ザ・グレート・展開予測ショー

ひのめ奮闘記外伝(その5)


投稿者名:ユタ
投稿日時:(03/ 5/ 9)






「あ、ああ・・・あああっ」

ひのめは崩れるようにその場に膝をつき、震える手で靴を拾った。
間違いない・・・今日幸恵が履いていた青のスニーカー。

それが奴の口から出てきた・・・ってことは・・・ということは・・・

ひのめの意識がグシャグシャになっていく・・・
胃液か唾液しめったスニーカー・・・
それを幸恵と一緒に買いに行った光景がスーとひのめ頭の中を流れていくのだった。

『グズグス・・・あ゛〜〜旨かったわあの子・・・・柔らかぐて、深みがあっで・・・・・・でお゛泣がないで・・・
 あなたもふぐに食べてあげる゛・・・・・あの娘のよ゛うにね・・・きゃははあははあは!!!!」

腐って裂けた口で上手くしゃべれないのだろう・・・
それでも女は愕然としているひのめを嘲笑うように言い続けた。


それは───ひのめの怒りを沸点まで達せさせるには十分な言葉だった。


「あの娘のように・・・?・・・・・・・・・・・さっちゃんのことか・・・・・



 さっちゃんのことかああああぁぁぁ────────────────っっ!!!!!!!?」


ザンッ!!!



『!!!?』

女が気付いたとき・・・そのときにはひのめの拳は既に女の鼻先にあった。

「うあああああああぁぁあぁっ!!!!」

ドガシュウュゥゥっ!!

霊力を込めようなどという思考はひのめにはもう無かった。
とにかくこの女のツラを殴る。
それだけしか考えていない拳は今まで最大の霊力が込められており、
腐った肉、モロい頭蓋をいとも簡単に粉砕した。


ドチャ・・・・


嫌な音と共に首から上がなくなった女の体が仰向けに倒れていく。

「はぁ!はぁ!はぁ!」

肩で大きく息をする、別に冷静さを取り戻そうとしてるわけではない、
ただただ興奮した肺が新鮮な空気を求めているだけだった。
やがて、息も整うと・・・

「う、ううう・・・」

体中から力が抜け膝を地につく。
そして、そのまま顔伏せ両手で大地を叩いた。

「ううう、あああぁぁぁ!!ぐっううう!!・・・グず・・・
 ああ゛ああ゛あ゛あああ、うああああーーーーーーーああっんっ!!!!!」

ひのめは大声を上げて泣いた。
間に合わなかった・・・親友を助けることは出来なかった・・・
一生懸命戦った・・・・けど幸恵はもういない・・・戦う前からもういない。

なぜもっと早く駆けつけなかった・・・なぜあそこでケンカ別れなどした・・なぜ裏道など通った・・・

後悔と自責の念だけがひのめの心を支配していく。
苦しい・・・心が壊れそうだ・・・
幸恵との出会い、そして一緒に遊んだ日々、ケンカしたこと・・・
それらが一つ一つひのめの胸を通る度に嗚咽は大きくなり、涙が溢れて止まらなかった。


(もう・・・・・ダメ・・・もう立ち直れないよぉ・・・)







ひのめが親友の死に壊れそうなそのとき─────





『おいおい・・・・まだ終わってないぞ』

「!!?」

その声にひのめは顔上げる。
声の主は男・・・・年頃は20歳いくかどうかだろう・・・
顔立ちは2枚目半、服装はジーンズを履いているものの上半身はなぜか裸。
それでも、パっ見はいかにモテそうな感じだった・・・・・・・・・・・・・生者ならば。
腹部から溢れでている臓物が死人であることを肯定している。

「まだ生き残りがいたんだ・・・・」

ひのめはゆっくりと起き上がると静かに男に向かって歩き始めた。
あらん限りの殺気を込めて。

『ヒュ〜、その年でこれだけ殺気を放つなんて末恐ろしいね〜〜でもこれを見て落ち着けよ』

パチンっ

男が指をならすと小さな地響きと共に縦、横それぞれ2m強の石壁があられた。
そしてそこにいたのは

「さっちゃん・・・・」

そう幸恵だった。
石壁になにか鳥もちのようなもので両下腕と下半身を石壁に貼り付けられている。
上半身の紫色のトレーナーはところどころ破れているようだが、大怪我をした様子はない。
何より・・・

「ぅ・・・ひぃ・・・ちゃ・・・ん」

生きている。
その事実が状況はどうあれひのめの心を一気に明るくした。

『どうだい?お友達が生きてて嬉しいだろう』

男が笑顔を浮かべ言ったが今のひのめにはそんな言葉は届いていなかった。

「さっちゃん返してくれるのよね・・・」

『それは困るなぁ・・・・一気に食べたりはしないが栄養分はもらわなきゃならいんでねぇ・・・』

男はニタニタといやらしい笑みを浮かべ幸恵の首筋についている赤いホースみたいなものをさすった。
太さは直径1cmくらいだろうか、それが左首筋、右鎖骨、そして左胸の三箇所にまるで幸恵の肌と融合するように、
刺さっている。

『これ何かわかるか?』

「説明を聞くつもりはないわ・・・・さっさとさっちゃん返しなさいよ」

『そう恐い顔しなさんな・・・・いいか?このパイプや鳥もちみたいなのは『吸血糸(きゅうけつし)』って言ってな、
 まあ簡単に言えば生き物の栄養、生気を吸い取る性質を持ってんのよ』

「それを聞いてますます許せなくなったわよ!!」

ダッ!!

