ザ・グレート・展開予測ショー

ひのめ奮闘記(その17(B))


投稿者名:ユタ
投稿日時:(03/ 4/23)






ブウウウウウウウゥゥゥゥ────────ンっ!!!

「のわあああああああぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!!!」

朝日照りつける首都高のアスファルトにエンジン音と男の絶叫が刻まれる。
絶叫を挙げる男、横島は自分の体がシートに押さえつけられる力と物凄い速さで流れる風景に縦線が顔に浮かぶ。

「お、おい!令子、ちょっと出しすぎじゃないか!?オービスに撮られちまうぞ!!!?」

違反金くらいは正直パっ払えるだけの金はある、しかし警察のお世話にならないにこしたことはない。
そう思いハンドルを握る妻を落ち着かせようとするが・・・

「何言ってんのよっ!!!!!?」
「ヒィッ!」

逆に一括されてしまった。

「あんた分かってんの!!?A級ランクの仕事なんて私達でも手間がかかるのよ!!?
それをあの子がやったら死ぬかもしれないじゃない!!」

「わ、分かってる・・・・大変分かっておりますよ・・・」

横島は令子の怒号にビクビクと脅えながら答える。

「それをあんたはぁ・・・」

「わ、わ、わ!STOP!そ、そうだよな?急がなきゃな?全面的に令子が正しい!な?」

横島は左手に握り拳を作る恐妻に冷や汗がタラタラと流す。
令子もこれ以上構ってられないとばかりアクセルをさらにグッと強く踏んだ。
加重していく体を感じながら横島は思った。

(ちくしょー!ちくしょー!いつもいつもことあるごとに殴りおって〜!
いつか元とったる!見返したるーーー!!)

16年前と同じことを心で叫び、形の変わった顔半身を涙ながらに撫でる横島だった。












同時刻AM10:00
美神美智恵邸マンション

「ふう・・・・」

美智恵はタメ息交じりに朝刊をめくった。
先ほど令子から「ひのめの学校に休みって連絡しておいて」と一報があっただけ、
それ以上のことは何も話さず電話切れ、聞くことが出来ない。
リダイヤルを押しても留守電に繋がるだけだった。

「ねえ、ママから連絡あった?」

どこか疲れたような瞳で尋ねる蛍。
それはそうだろう、女子中学一年生が昨日から一睡もせず徹夜もすれば誰の目にも疲れが見える。
美智恵はそんな孫の様子に心配を覚え声を掛ける。

「ほら、蛍も学校には『風邪』だって連絡しておいたから・・・・少し寝ておきなさい」

今日は月曜日、修学している者なら当然学校に行かなければならない。
しかし、蛍は頑固としてひのめの帰りを待つといい聞かなかった。
ちなみに忠志と令花の小学校は創立記念日で休校、令花はいまだ霊力が回復しないのか眠り続け、
忠志も深夜3時まで粘ったが、いつの間にか夢の世界へと堕ちて行った。

「うん・・・・大丈夫だよ」

そういって無理して作った笑顔で応える蛍。
本当ならこのまま寝てほしい、無理はしてほしくない・・・それが祖母としての願い。
しかし、蛍もまた母や祖母同様、意志の固さは筋金入りだった。

「分かったわ・・・あなたの頑固なとこは美神の血かしら・・・
ほら、コーヒー作ってあげるからいらっしゃい」

「うん、ありがと」


トポトポトポトポ・・・

カップにコーヒーが注がれ熱い湯気が立ち上る。
美智恵の視界には黒い液体が映りしだいにその単調作業に頭がボーっとしてきた。

「ちょっ、おばあちゃん!」

「え!?・・・・・・・・・ああっと!」

蛍の声にカップからコーヒーが溢れているのに気付く。
慌てて布巾で拭き取ろうとするが、今度はその手がカップを倒し二次災害を引き起こす。

「ご、ごめんなさい・・・今拭くわね」

「おばあちゃん・・・・」

急いでテーブルの上を拭き取る祖母の姿。
それは今まで見たことのない動揺した姿・・・明らかにひのめのことが気になってしょうがないという証拠。
蛍は・・・・そんな祖母の後姿に・・・・思わず悲しみで胸がギュっとなるのだった。




















バタン!バタン!!


