ザ・グレート・展開予測ショー

でぃ〜まりおねってん。あふたぁすとーりー


投稿者名:777
投稿日時:(03/ 4/24)

(注)先に謝っておきます。ごめんなさい。








抱き合って喜ぶ二人を前に、俺は心の底でほんの少しだけ危惧していた。

それはあるいは杞憂であったかも知れないし、あるいは見過ごしてはならない大きな問題だったかも知れない。

けれど、その美しい姉妹の前に、そんな不安は消し飛んでしまっていた。

些細なことだ。二人さえ気づかなければいい。

だが、運命の神とは時にして酷く残酷な選択をする物だ。

俺の不安は、美姫ちゃんの一言で現実の物と化した。








「あ、黄ばんだティッシュ…」








不覚…。







「まっ、まぁ、王子様も若い男の子なんだからっ、ね?」

舞姫ちゃんが焦ったようにフォローしてくれる。

いい娘だなぁ。

「うん、でもちょっと幻滅」

「それは私もだけど」

………やはりこの二人は姉妹だ。

「それにほら、お姉ちゃん。食べかけのカップ麺があるよ」

「あらあら、こんな所にいかがわしい本が…」

「うわ、台所ゴミだらけっ!」

「彼女もいないのねぇ…」




王子様のあら探しはやめてくださいお姫様ズ。






でも。






悲劇はまだ。






始まってもいなかったんだ…。









「あれ、このビデオのタイトル…『人形姉妹・背徳の調べ』・・・?」









沈黙が、落ちた。









ビデオが壊れても、ラベルが読めなくなったわけじゃない。











誰も何も喋らない。









沈黙が、痛い…。








「ねぇ、お姉ちゃん…?」

「なに、美姫…?」

「私たちって、言ってしまえば人形姉妹だよね…」

「そうねぇ…」





やめてくれ!冷静にならないでくれ!!






「「そこんとこどうですか?王子様?」」





息ぴったりだった。






アリス…ハッピーエンドで終わるのは、おとぎ話だけみたいだ…。






『でぃーまりおねってん  あふたーすとーりー』

〜ハッピーエンドじゃ終わらない?〜






「そういえば、おかしいなと思ってたのよ」

舞姫ちゃんが美姫ちゃんを前に、なにやら神妙な顔で語りだした。

ちなみに俺は『触るな危険』と書かれた紙を貼られて、縄で縛られている。

何というか王子様に対する扱いじゃないと思わないか、チミ達。


「最初、ホールで初めて会ったときなんだけどね。王子様、人形の私に『お前の友達ってどこにいるんだよ?』って尋ねてきたのよ」

「ええーっ! お姉ちゃん、人形だったのにっ?」



ちがうんだ!それは状況に戸惑って、やることがなかったからなんだっ!!



「それでね、答えるわけにもいかないから黙ってたんだけど、そしたら王子様逆ギレして壁を蹴り出したの」

「ええーっ! 人形が答えないからって逆ギレしたのっ? それも物に当たったのっ?」



ちがうんだ!それは状況が動かないことに対する不満だったんだっ!



「その後ね、お爺ちゃんの部屋の暖炉から、二階に行ったんだけど…その時、私を置いていったのよ」

「ええーっ! 人形大好きな王子様が人形を置いていったのっ?」



待て、美姫ちゃん。いつから俺が人形大好きになったんだ…?



「私思うんだけど、それってお爺ちゃんに見惚れてたんじゃないかって…」

「うわ、最低…」



そんなわけがあるものか!

俺の叫びは届かない。


美姫ちゃんは、俺に『餌を与えないでください』という張り紙を張り付けた。



「それでね、はしごを登って…当然私は上で待ってたんだけど、あそこって狭い密室でしょ? 人形だった私を抱えて、王子様ニヤッて笑ったの…」

「二人っきりになると怖いタイプね」



どんなタイプだっ!

俺の叫びは届かない。



「まぁ、そこでは何もされなかったんだけど…廊下に出て、美姫の身体を見た途端、王子様ったら嬉々として扉に飛びついたのよ。あの扉は変な構造になってて美姫の身体は助かったけど、王子様は諦めきれなかったらしくて、下半身をばたばた動かしてたわ…」

「私の身体をっ!? そういえば、私の顔から火傷が消えたとき、王子様ってば嬉しそうに笑ってたっけ…」

「狙われてるわね…」



舞姫ちゃんは俺に『ケダモノ注意』と書いた紙を貼り付けた。

もうどうにでもしてください。



「話を続けるけど、王子様、扉の開け閉めに疲れたあと今度は絵の女の人に注意を向けてね…いきなり胸に触ったのよ」

「ええーっ! 絵なのにっ? 絵なのに胸に触ったの?」

「ええ、それも難しい顔してね…きっと彼なりの評価基準があるのね…」



いや、あれは爺さんの忠告を考えてただけであって…畜生、アリスの方がなんぼか良い子に思えてきた。



「王子様なりに合格だったのね、『この絵は絵じゃなく女の人だ』って言う自己暗示をかけて、絵に襲いかかろうとしたわ…。絵の女の人も怖かったんでしょうね。襲われる前に喋りだしてたもの」

「うわぁ…さすが背徳王子…」



そんな名前で呼ぶなぁっ!!



