ザ・グレート・展開予測ショー

かたおもひ。そのに


投稿者名:hazuki
投稿日時:(03/ 4/30)

そうして、横島は、なにやらおきぬの物騒な笑顔(笑)に妙にうそ寒いものを感じながら横島は、事務所を出た。
本来なら、ここで仮眠ととるやら、食事でもしていくものなのだが、今回に限っていうならそれはできないのだ。

ぐらぐらと、あまりの疲労のためか平衡感覚を失っているのだろう、いっそのことこのばで倒れ寝たほうが幸せなんじゃなかろーかと言いたくなるほどの、歩きっぷりである。

「……たく、なんで今日に限ってなんだ…」

ごしごしと、下に落ちそうになる瞼を懸命に擦りながら横島。

とそうひとりごちながら、歩いていると─

「!!!!!?」

横島の瞳に、信じられないものが映ったのだ。
そりゃもうこんなに疲れてないとすぐさま飛びつきそうな状況というものであろう、それは─

風呂あがりの美神なのである。

がしがしと髪の毛をバスタオルでぬぐいながら歩いている。
きているものは、薄手のシャツに、黒のパンツというシンプルだが、着る人間のスタイルを丸分かりにするものであったりするのだ。

「あれ?横島くん?」
まだいたの?と美神。
随分ないいようである。

ほのかに香る、しゃんぷーの香りがひどく悔しい気分にさせる。
きっと、つーか絶対この人は自分が今覗く気力がないからこんなにゆったりと、さっぱりと、しゃわーを浴びていたに違いない(笑)。
違いないったら違いない。

「………まだいましたよ、もう帰りますけど」
そんなもろもろの思いをこめて、横島はひくーい声で返す。

美神は、そんな横島の様子くすりと笑い。
「おつかれさま」
と言った。


はああああっ

と横島はそんな美神の言葉に、こころのなかでためいきをつく。
つーか仕事中どんなに酷い目に合わされたのか、よおくわかっているのに、つーか思い知らされているのに、こんな何気ない一言で、頑張ろうと思える。

それは、きっとこのひとが、そりゃ、なによりお金が大切だと言い、おもいっきし守銭奴なのだけれど、ちゃんと労いのことばをくれるのだ。
そりゃまあ、沢山ではないけれども。

それがまた、タイミングがひどくよくて、まいる。

なんでこう、本当に心身ともに疲れているときに、しんどい時「だけ」に労わりの言葉をくれるのだろうか?

はっきし言って反則である。

(ああ、くそ…いい女だなあ)

そんな思いをこめ
「お疲れ様でした」

と言った。

「ん。て、どうしたの、それ直してもらわなかったの?」

と横島の足に視線を合わせ美神。

ひょこ、と左足をひきずりながら、横島は歩いている
横島は、ああ…と美神の視線に気付いたように左足を、とんと床におき笑う。
「まあ一応おきぬちゃんにヒーリングしてもらったんですけど、ちょっと酷かったみたいで…まあほっときゃ治るでしょ」

こんな怪我もういつものことですしね。
と、横島はなんでもないことのように笑う。
まあ事実この男からしたら本当に、なんでもないことだろう。
(というか、捻挫などが日常茶飯事と化しているこの男の境遇に同情を覚えないないでもないが)

「ちゃんと、治しなさいよ」

「へーい」
横島はひらひらと、手を振り、そうして去っていく。
美神は、じっとそれを、横島を、去っていく横島を見ていたのだ。


(…………反則だわ)

くしゃっと髪をかき回しそんなことを思う。
だって、あの怪我は、美神を庇ってできたものなのだ。

いつもは、人を盾にしてでも、逃げ回るくせに、泣き叫んで、情けなく、逃げ回るくせに
なのに、本当に、危ない時に庇うなんて…

脳裏に焼き付いて離れない光景がある
震える足。
目の前に広がる、無数の悪霊
そして、埃っぽいジージャン、情けない、顔。

まだ、子供のくせに、あんな時だけ、オトナの男の顔をするなんて。


あんな情けないくせに、かっこいい男。

惹かれないわけがない。

(覚えときなさいよ)

こんな風に思わせるなんて。
絶対に、骨抜きにしてやるんだから

美神は、横島の背を見送りながら嫣然と、ほれぼれするほどの笑みで

「覚悟しときなさいよ」

と呟いた

こばとちゃんへんにつづく(笑

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