ザ・グレート・展開予測ショー

とら、トラ、虎!11) 学校へ行こう!


投稿者名:ヴァージニア
投稿日時:(03/ 5/ 7)


タイガーが神野神社に来て1ヶ月がたとうとしていた。
季節は初冬、高地にあるこの付近ではすでに雪が降り積もっている。

タイガーの修行は続いていた。
朝6時に起きて禊ぎ(みそぎ)に30分、座禅に3時間、掃除に3時間、買出しに3時間、読書に3時間、その他雑用に数時間・・・・・・同じことが毎日繰り返されていた。
そしてその間、テレビ、新聞、電話等の外界との接触は極力避けられ、霊力を使うことも禁止されていた。
買出しについても寄り道せず、購入したら速やかに戻ってくるよう神野の父親に言われており、タイガーもまじめにこなしていた。


■須藤町商店街■
「 えーと、これで買出しは全部カイノー? 」
「 あ、あと、お米も買わなきゃ。 今日は重くなりそうね。 」
「 ワシは体力だけなら自信があるケエ、大丈夫ジャ! 」

タイガーと水樹(24巻登場 六女G組の心理攻撃の少女)はふもとの町に降り、雪の降る中買出しをおこなっていた。
水樹も結局ここに残り、タイガーと同じように精神修行を行っていた。

「 ・・・・・・・・・・・・はあ。 」
「 どうしたの? 」
「 いや、なんか、毎日毎日おんなじことをやっとるじゃけやから、
  本当に力がついてきとるんかノーと思うての。 神社や寺の本を読む時なんか、つろうて眠くて。 」
「 こんなものよ。 私も夏休みのたびに似たようなことをしてきたもの。 その度に霊力が上がっていったし。 」
「 ほえー。 」
「 お父さん、昔は除霊の仕事をやっていたのよ。
  だけどこんな小さな町でそうそう霊の事件なんておこらないし、
  たまにあっても隣村の神社のおじさんが祓ってくれるから、
  今は除霊のときに使うお札を、時々つくってるぐらいだけどね。 」

話しているうちに、米屋に来た。

「 おじさーん、お米10kgくださーい。 」
「 あいよ! 」
「 水樹ちゃん、あんたら最近よく一緒にくるねえ。 あんたのカレシかい? 」
「 やめてよおばさん! 前にいったでしょ、うちに修行しにきているひとだって。 」
「 あらまあそうだったかねえ。 わたしゃてっきりダンナさんを連れて帰ってきたと思っとったんよ。 」
「 だから違うって! 」

2人は米屋を後にした。

「 まったくもう! どうしてこんな小さな町のおじさんおばさんたちって、こういう話がすきなんだろう。 」
「 そ、そうジャノー。 」
ぼそっ
「 私にだって好みはあるわよ。 」
がーん 
「 !! 」
「 あ、ごめん! 別にタイガーさんがどうこういうんじゃなくて―――! 」

あわてて取り繕う水樹。

「 いいんジャ。 ワシは慣れとるケン・・・・・・慣れとるケン! 」

泣きながら耐えるタイガー。
とそこに、学校帰りの高校生5,6人とすれ違った。

「 ―――だべー。 」
「 えーマジでー。 」
「 そんでこの前――― 」

「 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 」
「 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 」
「 ・・・・・・・・・・・・ねえ。 」
「 ・・・・・・ああ。 」
「 私たち、もう1ヶ月学校に行ってないわよね。 」
「 みんなどうしてるかノー。 」
「 もう、期末試験の時期よね。 」
「 出席不足で留年してしまうノー。 」
「 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 」
「 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 」
「 帰ってお父さんに、東京に帰るよう言いましょ。 」
「 そうジャノ。 」


                         ◆


■神野神社 神野家自宅■
その日の夜、タイガーと水樹、神野夫妻が夕食をとっていた。

「 学校? 」
「 うん。 だって、期末試験もあるし、このままじゃ留年しちゃうわ! 」
「 わ、ワシもただでさえエミさんの助手の仕事で休みがちじゃったケンノー。
  これ以上休むとさすがにまずいんジャ・・・・・・。 」

2人がそういうと、神野父は黙って書類を渡した。

「 これは? 」
「 高校の編入届けだ。 」

「 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 」
「 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・は? 」
「 おめえたち、明日からふもとの学校さいけ。 もう六道にもタイガーの学校にも手続きは済ませておいた。 」
「 ちょ、ちょっとまってよ! そんな話聞いてないわ! 」
「 今した。 」
キッ
「 なによなによ!! いくらなんでもひどいわよ!! そんな大事なこと勝手に決めちゃうなんて!! 」
「 修行の間だけだ。
  ほれ、せーらー服と学生服も用意しとるし、おめえたちの必要な荷物も寮の人に送ってもらっとる。 」

親父が見た先に、ダンボール5,6箱が郵便物で届けられている。

「 ナント! 」
「 わしもおめえらのこと、ちゃんと考えてるべや。 これで心おきなく学問にも励むがエエ! ガハハハッ! 」
「 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 」

