ザ・グレート・展開予測ショー

ひのめ奮闘記(その16(A))


投稿者名:ユタ
投稿日時:(03/ 4/19)






『2015』年  PM10:49
美神美智恵邸マンション1501室





「で、結局ひのめの霊力は封印。
ま、でもそのときかけた封印はひのめが成長すれば外せる設定だから・・・あと2、3年で解ける予定だったのよ」

令子は全て言い終えたとばかりに大きく息を吐くと目の前にあるミネラルウォーターで喉を潤した。
ゴクっという令子の喉鳴りだけが響くキッチン、令子が話し終えたそこを支配したのは沈黙だった。
ことの一部始終を聞いて沈黙する蛍と忠志。そしてもう一人の静聴者美智恵は無表情のままお茶をすすった。


「あれから12年か・・・・・・長かったわねぇ」

令子はギシっと椅子をしならせ背もたれにもたれる。
娘、息子にひのめのことを理解してほしくて話した過去の事件。
しかし、その話すタイミングを外した・・・・ひのめの泣き顔を思い浮かべ頭を抱える令子。
あんな泣き顔をさせたくない・・・・そんな決意を込めて切った髪をそっと指でといた。


「はぁ〜、こうなるならもっと早く話しておくべきだったわね」

「六道女学院に入学して、力つけて、様子みてから話そうと思ったのは失敗だったかしら」

「失敗よ」
「うっ」

令子の容赦ない言葉にグサっと胸に何かが突き刺さる美智恵。

「何か、不機嫌になってない?」

「ママがあのとき私にした仕打ちを思い出したのよ!」

令子は12年前の母の仕打ちを鮮明に思い出し怒りマークをコメカミに浮かべる。

「何かやったかしら?」

「調子いい記憶力ねー!!!・・・・・・ん?」

令子は美智恵とのやり取りを中断する、子供達の様子がおかしいことに気付いたからだ。
蛍は悲しい表情、忠志はどうしてのいいか分からないといった感じの難しい表情を浮かべていた。

「どうしたのよ、あんた達」

「だって・・・」

蛍は暗い表情のまま口を開いた。

「私・・・ひのめお姉ちゃんに酷い・・・ぐす・・・ことたく・・・さん言っちゃったし・・・
絶対嫌われたもん・・・・」

蛍はポタポタと溢れる涙を拭おうとせず体をギュっと縮めた。
敬愛するひのめの事情を知らなかったとは言えなんて酷いこと言ってしまったのか・・・
苦しかったに違いない、悩んでたに違いない・・・・それなのに自分は何てことを・・・。
そんな後悔と自責の念だけが蛍の心を覆った。

「そんなことないわよ・・・」

「え・・・」

令子はそっと蛍の横に腰掛けその肩を優しく抱き寄せた。

「蛍は悪くない・・・悪かったのは話すタイミングを見誤った私とおばあちゃんなんだから・・・
あんたは気にする必要ないのよ。それに・・・
ひのめがあんたのこと嫌いになるわけないでしょ?あの子もあんたのこと大好きなんだら」

「ううっ・・・ママーーー!!」

蛍はそのままやさしい笑顔の母の胸元で泣き崩れた。
今回の事件で蛍もまた悲しみを感じる者であった。


ガタンっ


「忠志どこ行くの!?」
「こんなとこに静かにいれねーよ!ひの姉を探し・・・」

ジャキン!グサ!!

「落ち着かんか」
「あぎゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」

冷めた目の令子に神通棍で浣腸された忠志はその場で卒倒し悶絶する。

「お父さんが付いてるから大丈夫よ、それにあんたが行ってもなんにもならないでしょ」

(く、口で言ってくれればいいやんけ ・・・・)

お尻をさすりながら視界がブラックアウトする忠志だった。
















同刻 極楽ホテル2005室

全ての話が終了してわずか数秒・・・
しかし、その数秒は沈黙に包まれている。

『でも、封印はひのめちゃんの修行と成長しだいで外れるようになってんだ〜』

と、少し明るめで締めたつもりだが、当のひのめは俯いたまま何も話さない。
その表情は前髪で陰って読めず、横島はただ気まずい雰囲気の中でひのめの言葉を待った。

「今の・・・」

「え?」

「今の話はホントなの・・・・?」

「あ、ああ・・・」

横島はひのめの問いに短く答えた。
もちろん自分の知ってることは全て話した、この話を聞けばひのめは幼子の不注意があるとはいえ被害者でしかない。
彼女は泣いてしまうのだろうか・・・・いや、それは当然だ。
彼女は俺たちを責めるだろうか・・・・それも覚悟してる。
ひのめにはその権利があるし、自分達はそれを受ける義務がある。
横島は決心を固めひのめの次の言葉を待った。

