ザ・グレート・展開予測ショー

悪夢 第四夜


投稿者名:ライス
投稿日時:(03/ 5/ 4)



 ……気が付くと、私は暗闇の中に居た。起き上がると私は辺りを見回した。真っ暗な闇。それは何処を見渡しても変わらない。でも、私の足元はスポットライトが当たっているかのように明るい。私は声を出して、誰か居ないか確かめることにした。しかし……、


「      」


 声が出ない。もう一度、今度は大声で叫んでみる。でも、やっぱり出ない。呼吸はしているのに声は出ない。相変わらず変な所に居るみたいね、私……。頭を抱え、まぶたを閉じた。すると気付いた。妙

に目の辺りがカサカサするのを。涙の跡?

何で涙なんか……、まぁ、いいわ。と、私はそのことを気にも留めず、闇の中をただ歩いていく。光の進入を許さないくらいの深い闇。私の足元は明るいが、それは足元の地面自体が光っている、というよりは、光の当たる場所の地面をそのまま切り取ったような感じだ。しかし、それも半径1mぐらいの領域に過ぎない。あとは闇、闇、闇。真っ黒な闇。人っ子一人も見えなければ、家の明かりもない、なんとも寂しい世界。















































 しばらく当てもなく彷徨っていると、私は遠くにスポットライト当てたような光る足場に人影が一つ、見ることが出来た。私はその光っている場所へと向かった。近付くにつれて、人影は実像を帯びていく。



 横島クン?



 呼び止めようにしても、声が通らないから、どうしようもない。そうこうする内にも横島クンは向こうへと行ってしまう。私は彼を引き止めるために、腕をつかもうと近づきに走ろうとする。しかし、その時、後ろから足音も無く、私を通り越して行く、何者かの姿が見えた。ワンピースを着た女の子のように見えた。その通り過ぎてゆく後姿は、私を追い抜くと、そのまま横島クンの元で立ち止まる。


 それはおキヌちゃんだった。


 彼女は横島クンの前で顔を赤らめて、何かを熱心に言っている。それを横島クンは驚き、照れながら頭を掻いて聞いている。



しばらくの間の後、横島クンは頷いた。そして、横島クンもなにかをおキヌちゃんに言う。



 横島クンが言い終えると、おキヌちゃんには笑顔がこぼれた。横島クンにもこぼれている。見詰め合う二人。そして、彼らは手を繋ぎ、闇の中へと消えていく。私は二人に気付かれないまま、その場に立ち尽くしていた……。

 今の光景は一体なんだったのか?考えられることは一つ。恐らくおキヌちゃんが横島クンに告白をして、横島クンもそれを受け入れ、カップル成立……。どうってこと無い、ごくありふれた青春の一コマってところかしら?まぁ、横島クンとおキヌちゃんだったら、お似合いだし……。それに横島クンが誰と付き合おうと私の知ったことじゃ………、





 ………………………未練がましい自分に気付く。横島クンは単なる丁稚。それ以外のなんでもないわ。なのに…、なのに……。



 なのに、なに?この胸の痛みは……。



 気付くと、また同じ場面。向こうに横島クンがいる。私は近付こうとするが、再び誰かに追い抜かれる。今度は横島クンの隣に住む小鳩ちゃん。結果はさっきと同じ。胸の痛みは変わらない。





 そして場面は繰り返される。シロ、タマモ、愛子、朧、はたまた小竜姫まで………。






 ……………イタイ。






 胸の痛みは場面が繰りかされる度に痛みが増す。横島クンが他の女に取られることがなんだって言うの!?確かにアイツは、危険な仕事にだって文句一つ言わず、どんなに重い荷物を持って頑張っていたし、いつでも私のそばにいたわ、でも……、もしアイツがいなくなったら……、




 私はその空虚感に耐えられるだろうか?

 いつだったろう、横島クンがお母さんと一緒にニューヨーク行くって、聞いた時、なんだか自分の体から何かが抜けたような感覚に襲われたことがあった。結局、横島クンは行かないで済んだけど、私はなにか安心したような感覚があったように思う。今も同じような状況だ。


 横島クンを誰かに取られるのは嫌だ。


 それが胸の痛みの原因なのだろう。………自分で自分を嘲笑したい気分だ。私は闇が覆う世界で虚しく笑うしかなかった。

 気付かなかった、横島クンがいないことが苦痛だということを。
 気付かなかった、自分にとって横島クンが大きな存在だということを。
 気付かなかった、自分に横島クンが必要なことを。
 気付かなかった、自分が………、




























 


















 横島クンを好きだということを。









































 ……いつの間にか、涙を流していた。私はその涙を拭うと、闇の中を何処ともなく駆け抜けた。自分が切り裂いてゆく空気、そこから受ける抵抗。それは心地よい風だった。私は横島クンが好きだ。だから早くアイツの元に行きたい。そして抱きしめられたい。





 何分走っただろうか。しかし、不思議と疲れはなかった。私は立ち止まり、その場に立ち尽くす。その前には、横島クン。今度は私を追い越す影もない。私は横島クンを見つめる。そして、私は横島クンに抱きしめられる…………はずであった。

 しかし、横島クンは私のことを見てなんかいなかった。彼は私を通り過ごすと、私の背後にいた誰かと、抱きしめ合っていた。



 それは……、ルシオラ……!!



 彼等の抱きしめ合う姿は、それはいかにも恋人らしく、情熱的なものだった。


 ………ムネガ、イタイ。


 そして、ルシオラが私に見せた、表情が決定的に私の胸を苦しくさせた。




 それは勝ち誇ったような嘲笑を含んだ笑みだった……。




 それを見た瞬間、私はその場に膝を突いた。そして胸の痛みは増すばかり。


 イタイ………、ダレカ、ダレカ、タスケテ………!!


 ―― ハハハハ………、アーッ、ハハハハハ………!!


 ……誰かの笑い声が頭に響く。それが徐々に大きさを増していく。頭が割れそうなほどに。私にはルシオラが私に対して笑っているようにしか思えなかった。




 そして、私の意識は遠のいていった………。

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