ザ・グレート・展開予測ショー

戦乙女は天に舞う


投稿者名:矢塚
投稿日時:(03/ 4/21)


 わきわきと左手を握れば、自分の思うままにしっかりと動いてくれる。手の感覚もちゃんと伝わってくる。体の何処にも異常は無いが、しかし、左手とともに得体の知れないターゲットやら測量距離やら大気濃度やらが、目に映りこみ、表示される。
「な……なんだ、この表示は? まるでロボコップとかターミネーターみてーな……ま……まさかなっ!? あは……!? あははははははっ……!!」
 損壊した銭湯に立ち、『接合線のはしる全裸の麗しき乙女』は、自分の姿を割れた鏡で確認した後、現実逃避の愛くるしい高笑いをあげた。
 高笑いを続ける彼女に、突如として湯船から現れた半壊したロボットが、その首をねじ切ろうと手をかける。
「うっ、うわああああッ!?」
 あまりの出来事に驚愕するしかない彼女の額から、高出力のエネルギー弾が一斉射。
 その直撃を受けてよろめくロボット。
「なッ!?……なんか出た!? ドドドッて!? 俺のデコからドドドッてー!?」
 何がなんだかもう分からない彼女に、さらに追い討ちをかけるように、その麗しい体の一部から小型ミサイルがロボットめがけて発射された。
「なッ!? 俺の胸からミサイルがッ!? ミサイルの胸がっ!? 胸がミサイル!?」
 彼女の胸がミサイルになって飛んでいき、見事ロボットを粉みじんに撃破する。
 後には、自分のおかれた想像を絶する事態にただ呆然とし、文字通り胸にポッカリと穴のあいた彼女が残されたのだった。
 
「――その体は、万一のために保管してあった『ユウリ様の予備ボディー』なのだ。カナタ様の予備ももちろんあるが、カナタ様の身が危険な今の状況で、それを先に使う事は許されない。何しろ、カナタ様は王位継承者なのだからな――それに、リョウどのの生前の体格を考えればそのボディーの方が運動中枢回路がなじみ易いだろう。何より、かなりの武装が積載できるし――」
 遅れて駆けつけたセイリュートから、説明を受ける彼女……いや、彼は、かわいらしく頭を抱えてその相当に理不尽な己の運命にショックを受けていた。
 その姿にひそひそと言葉を交わすセイリュートとブラッド。
 ふいに二人の目の前で、涼は足の裏からジェット噴射を撒き散らし、かろうじて残った銭湯の天上をぶち破り、空高く飛び出していった。



『これは夢だ――――ッ!! だって、私――じゃない! 俺、ホラ、飛んでるし――――!?』



 星野涼。高校二年生。男。亡命宇宙人のカナタと出合った為の、今だった。

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