ザ・グレート・展開予測ショー

素敵な夢を見ましょう?-後編-


投稿者名:veld
投稿日時:(03/ 5/ 5)


 veldにとってはらぶらぶのつもりですが。人によってはうずうずです。(謎)



 胡散臭いだけの物は死ぬほどありそうな、そんなかび臭い店の中。何処から放たれているのか知らないけれど。店内は丁寧に清掃されているようには見える。ある程度環境を作らないと扱えない代物もここにはあると思うから、きっとこのかび臭さもそういうものを扱う為に敷地の中に湿気の強い地下室でも作っているのかもしれない。
 まっ、知らないけどね。そんなじめっとしたものなんて使う事ないし。
 そんな事を考えつつ、カウンターの向こう側で、座布団の上に鎮座する厄珍を半眼で見ながら、私は溜め息をついた。
 何というか、現実逃避の軽いバージョン?

 「ったく・・・しょうがないじゃない・・・あいつ、夢を見させられてるんでしょ?」

 原因は、私の丁稚奉公。頭を痛める事柄の殆どがあいつが原因であることはれーこちゃんノートに表記されてる通りで―――。

 「まぁ、そうあるね。でも、令子ちゃん、別にあいつに付き合うことも無いあるよ?」

 無責任な話だと思う。本当に。付き合う必要が無い?あいつはうちの看板をしょってんのよ?―――ほっとけるわけがないじゃない・・・。

 「・・・新製品、何て言う名前だったっけ?」

 「夢逢花」

 すっと、差し出されたパッケージが良く見えなくなるほど古びた小さな箱、開けてみるとそこには錠剤が入ったビンが中に入っていた。そこに貼り付けられたラベル『夢逢花』。

 「・・・夢で逢えたら・・・ってこと?」

 そのビンから彼に目を移して尋ねる。

 「強く残る人の記憶を頭の中に浮かび上がらせて、夢の中で逢おう・・・本当に令子ちゃんの言う通りの代物あるよ」

 「で、成功したわけ?」

 「夢の中で・・・坊主が強く思っていたのが令子ちゃんだったということ・・・。それなら・・・あってた事になるね」

 溜め息。そして、安堵。―――何より―――。
 ・・・何?
 この・・・何とも言えない不思議な感じは・・・。

 「あいつは、私と夫婦・・・とか、そう言う関係になった後の事を考えてる・・・っていうよりも、頭の中で記憶が作り出されてるのかしら―――。とにかく、何とかしなくちゃ・・・」

 「だから、別に令子ちゃんが坊主の妄想ごっこに付き合う必要はないある・・・」

 「事務所の中で下手にべたべたされたりしたら嫌でしょうが・・・。ここで何とか教育しなおすわよ」

 そ・・・教育をね。丁稚には丁稚にあった行動を取ってもらわなくちゃ。

 「無駄だと思うある・・・」







































 「お帰り・・・何処行ってたんだ?令子・・・」

 「ん・・・別にたいした事じゃないわ」

 「・・・たいした事じゃない・・・・・・・・・(泣)」

 「な、何で泣くのよっ!!」

 「れ、令子ぉ!!俺を捨てないでくれぇぇぇぇぇっ!!」

 「な、何でそうなるのよっ!?」

 「だ・・・だって」

 「だっても何もないわよっ!!何でそう思ったの!?」

 「・・・こんな時間になって帰って来るなんて・・・結婚してからなかったじゃないか・・・」

 「だ、だからって・・・何で捨てるとかそう言う話になるのよ・・・(汗)」

 「・・・浮気、じゃないのか?」

 「なっ、何で私が浮気なんてしなきゃいけないのよっ!!」

 「だって・・・あんまり俺が情けないから・・・」

 「・・・ったく、少しは自信を持ちなさいよ・・・あんたはこの美神令子の旦那なんだからね・・・ったく・・・もう・・・(真っ赤)」

 「れ・・・令子ぉ!!!!」

 がばぁっ

 「ば、馬鹿ぁっ!!」













 きゃん♪






 「・・・あの薬は半径二メートル以内に入ると効能がうつるんだけど・・・まぁ、言わなくてもいいね・・・多分・・・(汗)」










 まだ、素直になれなかった頃。
 私が私を偽っていた頃。
 好きであることさえ、自覚せずに。
 でも、離れる事を恐れていた頃。
 自分の傍にいて欲しい、でも、それは我が侭で。
 だからこそ、束縛していた。自分の持っているもので。
 でも、本当の意味で去り行く彼を引き止める術を持っていないこと、分かっていたから。
 不安で・・・たまらなかった。



 起き上がり、周りを見回した。
 闇の中にぼんやりと浮かぶミルクティーのように、優しい色の光が隣に眠る彼の顔を映す。

 「ん、令子?どうした?」

 目を擦りながら、私に尋ねる彼。起こしてしまった事、悪いとは思ったけど、正直ほっとした。
 彼が眠っていたなら、きっと私は不安になったから。

 「何か・・・変な夢を見ちゃった・・・」

 「どんな夢?」

 「恐い夢・・・かな?」

 そう、それは、恐い夢だった。今ある幸せを考えたら―――とても、恐い夢。
 思わず身震いしてしまうほど、切ない不安に駆られる夢。

 彼は、ぼけっ、とした顔で私を見つめ。悪戯な笑みを浮かべた。

 そして―――

 「ふ〜ん・・・それっ!」

 私を抱き寄せた。

 「きゃっ、な、何をすんのよっ!」

 抵抗もできなくて、もがく私の耳元にそっと囁く。

 「まだ、恐い?」

 気付く。
 そこに感じる彼の優しさに。
 嬉しくて。
 私は呟き返す。

 「ん・・・馬鹿・・・」



 薬の効き目が切れたのは、それから三日後。
 彼女らが仕事に復帰したのは、五日後。
 そして、彼女らが素直になったのは―――。

 それはまた、別のお話。

 終わり。

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