ザ・グレート・展開予測ショー

奥様は妄想狂!?−後編と言うか・・・いや、まぁ、後編なんですけどね−


投稿者名:veld
投稿日時:(03/ 4/21)



「・・・美神の元にいると、うるさいのよ・・・年中ピリピリとしてて機嫌が悪いし・・・おキヌちゃんに当たることが出来ないわけだから・・・素行の悪い私に怒鳴りつけるし・・・」

 「何か、崩壊寸前の家庭の図みたいだな・・・」

 というか、ある意味ではまんまだ。つーか、素行が悪いと思ってんならしなけりゃ良いじゃねえか。

 「まっ、そう言うわけで、私はここにいなきゃ居場所がないわけ・・・それでも、あんた、あたしをここから追い出そうってわけ?」

 胸を張りながら半眼で俺を見、薄く笑う彼女。
 俺は横柄な態度の彼女に怒りを覚えるよりも呆れてしまっていた。
 ・・・まぁ、話された内容は、酷くドロドロとしていた故に、その態度が、空元気から来るものだと勝手に思ったからなんだが。

 「・・・分かったよ。俺が悪かった。別にいてくれても構わないけど・・・」

 「けど?」

 切り出すのに、幾ばくかの躊躇い。
 彼女は訝しげに俺を見てる。

 口を、開いた。

 「食費くらいは払ってくれよ・・・今月・・・っていうか、毎月だけど・・・ピンチなんだ(汗)」

 「あたし、あんまりお金持ってないけど・・・そんなにやばいの?あんた給料上げてもらったんでしょ?」

 「いや、上げては貰ったんだけどな・・・その分、出費もかさんで・・・」

 「出費・・・?」

 「奥さんは・・・こいつだぞ」

 と言いつつ、何やらまだ考え事をしている妻を指差す。

 「・・・ぷれい?」

 まだ、そんなこと考えとったんかい・・・(汗)

 「・・・なるほどね。どんぶり勘定してそうな感じがするわね・・・」

 こいつの考えてるのがどんな感じかは何となく分かる気がする・・・。つまりは、きっと、事実と大差ない。

 「毎日肉料理ってのは・・・何とか避けれるようにはなったんだけどな」

 それでも、三日に二回と言う所が、エンゲル係数とコレステロール値を高めている要因なのは間違いない。

 「・・・それでも、なくなってはいないしね・・・しかも、地味に高めの牛肉ばっかり買ってるし・・・ちゃっかりトップブリーダー推薦のドッグフードもおやつとして買ってるし・・・」

 「お揚げもな」

 切り札、一。と言うよりも、要因、一、か。

 食費の四分の一を占めてるのがお揚げってのは・・・どういう事だろう?

 「うっ・・・まっ、分かったわ・・・ここに居ても良いんでしょ?食費払えば・・・」

 「情けない話だけどな・・・別にこんな角度から切り出そう何て思ってたわけじゃないんだけど・・・帰る場所のない狐を追い出す真似はしねえよ」

 溜め息を着きつつ。
 正直、こんな情けない話なんて、本気でするつもりはなかったんだが・・・。



 「忠夫さん・・・」

 何となく、悲しい充足感に浸っている俺を恐る恐ると言った様子見つめ、人差し指で肩をつんつんさせているシロがいた。

 「ん?何だ?シロ・・・」

 戸惑う俺をじっと見つめ、俯く。
 はてなマークを頭に浮かせながら(最近習得した)見つめる俺を上目遣いで見つめ返すと、よしっ、と自分を奮い立たせるように呟いて。


 「拙者・・・忠夫さんの望むことなら・・何でもするでござるよ」


 彼女はかうのたまった。

 「・・・?」

 とりあえず、彼女が何を言い出したのか分からず、困惑する俺。
 望むことなら何でも?

 下世話な話題にちょくちょく登場するアレが頭に浮かぶ。
 が、それを散らすように頭を振って、もう一度彼女を見る。

 鼻息荒く、興奮しているよう。少なくとも、俺の想像と同じ類いのものではないと思う。料理を作る時とか、散歩をする時とか、何というか、健全な類いな興奮なのだ。
 ちなみに、悲しいことにその俺のした想像関連の場合、こいつは平気で服を脱ぎやがるのだ。さっきのように。

 ・・・いや、その場にいるのが俺だけなら・・・悪くはないけど(爆)

 そんな彼女を不思議そうに見つめ、タマモさんがおっしゃった。

 「どうしたの、シロ」

 物凄く漠然としているが、でも、これが一番だろう。
 何してんだ、お前。聞きたかった言葉、いろんな意味で一番。

 「だから・・・拙者に『ぷれい』を教えてくだされ」

 「・・・(真っ赤)」

 純真な眼で―――見つめられ、言葉を失う。
 その内容で、何も言えなくなる。
 ・・・頼む、そんな綺麗な笑顔で―――俺を見ないでくれっ!!