「それで、ドレスルームについたの。私の役目は、あそこでドレスを着替えることなんだけど…正直ドキドキ物だったわね。襲われるんじゃないかって。結局、私の火傷を見て襲うのはやめたみたいだけど」

「女を外見で判断するタイプね…」



美姫ちゃんは俺に『ろくでなし』と書かれた紙を貼り付けた。



「その次は人形部屋でしょ? でも、そこに行く前にね、私と同じくらいに縮んだ王子様、私のお尻を触ったのよ」

「うわ、大きさが同じになったら即手を出すの? 実は結構やり手なのかも…」



あれは背負ってただけなんだよぅ…(←半泣き)



「それでね、人形部屋についたら、今度は私の相手を捜し出すのよ。慌てて首を絞めて耳噛んで『貴様の命握ってるぜ、妙なことしたら殺すよ』ってアピールしたんだけど、止めなかったらどうなってたことか…」

「いきなり多人数プレイっ?」



もう勘弁してください…。

っつーか舞姫ちゃん、あれは君の意志だったんだね…。



「でも、止めたにもかかわらず王子様は人形達の身体をまさぐってたわ…。男も女もね」

「オールオッケーッ!?」



・・・・・・・・・。(←すでに諦めの境地)


美姫ちゃんは俺に『両刀霊波刀使い』と書かれた(以下略)



「それで、ポケットからリンゴを発見してね…。普通だったらそんな怪しい物どんな大胆な人だって食べないでしょうに…王子様は嬉々として食べたわ…」

「飢えた野獣ね…」



あはははは〜。アリス〜待ってくれ〜(←妄想)



「まぁ、王子様は間抜けにも人形になっちゃって、私と踊ったわけで、成り行きでキスしちゃったんだけど…いきなり舌を入れてきたわね」

「人形同志もう遮る物は何もなかったのね!」



誤解だっ!アリス…俺はそんなことしてないっ!(←妄想内でアリスと弁解中)



「アリスが私たちを掴んで、『ずっと一緒だよ…』って言ったとき、王子様はどことなく嬉しそうだったわ…」

「本性は変わらないのに急にラブロマンスね!」



ああ、アリス…お前もこんな扱いを受けてたんだね…(←妄想内でアリスと会話中)


お前が舞姫ちゃん達を人形に変えた気持ち、今なら痛いほどに分かるよ…(←妄想内でアリスと和解成立)



「その後、小人達がでてきたんだけど…初めて見たわ。あの小人達が幼児言葉使うところなんて」

「その上ロ○コンッ!?」



あ、爺さん…。(←妄想内に老紳士登場)



「その内泣き出しちゃって…『大人が泣いてたやめーでしょ!』って言われて泣きやんだわね。もう、こっちが泣きそうだったわ」

「お姉ちゃん、大人が泣いてたやめーでしょ!」

「もう、美姫ったら」



爺さん、あの時あんたが謝ったのは、こう言うわけだったのかい?(←妄想内で老紳士と会話中)



「その後ね、ようやく私が「元人間」だってことに気づいた王子様は、今まで以上に身体をまさぐってきたわ…。それも丁寧に扱うと見せかけて、ね」

「うわぁ、知能犯だ!」






………彼女たちの話は、結局夜明けまで続くことになる………










『お客人、何かを手に入れれば、他方で何かを失う。私はそう言ったはずだよ?』

老紳士はそう言って、静かに笑った。














………こんな姉妹、いらねぇ!












追記。

あのビデオだが…実は結構プレミアのついたレンタルビデオだったせいで、俺は5万ほど賠償させられることになった。

ただし、GS協会が『呪いのビデオ』にかけていた報奨金は結構な額だったので、俺の懐は痛まなかった。

その報奨金をすべて姉妹に渡し、俺は彼女たちから解放されたのだった…。









追記の追記。

その後、舞姫ちゃんは『人形姉妹』というペンネームで『背徳王子』シリーズを執筆。大ベストセラーになる。

この『背徳王子』シリーズだが、おキヌちゃんがよく事務所で読んでいる。

彼女の言だが、『この背徳王子様って、横島さんに似てるんですよ〜』とのこと。

俺も読んでみたのだが、迂闊に『これのモデル俺なんだ』とはとても言えないような内容だった。

ホント勘弁して欲しい…。









追記の追記のそのまた追記。

背徳王子の恋人役が『舞姫』『美姫』姉妹で、敵役が『アリス』なのは…ジョークなのだろうか。

新刊が出るたびに『いかがわしい本なんかやめてこういう本を読んでください』というメッセージと共に5冊ずつ送ってくるのはやめて欲しい。

もう置く場所がないよぅ…。










追記の追記の追記のそのまた追記。

美姫ちゃんから『またやっちゃった♪』というメッセージと共に、動く人形が3体ほど送られてきた。

おまけに舞姫ちゃんの『体験談は手紙にしておくってください』というメッセージ付きだ。

美姫ちゃん宛に『君に友達が出来なかったのは、体の問題じゃなく性格の問題だよ』というメッセージを送るべきか真剣に悩む。

人形達が神妙な顔で頷いていたのが印象的だ。

人形達と共に『強く生きよう』と夕日に誓う。

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