ザ・グレート・展開予測ショー

無能なる人(?)を愛した末路(謎) −後編−


投稿者名:veld
投稿日時:(03/ 4/27)


 馬鹿話です。が、ほんのりと幸せ色です。


 物なんて置くほどにない、散らかり様もない部屋の中で。
 浮くにしろ、埃に塵、他にあるのは紙くずだけと言う我らが部屋の中で。
 いつの頃からか万年床と成り果てていた布団を駆逐し、炬燵をしまってそれなりのスペースを見つけ始めた部屋の中で。
 開けっ放しの窓から降り注ぐ心地のいい風と柔らかく暖かな光の注がれたこの部屋の中で。

 「あれ・・・おかしいなぁ・・・どうして動かないのかしら」

 まどろんでいる俺の横で掃除機をかける君。
 普通、寝てる人の前で掃除機をかけますか、お前は。と思ってしまうところだけど、そこは君だから。
 だから、それだけで許せる。

 「・・・う〜ん、どうしてなのかなぁ・・・」

 眉を寄せて、頬に手を当て、困った顔の君もまた愛しい。

 「・・・中身が詰まっているのかしら・・・」

 じぃーっと、目を細めて掃除機を見つめ、考える君も、そう愛しい。

 「・・・開けてみようかな?」

 何となく、危険な思考の君も・・・マテ。

 「・・・開けてみようっ!!」

 掃除機の蓋を開けようとする君。
 それを開けると、中に備え付けてある袋が自動的に取れて、内蓋の中に溜まっていた埃や滓、ただいま吸い込んでいるゴミが当たり一面に広がると思うのだけども。

 「何でそこではしゃいだ声になるっ!?」

 堪らず、目を見開いて起き上がる俺。
 わざとかっ!?わざとなのかっ!?心の中で過去何度も叫んだ言葉をまた、叫びながら。

 「あ、起きちゃいましたか?」

 俯いて、申し訳なさそうな顔をする君。
 俺は思わず起き上がったことを少し後悔する。

 「・・・いや、君のせいじゃないけど」

 「ごめんなさい・・・私、あなたが眠っている間にお部屋を綺麗にして驚かせようと思って・・・」

 穢れない瞳。
 本物の・・・人間のものとは違うけれど。
 それでも、綺麗な、瞳。
 本物よりも、本物以上に。

 俺は、その瞳の中に映る自分を眺めて。
 そして、その瞳を持つ彼女を見つめた。

 「・・・!!」

 いつも、迷惑を掛けられっぱなしだ。
 でも、その中で、俺は何故だか彼女を怒る気にもなれなかった。
 彼女がやろうとしてくれていることが、彼女の好意がとても嬉しかったから。

 だから、俺は、彼女を選んだ事を後悔した事は結果的には一度もない。



 彼女の、その手の中にある蓋が塞いでいたあたりから猛烈な勢いで―――もう、溜まっていた袋の中からまで、もはや捨てる以外の仕様のないものが撒き散らされてゆく。
 その中で―――俺は、彼女の肩を抱いた。
 びくん、と一瞬震えて、怒られる事を恐れているのか、その腕がやや強めの力で俺の胸を押す。
 それでも、離さない。
 震える体が抵抗を止めて―――。
 耳元に囁かれる。

 「ごめんなさい・・・」

 そこに含まれているように感じる、恐れ。
 もしかして、不安がってる?
 怒られる事には慣れてるって、いつも言ってた。
 君が、本当に恐れること。

 もしも、君が『捨てられる事』を恐れてるなら。
 心配なんて、要らない。

 そんな事を考える俺も。
 そんな事を考えさせる俺も。
 存在なんて、しないから。
 存在なんて、させないから。

 身体を離して。
 君の顔を見つめる。
 君が俺を見つめ返す。


 窓から差し込む光の中で、埃や塵が綺麗に輝いて―――。
 まるで君を引き立てるように見えたから―――。


 俺は君に今日一番の笑顔でこう答えるんだ。



















 「全然っ!!無能でも、全然っ、OKっ!!―――俺はお前が好きだぁぁぁぁぁぁ〜!!!!!」












































 焦がれた日々―――。

 いつかのような騒がしさを失ってしまった部屋の中で。
 俺は部屋の隅、一人でうずくまってる。
 赤い夕日が部屋の中を染める、ざわめく風の音が心を波立たせる。
 もう、何もないんだと、そう思った日。
 空っぽの君が、俺の真向かいで畳を見つめてる。
 生気のない瞳。もう、その瞳の中に俺が映る事はない。
 そう思うと悲しくて。
 だから―――君に縋る。

 ・・・ドライバーを手に持って。

 君がいなくなって―――三ヶ月が経って。
 ボルトやナットに縋る日々が続いた。
 目を覚ますことはないらしい君に毎日言葉をかけている内に気付いた事。
 俺は、君と出会う前よりもずっと強くなってた。

 料理も、掃除も、洗濯も―――。
 何故だか、機械関係に造詣を深めてた。
 君の体の故障・状態異常を調べている間に身につけた知識。
 俺は、もう、何処に出してもまるで恥ずかしくないおさんどん青年になってた。


 だから、後、俺に必要なのは不器用な・・・とことんまで、破滅的に無能な女の子―――。
 俺が、誰よりも愛しく思っている君が―――。
 君が目覚めてくれるだけで良い。



 「ねえ、お願いだよ・・・目を覚ましてくれ―――」







 ミソッカス・・・



 呟かれた言葉。

 そして、君は、目を覚ます。

 ゆっくりと。

 生気のなかった瞳に、光が灯る。

 そして、君が、口を開いた。





 「・・・私・・・やっぱりその名前なんですね・・・(泣)」



 俺は悲しそうに笑う君を抱きしめる。
 壊れやしないかと恐る恐るだけど。

 君が恐れる事無く俺を強く抱き返すから。
 だから、俺はさっきよりも、強く、きつく君を抱く。


 「・・・もう、離れる事はないから―――」

 「ごめんなさい・・・」

 「ごめんなさいなんて・・・要らない。お願い・・・ずっと、傍に居て」



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