ザ・グレート・展開予測ショー

カット・ファスト・ボール


投稿者名:Kita.Q
投稿日時:(03/ 4/22)

 カット・ファスト・ボール。
 途中までストレートのように見えながら、打者の手元で小さく変化する球種のこと。



 「牛ロース500gとレバーください」
 「あとはニラとニンニクと・・・あ、あと卵も買わなくちゃ・・・」
 (いったい、どんな料理を作ろうとしてるんだろう・・・?)

 商店街のひとたちにとっては、もはや見慣れた光景かもしれない。
 このところ、隔週に一度のペースで、横島はおキヌに晩御飯を作ってもらい、一緒に食べるようになっていた。
 
 そしてそんな日は、いつも二人して、近所の商店街まで晩御飯の材料の買出しに出るのである。




 (・・・あ、いかんいかん。つい見とれてしまった)
 男なら誰でもそうだろう。横島もかいがいしく料理をつくるおキヌの後姿にみとれてしまっていた。

 クラスの連中が知ったら、なんていうだろうか。

 「あの、おキヌちゃん。俺も何か手伝おうか?」
 「ダメですよ。横島さんは座っていてください」

 やがて、食欲をそそるにおいが、部屋に満ちた。

 「なんか、中華料理っぽいね」
 ご飯がすすみそうだ。「いただきまーす!」と言うと、横島はさっそく箸をつけてみた。

 「・・・うまいっ!こらうまいっ!!」
 「よかったぁ。どんどん食べてくださいねっ!」

 横島が盛大に食べる様子を、おキヌはニコニコしながら眺めていた。

 やがて、彼女はポツリと言った。
 「私ね、こうして(横島さんのために)料理するのが・・・好きなんです」
 
 横島は顔を上げて、おキヌを見た。彼女の顔は、顔を伏せているのではっきりとは判らないが、おそらく耳元まで真っ赤になっているようだ。
 
 「おキヌちゃん・・・・・・」
 「横島さん・・・・・・」


























 




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 誠に勝手ながら、この情景の描写はGTYの基準にそぐわないものと思われますので、削除させていただきます。ちょきちょき。
 
 人民回収軍 検閲局局長

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 「・・・すごかったですね、横島さんの、・・・食べっぷり」
 
 がっつく、という表現がそのまま当てはまるような食べ方だった。そう、テレビ番組なら決して放送できないだろう、というような(神よ、許したまえ)。
 
 「いや、ははは。メッチャうまかったからね・・・」
 「ホントですか!?すごく、うれしいです・・・」

 食後のお茶をすすりながら、二人は笑いあった。



 




 「駅まで送っていくよ」
 「すみません、わざわざ・・・」

 あやまることはない、当然ですよ。
 横島は心の中でつぶやいた。

 「最近、夜もあったかくなってきたな」
 「そう、ですね」

 なぜか、おキヌの声がかすれていた。カゼでもひいたのか、と思った瞬間、横島はドキッとした。
 
 彼女が、横島の手をにぎってきたのである。

 (おキヌちゃん・・・)

 彼女の手は、熱があるのかと思うほどにあつかった。

 (ああ、明日は天気がよさそうだな・・・)

 こんなとき、なにか気の利いた行動をとるべきなのか、などと横島は考えてみたりしたが、なかなか思いつかなかった。

 (自分の中に引き出しがないもんなぁ)

 おキヌも、ひとことも口をきかなかった。にぎっている手どころか、体中がこわばってしまっているのがはっきりとわかる。

 駅までの距離を、おっそろしく長く感じた。おキヌにとってはそれ以上なのではないか。
 なにか彼女が気の毒だな、と横島は考えていた。



 「わざわざ、ありがとうございます」
 「いや、いいよ」

 帰宅途中の人々を横目で見ながら、横島は自分でもおどろくことを言った。

 「また・・・なんか食わして」

 おキヌは一瞬、目を丸くした。そして、急に笑い出した。

 「ええ、いつでもいいですよ」

 彼女はためらいがちに手を振りながら、駅の構内に入っていった。横島も手を振りかえしながら、心の中でつぶやいた。

 ごめんね、おキヌちゃん。でもありがとう。

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