ザ・グレート・展開予測ショー

戸惑い(後編


投稿者名:hazuki
投稿日時:(03/ 4/23)

じわりと、目頭に熱いものが込みあげてくる。
だけど、それが、どんな感情からくるのかわからない。

分かるのは、
「でも、どっか、いたそうだよ?」

少女は、瞳を潤ませ、おきぬに聞くその姿から貰う、あたたかいもの。
それに、対する嬉しさ。

それだけだ。


「ううん、どこも痛くないよ、だけど、有難う」
おきぬはくしゃっと少女の頭を撫でて、ふうわりと、笑う。

「えへ」
少女は、くしゃっと顔を崩して、笑う。
美しいとは、いえないけれど、ひどく、暖かい笑顔だ。


そして、聞こえる声。
どうやら、その声からして、少女の母親が、呼んでいるらしい。
はーいっと少女は可愛らしく声を上げて、その呼ぶ声の方へ行こうとする。

が、少女はくるりと身を翻す直前に、ぴしっと一指し指を立ててこういったのだ。


「おねえちゃん、わらってるほうが、かわいいよ」

と。
それだけ言うと、とたたたっと軽い足音を立てておかーさんっと言いながら走っていった。

時間にしてみてほんの数分の出来事である。
きっと、これは日常のささいな、出来事なのだろう。
ただ、元気の無さそうな自分を、心配してくれて、声をかけてくれる。

当たり前で、だけど優しい、出来事。


そんなことが毎日、積み重なってゆく。

優しい出来事や、悲しい出来事。
身を切られるかのように、辛かったり、自分の不甲斐なさに涙したり
自分の力だけでどうにもできない事があったり

だけど、それと同じだけ、ほんのささやかな暖かい出来事が、降り積もってゆく。


それは、もしかしたら、悲しみの大きさに較べたらものすごく些細な事かもしれない。
見落としてしまうほど、小さなことかもしれない。


(ああ、そうか)

ふいに、おきぬは気がついた。
あの時、少女に声を掛けられた時なぜ、あんなに涙がでそうになったのか。


きっと、ただ、切なかったのだ。

悲しいのに、嬉しくて。

中途半端な自分が悲しいのに、そんな自分が嫌なのに、そんなこと関係なく心配してくれるのが。
純粋にそんなこころが貰えるのが。

そんな自分に切なくて、そして戸惑っていたのだ。



頑張ろう─自然に、そう思えた。

頑張ろうと。

急に全てを変えることなんて無理に、決まっているけれども

でも、頑張ろうと思った。

優しくて、そして悲しくて、暖かくて冷たい、そんな毎日を繰り返しながら─


かたんかたんかたん…

電車に揺られ、その心地よい振動に身を任せながら



おわり。


おまけ
「……なんで、駅の前で待ってるんですか俺達」
「なぁになんか文句あるの?ボロ雑巾」
「……いぇ…」
「………いっとくけど、私がここの前にいるのは居たいから、であって待ってるわけじゃないんだからね」
「………」
「な、な、なによっその疑いの眼差しはっ」

ほら、もうひとつ、あたたかい、出来事がもうひとつ(笑)


ほんとーにおわり(笑

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