっ、私の研究を…研究を…」

「何いってるんですかっ」

 そして、完全に見えなくなった。

「…何だったんや、一体…?」

 取り残された貧乏神は一人ごちた。

 そして、すべてを春の陽気のせいにしてその場を去った。

 彼がその出来事を記憶から抹消したのはいうまでもない。

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