ザ・グレート・展開予測ショー

ひのめ奮闘記(その18(A))


投稿者名:ユタ
投稿日時:(03/ 4/26)





「17ぃ──っ!!!」


ズバアアアっ!!!

ひのめの言葉どおりに17体目の悪霊が神通棍で裂かれる。
しかし、それを裂いた瞬間には次の悪霊が背後から襲い掛からんと牙をむく。
ひのめは体を反転させ振り向きざまに左手で裏拳を叩きつけた。

「18ィィ!!!」

ドシュゥ!!

その拳に霊力が集中すると同時に18体目の悪霊は霊界へと強制的に送還された。
ひのめはもう限界だと言わんばかりの肺にもう少し頑張ってと呟きつつ、
しだいに重くなる神通棍を持ち上げた。

「はぁはぁ・・・・何か・・・ぜぇ・・・いい感じに霊力が・・・っ・・・はぁ、上がってきたかな・・・・」

大きく上下する肩のまま呟くひのめ。
確かに今ひのめの霊力は封印後最高記録の上限値を示している。
しかし、これだけではこの場を凌ぐことを出来ないのも十分理解していた。

「でやあぁぁ!!」

バシイイィィ!!

新たな悪霊を裂こうと神通棍を叩きつけるが・・・

「なっ!?」

その刃は敵を裂くことなく逆に神通棍を弾いた。
理由は簡単・・・・除霊に必要な分の霊力がもはや込められていないからだ。

「ぐほっ・・・」

悪霊は神通棍を弾くと同時にひのめの『みぞおち』に一撃を叩き込む。
ひのめはその苦しさから神通棍を落とし、膝がカクっと折れた。
そのまま耐えようと上体をゆっくり起き上がらせるが・・・

『イタイ・・・』

「きゃっ!」

『クルシイ・・』

「がっ・・」

『コロス・・・』

「ごほっ」

獲物が弱ったとばかりに一斉に襲いだす悪霊たち。
ひのめはそれにあがなう事出来ずに痛みを伴うダンスを強制的に踊らされる。
悪霊達が飛び交うたびにひのめの鮮血が飛び、骨がきしみ、筋肉が痛みつけられる。
それが終わったとき・・・ひのめはまるで糸が切れた操り人形のように地面に倒れこんだ。

「おい・・・・俺はもう我慢できんぞ・・・」

怒りに満ちた表情で立ち上がる横島。
令子の立場も考え耐えてみたが、もはや限界だとばかりに文珠を出現させる。

「まだ・・・あと少しだけ!」

「令子!」

「あとちょっとなのよ!感じるでしょ!?力ない霊力の中にある大きな力を!」

横島はひのめのほうへ振り返る・・・確かに何かこう・・・高揚感みたいのがひのめから感じられる。
しかし、これ以上やればひのめが死んでしまうことは明らかだ。
12年前は才能を潰すことより命をとった、今回だってそうだ、
あと3年待てば封印は解ける、GSとしては開花は遅いかもしれないが、それでもいいじゃないか。
そんな気持ちが横島の心に広がる。

「とにかく俺はこれ以上ひのめちゃんが傷つくのを見てられん、行くぞ!」

「待ちなさいって言ってるでしょ!?」

「ひのめちゃんが死んだらどうするんだ!」

横島の問いに・・・
令子は静かに目を瞑り・・・
そして答えた。

「そのときは・・・・・・・・・私も死ぬわ」

「れ、令子・・・」

妻の決意と覚悟の瞳・・・その視線に横島は押し黙るしかなかった。
そのとき・・・


グ・・・グア・・・・

それまでひのめの様子をうかがうように飛んでいた悪霊達がまるで粘土のようにグニャグニャと合体していく。
それはやがて一つの大きな髑髏型悪霊となり、悪意に満ちた瞳でひのめを見下ろした。

『ココマデダナ・・・・・』

髑髏型悪霊はケタケタと笑いながら工場の天井近くをウロウロ飛んだ。
明らかに他の悪霊とは違う・・・おそらくこの霊団の司令塔なのだろう、
意志をもち、その霊格は今まで出てきた悪霊より遥かに高い。

『ソロソロクッテヤルカ・・・・』

人の魂・・・それを喰らうことによって悪霊は力を上げる、
まして霊力の高いGSはご馳走に他ならない。
髑髏型悪霊はニヤリと口元を歪めると・・・倒れているひのめに向かい猛突進をかけた。

いよいよヤバい!
横島が飛び出そうとしたそのとき!

「ひのめ!あんたそれでも私の妹なのっ!!?意地みせなさいよ───っ!!!!」

それまで見守るように隠れていた令子がひのめに向かってエール(?)を投げかけた。
そして・・・

ピク・・・

うつ伏せに大の字で倒れていたひのめの手が反応を示す。
そしてゆっくりと目の前に落ちている神通棍を握りしめた・・・
震える体を起こしていくひのめ、だがこのペースではとても向かってくる悪霊に対して構えが取れない。
悪霊ははその巨大な顎でひのめの肉体ごと魂を砕こうとするが・・・

「ひのめ!!」

「分かって・・・・るよ・・・・・・・・・・・お姉ちゃんっ!!!」

ひのめは令子の声に反応するように勢いよく起き上がると神通棍の刃に素早く霊力を込める。

バシイイイィィィ────────────!!!!!!!!

