ザ・グレート・展開予測ショー

闇夜


投稿者名:veld
投稿日時:(03/ 4/15)

 ()内を無視したら、色々な意味で楽です。多分。





 傷つくことを恐れてしまったら、人間は前に進むことが出来なくなるらしい。
 歩く術さえ失って、現実を見据える目さえ盲目になる。
 現実ってのは、迷いの中にあるものなんだって、何時か誰かが言ってた。
 だから、傷つくのは当たり前なんだって。

 でも、恐れることも、仕方がないと思ってる。















 (だめだね・・・こりゃ)














 時間の流れの中に取り残されてしまっただけなら、きっと、こんなに寂しくは無い。













 (うろ覚えの供述に、恐らくは警察は動いてくれんだろうなぁ・・・とか思いつつ。
 情状酌量の余地を求めて、自首を勧める形で問題に取り組んでいこうと思った(だけ)。)






 夜の闇に促されて、人は人に逢ってた
 ざわめきにかき消されそうな愛の囁き、傍から聞いてりゃ寒気がしそうな言葉も、本人達にとってはそれなりにスパイスにはなっているらしい。
 くだらない、と思った。
 きっと、嫉妬とか、そういう醜い感情がそう感じさせるのだろうけれど。

 口の中にたまった唾液を吐き棄てて、愛欲の渦に揺れてる公園を通り過ぎる。
 虚しくなるほど、通り縋る公園を。



 (何というか、本当に虚しいことこの上ない)




 空は、何時もよりもずっと綺麗に見えた。
 晴れやかな気分にはなれる筈も無いけれど。
 それでも、綺麗に見えた。
 何故かは解らない。でも、雲の陰り具合とか、月の色づき具合、星の出具合とか、そういうもの、全てが丁度良く感じた。

 「綺麗だな」

 思わず、呟く。

 夜が、光を奪っていくんだって。
 ずっと、そう思っていた。
 太陽が沈んだら、世界は闇の中に沈むんだって。
 心の何処かで恐れてた。
 まだ、少年の頃。

 いや、ついさっきまで、俺はそう思っていた。

 街灯の下、溜め息をつく。



 夜は、何も奪わない。
 寧ろ、朝から続いて空にありつづける太陽が光を与えているに過ぎない。
 夜は、奪うことなどしない。
 それどころか、気付かせてくれる。

 何もないからこそ、そこに見えるものがあるのだと言うことに。

 (見たくないものまで見せてくれるのは困りものだが)



 アパートのドアを開く。
 暗闇の中にぼんやりと浮かぶテレビの液晶画面が、月の光をぼんやりと照り返していた。
 ほのかに室内に宿る優しい光。
 電灯を付ける気が無くなった。

 敷きっ放しの薄い布団に包まって寝る。
 何もする気にはなれなかった。
 若い男の情熱ってのも、今のように繊細な精神状態の男には発生しないものらしい。
 考えて、苦笑して、唇を噛んだ。
 くだらない、また、呟く。

 (でも、三・・・いや、何でもない)



 夜は、流れてく。
 また、おせっかいな太陽が空に昇るのだろうか?
 昇るな、そう思った。

 どうせなら、沈めば良い。
 もっと、良く見えるはずだ。
 綺麗なもの。
 隠されているものが。
 良く見えるはずだ。

(ゴメンナサイ。嘘です。本当は、見たくないです)

 光の中でしか、輝けないものに、価値はあるのか?