勢いよく車から飛び出る横島と令子。
目的の廃工場についてまず感じたもの・・・それは凄まじい悪意に満ちた霊気だった。
視界に写るのは工場を囲うように飛びかう何十体もの悪霊。

「おい・・・」

「ええ・・・もう始まってるみたいよ!」

言い終わらないうちに駆け出す令子。
これだけの霊気・・・最悪の光景すら覚悟しつつ、まとわりついてくる悪霊を素手でぶっ飛ばしていく。

「おい、令子・・・神通棍くらい・・・」

横島も走りながら霊波刀で悪霊を斬り裂いていくが、それでも令子の除霊ペースのほうが早かった。
強えぇ・・・10年以上連れ添っている妻の強さに改めて感嘆と少しの畏怖が混じった息を吐く横島。

ザっ!

やがて工場中央、一番霊力が集中している地点に到着する二人。
そして二人が見た光景・・・
それは、神通棍を構え、必死に悪霊の大群に挑むひのめの姿だった。
ひのめは荒々しく肩で息をし、今朝ホテルで乾かした白ジャージはところどころ破れ、出血のため鮮血の赤に染まっていた。
もはや、限界・・・。それが横島が見たひのめの第一印象だった。

「この悪霊どもがっ!」

横島は霊波刀に込める霊力を強め突入しようとする。・・・が
しかし・・・その肩を後からガっと掴まれ柱の陰まで引っ張られる。

「待ちなさい・・・・」

「えっ!」

肩を掴んだ人物・・・令子のほう振り返った。
横島が目で「なぜ?」と訴えるが令子は一度首を横に振って応えた。

「見てみなさい・・・・・・ひのめの霊力」
「?」

言われて注意深くひのめを見てみる。

「上がってる・・・・僅かだけどひのめちゃんの霊力が」

横島が驚くのも無理はない。
12年前霊力を封印したときに聞いた説明では年齢成長による霊力の向上以外は規定値以上にならないと言われていた。
そのくらいひのめに施した封印は完璧なもので、
僅かでもその規定値を上回ることは横島達の予想外の出来事だった。

「ひのめちゃんの努力が、封印力を上回ってるってことか?・・・・でもな、
あんだけの霊力じゃ結局殺されるのがオチだぞ!?」

横島の言うとおりだった。
確かに霊力は上がっているがそれだけでこの霊団を倒せることはまず不可能。

「このままじゃ・・・・ね。でもひのめの封印が解けたらどう?」

「そ、そりゃ・・・・いけるかもしれないが」

「だったら・・・・今は耐えないさい」

「ちょっと待てよ!?」

令子の意外な一言に目を丸くする横島。
ここまでの経緯から自分よりもむしろ令子のほうが手助けすると思っていただけにその動揺は大きい。

「んな、無茶な!よしんば封印が解けたって今度は霊力が暴走して昔みたいに火だるまだぞ!?」

「分かってる!だからもしかしてのときの為に念力発火封じの札だって持って来てるわよ!」

「あのなー!ここにきた目的は何だ!?ひのめちゃんを助けに来たんじゃないのか?」

「分かってる・・・・そんなこと分かってるのよ・・・・でもね。
ひのめは今自分の殻を自分で破ろうとしてる・・・・そんな姿を見たら・・・」

令子は悲しみの混じった声で伏目がちに言った。
ひのめの苦悩・・・それをしっかりと理解していなかっために今回のような出来事となってしまった。
12年前はひのめを助けてやれなかった、しかし、だからといって今回助けていいものだろうか、
自分の限界を、成長を超えようとするひのめを・・・
令子は迷っていた。

「分かった・・・」

「え!?」

今度は令子が横島の声に驚く番だった。

「そんかわり、ホントに危なくなったら助けに入るからな」

「うん・・・ありがと」

横島に感謝の言葉を述べひのめを見つめる令子。
令子の言ってることは十分理解できる・・・確かにそれは賭けに近い・・・
だけど・・・今はひのめの可能性と妻の言葉を信じるてみる。

(ひのめちゃん・・・・頑張れよ)

横島もまた真剣な瞳でひのめを見守るのだった。






                            

                                 その18に続く



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あとがき



え〜と・・・・・すいません・・・何かまたひのめピンチですね、傷ついてますね(^^;
で、でも多分次回でそんなひのめともお別れでしょう・・・
何か嬉しいような、寂しいような・・・(ホロリ)





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