ザ・グレート・展開予測ショー

彼女との関係・後編……の後編(2)


投稿者名:稀有
投稿日時:(03/ 5/ 6)



 泣いて笑って、そして時に怒って。
 彼女は呆れるくらい、元気に成長していった。







  『彼女との関係・後編……の後編(2)』







  −Good night , dance in the dream !(2)−


 闘いはジリ貧となっていた。両者共に決定的なチャンスを得る事ができずに、ただ相手の出方を伺うような攻撃ばかりを繰り返していた。
 無論、横島の相手はワルキューレであり――現在、横島は気付いていないが――、魔族を相手にしている状態でそう簡単に勝てるはずはない。さらには常にひのめを守っている状況であり、決定打が出る事はまずなかった。

 ワルキューレも似たようなもので、ひのめを巻き込むような攻撃はできず、かといってあからさまにひのめを避けつつ攻撃をするとなると、横島の奇策に足元を掬われることになる。閃きと裏技では師の行動(美神は嫌がるだろうが)を忠実に守っているだけあって、ワルキューレの攻撃も些か窮屈なものにならざるを得なかった。

 そんなこんなでバトルフィールドは硬直状態が続いている。



「……じゃ、行ってくるわ!」

 じゃきん、と神通根を操り、美神は晴れ晴れとした表情でおキヌに言った。
 すでに霊力もこれから起こる闘いに備えて、身体から立ち昇らんばかりに漲っている。

「うわ……イキイキしてる」

 タマモは美神の様子を見て、思わず言葉を漏らした。
 贔屓目に見ても、これから起きる惨事に心躍らせている、としか見れない。というか、いくらなんでも手榴弾を片手に危ない笑みを浮かべている人間は普通には見えないだろう。
 ちなみに、おキヌはすでに諦めたのか、第一陣で横島に霊波を浴びせてきた連中――雪之丞・ピート・タイガー・西条の野郎四人組だ――にお茶を汲んでいた。

「頑張ってね、令子。美神に敗北は許されないのよっ!」

 導火線にキッチリ火を点けて送り出す美智恵。裏で何を考えているか分からない笑顔が妙に怖い。

「待ってなさいよー、ヨコシマぁぁぁぁっー!!」

 美智恵の言葉を背に受け、師が弟子をしばきに発つ。その姿はあまりにも――鬼のようだった。


「そう、美神に敗北は許されない――例え、勝ち目がない勝負だったとしても……」

 そんな美智恵の言葉が冷たく部屋に響いた――



「……ふぅ、全くもって冷静でイヤになる――」

「…………」

 幾度目かの交錯も互角に終わり、横島は溜息交じりの言葉を吐いた。その言葉にも面をつけたワルキューレは反応しない。
 そんな相手の様子にますます疲れた表情を滲ませる横島。だが、表情とは違い、その身体は未だ緊張感を保ったまま、どんな状況にでも対応できるように構えられている。

「ちっ……まるで軍人みたいなヤツだな、オマエ」

 横島のそんな一言に、ワルキューレはギクリ、とした。正体に気付いていないにも関わらず、的を射るような一言。僅かに動揺したことを目ざとく横島は見つけ、ニヤリと笑う。

「おっと、当てずっぽうで言った割にはビンゴだったらしいな。となると、その闘いぶりから予想するに魔界の方だろうな。ふーん……俺の勘もなかなかにあてになるもんだな」

 じり、と横島は僅かに間合いを詰めた。
 一方、ワルキューレはその分だけ後ろに下がる。魔族のプライドがそれを阻もうと滾るが、ワルキューレの理性と生存本能がそれを拒否した。精神戦にも似た交錯。先に動揺した方が破れると予想していただけに、この状態は非常にまずい。下手したら正体がバレかねないのだ。それは下手をしたら死よりも望まない。なにしろ、相手は自分が認め――それ以上の思いもある、一人の戦士なのだから。

「くっ――」

 ワルキューレが横島と対峙して初めて声を出したその瞬間、横島は一気に前に出る――!

 ――勝機!

 逃さない、逃すつもりもない。
 自分だけではなく、守るべきヒトを危険に晒した敵を屠るべく、横島の周りに四つ文殊が浮き、それぞれが輝き始める。

 『一』『撃』『必』『倒』

 そして、横島の『栄光の手』が剣となって、ワルキューレに迫った。加速した一撃にワルキューレは反応する。
 ――が、間に合わない!

「どりゃあぁぁぁぁぁっ!」

 横島の叫びに呼応するように、さらに剣はその勢いを増す。


 そして、横島の一撃がついにワルキューレを捉えた――!


 かっ――――!


 フィールド全体を激しい光が包み、横島とワルキューレを中心に大規模な爆発が起きる。
 何もかもが眩む――――





「お兄ちゃんっ!」

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