ひのめはそのままありったけの力と霊力を込め悪霊に叩きつける。
それと同時に激しいスパークが周囲を覆った。

「くっ!このぉ!」

『ケケケケケっ!!』

悪霊は神通棍と鍔迫り合いになってるにも関わらず余裕の表情で笑った。
霊力が込められてないわけじゃない、事実今日一番のひのめの霊力が神通棍に込められている。
ただ・・・ただ単純にひのめが力負けしているのであった。

『ヨワイ・・・ヨワイ・・・』

「く、くくっ・・・このぉ・・・」

ズズ・・ズザ・・・

ひのめの足がしだいに後方へと滑っていく。
重い・・・・悪霊の霊力はひのめが思う以上に重かった。
乳酸がたまりこれ以上持っていられないと筋肉が叫ぶ、
圧しかかる力に折れそうだ骨が泣く・・・しかし、
それでもひのめの瞳は死んでいない・・・諦めてはいなかった。

「・・・・んだ」

『ナニヲイッテル』

ひのめの口が動いたがその声は悪霊にする届かない。
しかし、その音量がしだい上がっていく。

「霊力がなんだ・・・・」

『ナニ?』

「美神の血がなんだ」

『ドウイウイミダ?』

意味の分からない言葉に髑髏型悪霊の思考が混乱する。

「お姉ちゃんがなんだ・・・・ママがなんだ!蛍ちゃんがなんだあ!!」

『グガっ!』

ひのめが一言叫ぶたびに神通棍の霊力が増大していく。
悪霊はその場から一時撤退しようとすが、時すでに遅し。
神通棍から発生する霊磁波が獲物を逃さぬよう絡んでくる。

『ギゲゲゲゲゲっ!!!!?』

まるでズタンガンを食えらったような声で苦しむが、
ひのめはもちろん手加減などしない!
そして次の叫び・・

「高校時代のお姉ちゃんより胸が小さいのがなんだ──────────────っ!!!!!!」


グオアアアアアアアアアアア!!!!!


今まで以上に拡大増大する霊力。
そしてズッコける横島と令子。

((き、気にしてんだ・・・・))

声には出さなかったかが二人は苦笑いしながら同じ事を心で呟いた。

叫びの内容はともかくひのめの霊力はもはや並みのGSなど凌ぐほど上昇している。
霊力を封印するために霊的中枢(チャクラ)に施された結界はギシギシと歪み、もう限界だと言っている。
しかし、弱ってるとはいえ12年もの間封印してきた意地があるのか最後の一歩でひのめのリミッターを外さない
・・・・だが

ピシピシ・・・・ビキ・・・ビキ

「封印が何だああああああああああ────────────────────────っ!!!!!!」

パキーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!

その瞬間・・・・一人の少女を12年間封じ・・・そして護ってきた封印が砕けた。


ゴアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!


霊力の嵐が廃工場を吹き抜ける。
いや、その嵐はしだいにパチ・・・パチ・・・と火花を上げる。


『アガギャアアアアアアアア!!!』

「美神 ひ の め をっ!!なめるんじゃないわよおおおおおっ─────────!!!!!!!」

『ギヤアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!』

ドゴアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!

神通棍と一緒に悪霊が燃え上がる。
断末魔をあげる悪霊を容赦なく焼失させる断罪の炎はしだいに拡大していき、
他の悪霊達をも呑み込んでいく。

その業火に逃げ惑う悪霊達、
醜く、汚く現世に未練を残す霊たち・・・・しかし炎はその存在を許さず、
まるで龍のように悪霊を包み込んでいく。
一見むごい光景に見えたりもするが、これは魂の焼失ではない・・・新しい生になるための強制成仏。

ひのめの烈火が消えたとき、廃工場に存在するのはひのめと横島、令子の三人だけだった。

「はぁ、はぁ・・・・」

全ての悪霊が消えると同時にひのめの炎も収まる。
ひのめは周囲に自分に対し敵意を向く存在がいないことを確認するとドサっと膝を地面に付いた。


「す、凄いじゃないか!封印破ってしかも能力制御してるぞ!?」

「んなわけないでしょ!!」

喜ぶ夫にピシャリと一言投げかけると令子は一直線にひのめに向かって走り出した。

「う、うぐあああっ!!!」

苦痛の叫びと共にひのめの右手と左足が炎に包まれる。
明らかに霊力を制御できないがためのオーバーロードだ。

(うっ・・・くっ・・・・・自分が発火するってことはその部分に霊力が滞ってること・・・・はぁはぁ・・・
もっと霊力を全身に均一に流さなきゃ)

ひのめはパニックにならずゆっくりと右手に溜まる霊力を分散させる。
するとひのめを焼こうとした炎は静まり役目を終えたように消え去る。
次は左足に意識を集中するが・・・

ゴオっ!

今度は右肩に炎が灯る。
今のひのめの力では意識を上手く拡散しきれずに発火を制御することは不可能だった。
それでもいきなり全身発火しないだけ自分の今までの修行の成果が出ているのだろう・・・そう思うと少しだけ笑みがこぼれた。

「ははは・・・せっかく封印取れたのになぁ・・・」

諦めたように地面に両手をつく・・・
今はまだ炎がまとわりついているだけだが、もうすぐ自分の皮膚を焼き最後は全身を包み込むのだろう。
そんな自分の最後に皮肉めいたものを感じたとき・・・



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