 暗闇の中にほのかにでも光を放つものが見てみたいんだ。

 僅かでも良い、心の中に、残るものが。


 (トラウマになりそうになってるけどな)


 布団を、抱きしめた。
 噛み締めた唇、力を抜いて。
 その代わりに、腕に力をこめた。

 ぎゅっ・・・と。
 ぎゅっ・・・と。










 目を瞑り、窓を叩く風の音を聞きながら。
 その、光を持ってた人を思う。

 (・・・闇に飲み込まれそうになっている人の事を。)



(「・・・美神さん・・・駄目っすよ。



 それやったら・・・犯罪者の仲間入りっす。



 ・・・いや、本当に、駄目ですってっ・・・!!」)





 闇夜に思う。

 (光を放ち過ぎるのも、どうだろうと。

 日常茶飯事な暴力にそれなりに慣れているつもりではあったけど。

 まさか、犯罪行為に手を出すような人だとは思ってなかった。

 ・・・そんな。

 まさか・・・。

 人をトランクの中に入れて海に放るなんて・・・)





 (がくがくと震えながら―――思い返す。)

 (あれは何時のことだったか・・・。
 確か、おキヌちゃんの高校の・・・臨海学校について言った時のことだったような・・・
 ん!?・・・そんなナイスイベント(謎)があったのかっ!?
 しかし・・・何故覚えていないんだ・・・。
 女子高生との半裸(間違いではないかと)の付き合いっ!!
 そんなイベントがあったなら・・・一生の思い出に残るはずなのにっ・・・
 何か、どつかれたりとか、しばかれたりとか、沈められたりとか・・・。
 そんなはーどな思い出しかない・・・って、何時もの除霊作業とそんなに変わりはしねえじゃねえかっ!!

ん?

 沈められた・・・?)




 ・・・

 ・・・

 (そう言えば、あれやられたの、俺じゃん・・・(汗))



 ・・・

 (―――なら、良いや。

 何が良いのか、俺にも解らんが・・・。

 あの人に迷惑を掛けられる男は俺だけで―――。

 何か、それって、良いよね、と。

 多分、思ったのかもしれない。)



 (・・・でも、普通、仲間・・・いや、そんなの関係なく、人にそんなこと出来るだろうか?






 ―――何か、彼女を表に出してるととてつもなく危険な気がした。)




























 知らなかった。
 闇ってのは、俺の想像以上に深い色であるらしい。




 (殆ど、逃げ込んだも同然の少年の言葉を信じようともせずに、言語道断で追い払う国家権力の中に潜む闇。)

 そして、その闇を生み出す、光―――。

 (俺は、今、その眩しいくらいに輝く光の生み出す闇の中に消されようとしている。
 鉄の鎖に拘束された俺。
 真向かいで、愉快そうに笑みを作る雇用主と、悲しげに俯く、これを生み出した原因と、その腕の中で無邪気に笑う、この世でもっとも穢れ無き少女。
 雇用主の目が笑っていないことに気付いたのは、果たして、どうなんだろう?

 ―――助けて、お義母さん。
 ―――娘さんの暴走を止めてください。

 心底真面目に吼えた言葉は、心底嫌そうな顔と共に見えた無情な相槌に消された。

 「・・・ごめんなさいね。横島クン」

 「娘を犯罪者の妹にするわけにはいかないの」

 「いつもいつも・・・あなたには迷惑をかけるわね・・・」


 迷惑とか、それどころの話じゃない気がします。

 っていうか、この時点で貴方の娘さんは犯罪者の妹です。・・・っていうか、犯罪者になる娘さんを娘と認めやがれこら。

 ・・・これ、死ねますよ?多分。)



















 目覚めた朝は、冷たく乾いた空気が漂っていた。
 汗ばんだ体を撫でる冷めた風が、まどろみの中、まだ幾らか夢の中を彷徨っていた俺の意識を無理矢理に現実に引き戻す。
 何時も、心の中にいる人の夢を見た。
 夢は所詮、夢。
 そう割り切れたなら、どれほど良かったろう?



 (辛酸を舐めてきた日々を思い返すと、けしてその夢がただの夢でないのだと知れた。

 すなわち、正夢。

 正月にしか見ないと思っていたあれである。

 「・・・下克上・・・か」



 ・・・俺は、事務所からパクってきた銃に弾を込めた)


 今日も、一日が始まる。

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