震えている・・・・ひのめは両手を膝につきその小さな体を振るわせた。

「ひのめちゃん・・・」

横島がそっと肩に手を置こうとしたそのとき・・・・・



































「やったあああああ────────────────────────────っ!!!!!!!!!」

「へ!!?」

横島が目にしたもの、それは勢いよく立ち上がりまるで何かに優勝したように両手を上げガッツポーズをとるひのめの姿。



え・・・と

やった?・・・ヤッタ・・・YATTAよー・・・あ〜あああ〜初めてのチューぅ♪
ってボケてる場合じゃない。

「あ、あのひのめちゃん?」

いきなりの出来事に頭の回転が追いつかない横島は、嬉しそうな表情で笑顔を浮かべるひのめにそっと話かけた。

「ん、なに?お兄ちゃん?」

「い、いや・・・その『やった』って?」

予想外のひのめの態度にまだ何がなんだかわからないといった表情の横島。
今の話でひのめに喜ぶ部分があっただろうか?
なじられることも、殴られることも覚悟していただけに拍子抜けのように感じてしまう。

「だってさ、私にでっかい霊力の才能があるのよね!?しかもそれは封印されてるだけなんでしょ!
ってことはそれが取れればもうオールOKじゃない!!」

「そ、そうだけど・・・・その怒らないのかい?俺達はひのめちゃんを霊力を封印するような事態を・・・!・・・」

横島の言葉をひのめの人差し指が遮った。
そして、指で唇を塞いだままひのめはニっと笑みを浮かべる。

「お兄ちゃん達は悪くない!
だって私のこと必死に護ってくれたんでしょ?それにケルベロスとかN山とか正直忘れちゃってたし。
気にすることないって♪」

「ひのめちゃん・・・・」

横島の胸に『ジーン』と感動の効果音が流れた。
明るく、元気に、前向きに、やさしく・・・・よくぞここまで成長してくれた・・・・と。

「それとありがとね」

「え?」

「お兄ちゃんも辛かったんだよね、こんな話・・・私にするの。
12年間も私が傷つくと思って胸のうちにしまって・・・いつ話そういつ話そうって悩んで・・・
だから・・・・ありがと♪」

(令子・・・・・この子は本当にお前の妹か?何かもーおキヌちゃん属性?)

ダーと心で大泣きする横島だった。

「もしもーしお兄ちゃん?」

「あ、わ、わりぃわりぃ。まあひのめちゃんが元気出してくれてよかったよ」

「へへ、もう泣くのはおしまい!また元気なひのめに戻りますんでよろしく♪」

笑顔のまま敬礼の真似事をやってみせる。
ああ、本当の心からの笑顔だ・・・・・その明るさが横島の心を温かくしていくのだった。

「・・・・んじゃそろそろ寝ようか?」

もう夜も遅い、今日は家に帰らすのもなんだからと横島は寝る準備を始める。

「え!?」

その言葉を聞いてカーと赤くなるひのめ。
なぜなら今いる部屋にベッドは一つしかないからだ、しかもダブルベッド。
こんな状態でその後展開を想像するひのめ。

「んじゃ、俺は隣の部屋で寝るから」

「へ!?」

ひのめは自分の脳内展開を裏切る横島の言葉に目を丸くする。

「ああ、言い忘れたけど隣の部屋も一応借りてるんだわ。
この部屋は俺の私室で隣が来賓用になっててね、・・・・んじゃお休み〜」

手短に就寝の挨拶を述べ退室しようとする横島。
しかし、その袖がギュっと引っ張られた。

「え!?」

横島はゆっくりと振り返る。
そこに居たのは・・・・・どこか拗ねた表情で横島の上着を離さないひのめがいた。

「ひのめちゃん?」

何かあったのかと心配になる横島。
しかし、ひのめの一言はそんなものではなかった。

「・・・・・・・・・・・・・・・一緒に寝よ」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

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