水樹は黙ってうつむいた。

「 み、水樹サン? 」
「 がははははっ!! なんだ水樹、父の心意気にかんどーして声もでんのかー?」



    「  父っちゃの バカーーーーー!!!  」



ばたばたばたっ
水樹はそういうと、2階の自分の部屋にかけあがった。

「 ・・・・・・・・・・・・ふっ、水樹め、あんなに照れなくてもいいのによー。 」
「 おとう、あれのどこが照れとるんだべ。 」
「 あんノー。 」
「 なんだ? 」
「 水樹サンの編入はわかるが、ワシの編入届け、いったいどうやって・・・・・・? 」
「 小笠原さんに頼んどいた。 あの人あんたの身元引受人みたいなもんじゃろ。 」
「 そうか・・・・・・でもワシらの意見無視して勝手に決められるもんなんかノー? 」
「 そう深く突っ込むな。 できたもんは仕方なかろう。 」
「 ・・・・・・・・・・・・ 」





どたどたどた ガチャッ キイイーばたん カチャッ
2階、水樹は部屋に入り、鍵をかけてベッドにもぐりこんだ。

『 父っちゃのバカー! いきなり転校なんて! 』

とんとん
しばらくすると、タイガーが水樹の部屋の前にきて、戸をたたいた。

「 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・。 」
「 水樹サン、ワシー明日から親父サンの言う高校に行くケン。 」
「 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・。 」
「 ワシ、ここでもうしばらくがんばってみるつもりジャ。
  もともと案内だけじゃったのに、ワシのせいで水樹サンまで付き合わせてしもうて、スマンと思うとる………
  どうしてもイヤじゃったら、ワシからも明日、親父サンに頼んでみるケエ、あんまり落ち込まんといてくれノー。 」
「 タイガーさん・・・・・・ 」
「 じゃあ、おやすみなさい。 」

タイガーはそういうと、自分が泊まっている客間の部屋へと入っていった。



                         ◆



翌日の朝6時、転校初日の日、神社の鳥居の所で神野夫妻はタイガーを見送っていた。
神野神社からタイガー達の行く神御呂地(かみおろち)高校まで2時間以上かかるため、それだけ早く出発しなくてはならなかった。

「 気合いれていってこい! 」
「 そんじゃあ、道中くれぐれも気をつけるんだよ。 」
「 わかったですジャ! ・・・・・・あ! 」

自宅の方から、黒いセーラー服を着た水樹が歩いてきた。 神野母が駆け寄る。

「 水樹! あんたも行くんだね! 」
「 2学期の間だけよ。 1月からは六女に戻るからね! 」
「 水樹サン! 」

喜ぶタイガー。 そこに神野父も近づく。

「 ・・・・・・水樹。 2学期と言わず3学期までいろ。 なんならつぎのGS試験までいてもいいんだぞー。 」
「 キッ!!(怒) 絶対戻る! 紅白見ておせち食べたら絶対東京に戻ってやる!! 」

そう言いながら水樹は、まだ薄暗い中、雪の積もった長い階段を降りていった。 タイガーも後についていった。




■神野神社 階段■
「 う〜、 やっぱり朝の山は寒いノー。 」
「 そうね。 」

2人とも制服の上にコートとマフラーをはおっているが、それでも冬の山は寒かった。

「 ・・・・・・水樹サンは中学生までこの町にいたんじゃろ? 同級生に会えるかもしれんノー。 」
「 そうね、この辺に高校って一つしかないから、ほとんどみんなそこにいってると思うわ。
  実はちょっと楽しみでもあったの、みんなに会えるから。 」
「 そうじゃったんかー。 」
「 お父さんには内緒にしててよ。 また調子にのっちゃうから。 」
「 わ、わかった。 」




■高校付近■
長い階段を降り、バスに乗り、そこから歩いて神御呂地高校へと向かった。
その頃にはほかの学生の姿も多く見られた。

「 ねえ、水樹? 水樹じゃない!? 」
「 あ、みんなー! 」
「 やっだー、どうしたのさ! 東京の高校に行ったんでねえべか? 」
「 いや、それがいろいろあって・・・・・・ 」

『 水樹サンの同級生ジャローノー。 』

タイガーが、少し離れてそんなことを考えていた。

「 水樹は知らんやろうけど、水樹が好きだった山田先輩、もう彼女ができたんよ。 」
「 ふ〜ん、そうなん。 」
   『 えっ、ほんとに? 』

心の中で驚く水樹。

「 あら、つまらん反応やのー。 」
「 なによー。 2年も前の話じゃない。
  私だって、いつまでもおんなじ人のことばっか考えてるわけじゃないわよ。 」
   『 う〜やだなあ、私こういう話、苦手なのよねー。 』
「 あ、それじゃあ東京で彼氏できたんだー。 」
「 どこまでいっただ、なあ!? 」 
「 う、そ、それは――― 」
   『 この手の話が好きなのは、商店街のおばさん達だけじゃなかったのね! 』

別の女生徒が、タイガーを気にしだす。

ひそひそ
「 ねえ、あの人見かけねえ顔だけど、ひょっとすて水樹の知り合い? 」
「 そ、そうだけど。 」
「 じゃなに、転校生なわけ? 」
「 そうよ、うちの神社で修行中の人よ。 」
キャー
「 じゃあ同棲ー!? 」
「 いや〜水樹のすけべ〜! 」
「 裏切り者ー! 」
くわっ
「 あんたたち、何でそうなるのよ! 」

『 楽しそうジャノー。 』

自分のこととは露知らず、水樹と友人の再会を喜ぶタイガーであった。



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