 「・・・あのね、シロ・・・えっとね・・・うぅぅ」

 焦ったように言葉を捜すタマモ、だが、上手い言いようなど、あるはずもない。見つからなくて、うめく。
 シロは、タマモの言葉をじっと真剣に待っていたが、言葉が来ないのに焦れて、俺を見た。
 涙目、上目遣い、真剣で必死な表情、純真なのは、分かりきってて・・・そして―――

 「・・・駄目でござるか? お馬鹿なシロは・・・嫌いでござるか?」




 目の前にこの世の何よりも美味しいデザートが無造作に置かれてあったとしよう。 普通、人はそれを食べたいとは思っても、食べようとはしない。例え、それが美味しいことが分かっていたとしても。
 そこに、何故、あるのか?
 何故、こんなに無造作に置いてある?
 ひょっとしたら、これは、食べてはいけないものなのではないだろうか?
 食べることによって、何らかの不利益があるのではないか?
 食べることで、他の何かを食べることに躊躇いを覚えるようになってはしまわないだろうか?

 もう少ししたら、もっと美味しくなるのではないだろうか(謎)
 というより、勝手に食べてしまったら、拾得物隠匿とかで捕まるのではないだろうか?

 また、同じように目の前に何よりも美味しいデザートが置いてあるとする。
 ご自由に御取り下さい、と書かれた看板の傍に。
 しかし、それでも、多くの人は食べるのにいささかの戸惑いを覚えてしまう。
 そこに何故あって、かつ、食べていいなどと張り出されているのか。
 そう、不安になってしまうから。
 それに、それを食べることで、他の人に浅ましいだとか、そう言う風に思われないか、と、そんな事を考えてしまうからだ。
 多くの場合、それは杞憂であることは分かりきってる。





 つまりは、だ。
 幾ら美味しいデザートがあったとしても。
 食べたいと思っても。
 人は我慢する。
 何故なら、人の心の中には何時でも、『理性』という名のストッパーがついているからだ。
 だから、今の俺の状態はこう表される。









 さようなら、理性さん。
 こんにちわ、本能くん。





 ぶちっ・・・






 「・・・シロぉぉぉぉぉっ!!」

 「きゃん、忠夫さんっ♪目が恐いでござるよお♪」

 「・・・あたしは台所から温かく見守ってるわ・・・(汗)」





 きゃいん(はぁと♪)





















 ・・・んで、まぁ、いつものように・・・こういうオチになったわけだ。


 いつものように、っていうか、あんたがもう少し我慢強さっていうか・・・欲望を押さえつける理性ってのを持ってたら防げる結果だとは思うけどね。


 はっ!!そんなもん、誰も俺に期待しちゃいねえよっ(泣)!!


 何やさぐれてんのよ・・・(汗)


 はにゅん・・・忠夫さん・・・むにゃむにゃ・・・拙者・・・頑張るでござるよぉ(ぽっ)















 暗い部屋の中。かつては自分の寝床であったそこに、彼女はいた。
 きらきらと輝く黄金色の九つのしっぽのような髪の毛を紐で縛り頭の後ろから垂らして、向かい合う蒼色の髪の女性と話していた。―――いや、話しているというよりも、タマモが一方的に喋るのを、相手が頷きながら聞いているといった感じだった。

 ところどころ、みしっ・・・っと言った音が蒼色の髪の少女の右手から聞こえる気がしたが、タマモは聞かないフリをした。あまり突っ込むべきではないと思ったし、突っ込もうという、勇気もなかった。
 好奇心は身を滅ぼす。そこのところを、前世の経験から本能的に悟っているのかもしれない。

 一通り、タマモが話終えると、何かショックなことでもあったのか、蒼色の髪の少女はどもりながらも言葉を返した。

 「・・・そ、そう。これで報告は終わりなのね・・・」

 どうやら、タマモは報告をしていたらしい。悪びれもせずに、笑みを浮かべ、言っていなかったある話について彼女に伝えようとする。それは、何時も彼女が話そうとして―――

 「そっ。その後でシロが何「結構っ!!」・・・そう、面白いんだけどねぇ・・・」

 止められるある回数の事だった。

 「・・・タマモちゃん、また、お願いするわ」

 「うん、おキヌちゃん。約束の物さえ用意してくれるなら・・・ちゃんと報告してあげる」

 タマモの手が、少女の前に突き出される。溜め息をつきつつ、彼女はその手を握ってその部屋を後にする。

 「分かっているわ・・・ちゃんと用意はしてあるから・・・」

 ばたん・・・ドアが閉じる音と共に、住むべき主のいなくなった部屋が静寂に包まれる。

 僅かに入ってきた風の中に混じる、甘い―――香り。部屋の中に漂う使われていない部屋独特の匂いにかき消されてしまったそれが、ここ最近の事務所の香りとなっていた。

 美神令子―――転職かっ!?なる記事がゴシップ紙に載った原因。

 今日も今日とて、美神除霊事務所ではお揚げの香りが漂っていた。


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