ひのめが地を蹴り男と間を詰める。
しかし・・・

『慌てるなって・・・』

その一言と同時にひのめはまるで何かに押さえつけられるように体が重くなった。
その場にうずくまり一歩も動けなくなってしまう。

『結界の強度を3倍にした・・・その霊具程度じゃ効果はねえだろう、クカカカ』

くやしいが買出しのついでに厄珍からもらった程度の結界無効具では今の呪縛結界を破ることは出来なかった。
ひのめは怒りを込めた視線を男に浴びせ続ける。

『説明続けるぜ・・・・。何も俺も鬼じゃないんだ、生気をもらうお礼をしなくちゃならないよな?』

「お礼?」

『この『吸血糸』に生気を吸われるとな、衰弱していくのは確かなんだが・・・その代わり・・・』

男が幸恵を見てニヤっと口元を歪めた。

『普通に生きてたら一生味わうことの出来ない快感を味わうことが出来るんだぜ』

男は幸恵のあごを右手でクイっと持ち上げる。

その顔は生気は確かに薄れている・・・
しかしその表情は恍惚とし、頬を赤らめ上気した息を細かく吐いている。
全身に流れるいかんともしがたい快感に幸恵は小刻みに震え、目は虚ろとなり潤んで視界がボヤけた。

「さっちゃん!」

「ひ、ひぃ・・・ちゃぁん・・・わたし変だよぉ・・・・
 とって・・・もだるいのに・・なんか気持・・・ちよくて・・・はんっ・・・」

中学生とは思えない色っぽい表情で悶え、熱い吐息を漏らす幸恵。
男はそんな幸恵に劣情を覚えたのか、いやらしい笑みを浮べながら幸恵の頬を撫でた。

『な?あんたのお友達は今天国にいるんだよ・・・邪魔しちゃ悪いだろ?』

「うるさい!!早くさっちゃんを離せこの変態!ひのめ裁判じゃセクハラ罪は極刑よ!!」

語気を強めながら男に怒鳴るひのめ。
もちろん親友をこんな目に合わせるのが許せないというのもある、
それにプラスして親友のあられもない声にちょっとドキドキしてる自分をごまかしていた。

『そっか・・・俺が言ったんじゃ説得力ないか・・・じゃあ幸恵ちゃんから言ってもらおう・・・かな!!』

「あんっ!ひゃああぁぁん」

男は幸恵の肩に手を回すとさらにその手を伸ばし、幸恵の豊かな胸を乱暴に掴んだ。
『吸血糸』から流れてくる媚薬に犯された幸恵の身体はそんな行為にまで敏感に反応し、
その口から出る嬌声はさらに大きくなるばかりだった。

『これで15歳か・・・・殺すにはもったないねぇなぁ・・・
 まあいいや・・・ほら、ひのめちゃんにお別れいいな』

男は幸恵の前髪を持ち上げひのめにその表情を見せつけた。
ひのめは男に怒りを覚えつつも、何も出来ない自分に怒りを覚え悔しくて涙が止まらない。

「はぁ・・・ひィ・・・・ちゃ・・・んっ・・・」

息も絶え絶えに幸恵は言葉を続ける。
男は「さあ言え」と拒絶の言葉を期待する。
ひのめは「言わないで」と、助けの声を求める。
そして・・・幸恵が言ったのは

「もう・・・んっ・・・いいから・・・」

男の顔に醜悪な笑みが浮かび、ひのめの顔には悲しみが浮かぶ。
だが・・・

「私のことは・・・はぁ・・・いいから・・・逃げて・・・ひーちゃんだけでも・・・逃げ・・て・・・
 ケンカした・・・のに助けにきてくれて・・・ほん・・・っとに・・・嬉しかった・・
 やっぱ・・・・り・・・んん・・・・・・・・・・・・・ひぃちゃんは強いね・・・・」

「さっちゃん・・・」

幸恵は全ての力を振り絞り言いきるとカクっと頭を垂らした。

『くっ・・・このアマァ!!』

自分の思い通りにいかないことが気に入らなかったのだろう、
男はその手を振り上げ幸恵の頬をぶとうとする。
が、しかし

「待ちなさいっ!!」

ひのめの通った声が男の行動を止めた。
そして、ひのめはゆっくりと・・・重石をその身体にのせたように震えながら立ち上がる。
その光景に男は信じられないと言った表情を浮かべるだけだった。

『なっ!そんな動けるはず・・・』

「うるさいわねぇ・・・・・美神・・・
 美神ひのめをなめるんじゃないわよーーーーっ!!!!」


パアァァァン!!!

何かが弾けると共にひのめの身体に圧し掛かる何かが消えた。

『こ、こいつ気合で結界を!!?んなバカな!!!?』


「覚悟しなさい・・・・強制わいせつ罪に婦女暴行未遂・・・
 あんたは私判決、即死刑!!!!!!」


ひのめの裂帛(れっぱく)の気合に男は一歩後ずさるのだった。




                               その6に続く




───────────────────────────────────────────────
あとがき

や、やっぱまずいですか?^^;
ひのめの13行目のセリフは置いといて(まて)

GTYの規制ギリギリ、ストライクかボールの判定の難しい球を放ったのは自認してるわけで・・・
それでも・・・

「俺はやる!!やらいでかああッ!!たとえこの作品が発禁なってもやる!!
 そんなに甘い男やないで俺は───────っ!!!」

と、半ばやけに投稿(笑)
ホントに削除対象になったらどうしよう・・・
まあ、そのときは管理人様に土下座して改訂版でも出そう(←気が小さい小心者)




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