ザ・グレート・展開予測ショー

桃太郎の桃 −中編−


投稿者名:veld
投稿日時:(03/ 4/14)


 注:壊れてます。壊れまくりやがってます。







 何故か、桃太郎は脈絡なく海岸から海を見つめていました。
 くたびれた男の風情を漂わせながら・・・そんなもんがこの世に存在するのかどうかは酷く怪しく思われるでしょうが、しかし、その時の彼を表すのなら、まさにぴったりと言える言葉でした。
 そんな彼に、真っ赤な髪のないすばでぃー(死語?)な女性が声を掛けました。



 「・・・ねえ・・・あんた?何してんのよ」

 「・・・聞かないで下さい」

 「って言われてもねえ・・・」


 困ったような表情を浮かべる彼女に向き直り、「聞いてくれますか?」と一言尋ねます。
 彼女はその剣幕に、いささかの躊躇いを覚えましたが、好奇心には勝てず、頷きました。





 ・・・



 「・・・包丁を持ったお婆さんと犬がダブルノックダウンした隙に逃げ出した・・・と?」


 こくん、彼は頷き、溜め息を付きました。


 「・・・話は、それで終わり?」


 彼は首を横に振りました。正直、彼女はあまり気乗りはしませんでした。この目の前にいる男の不幸話をえんえんと聞かされるだけなのでは・・・、と思ったからです。






 「いえ・・・。で、その・・・這う這うの体で逃げ出した先で、苛められていたきつねがいたんです・・・。可哀相だなと思って助けてたんです―――。
 











 「お・・・おいっ・・・大丈夫かっ!?」


 へ?苛めていた人間達はどうしたですって?
 所詮、俺、桃ですし・・・何が出来るということも無かったんですけど。
 止めてみたんです。

 「おいっ、止めろよ」

 ってね。

 すると、桃の分際で、とか何とか言われて、殴られたり地面に叩き付けられたり食べられそうになったりしましたけど・・・まぁ、桃ですし。
 でも、彼らの標的がきつねから俺に移ったから・・・結果的には良かったかもしれないっす。

 で、逃げ回って何とかそいつらを撒いてきつねのいた辺りに戻ってみると・・・。





 「助かったわ・・・あの人間ども。珍しいきつねじゃぁ・・・とか言って人のこと散々追い掛け回すんだから・・・。でも、あんたはあの人間とは違うみたいね・・・
ここにいてもまた苛められるし・・・ねえ、あんたについて行っても良い?」

 可愛らしい人間の御嬢さんがいたんです。話を聞けば、先ほどのきつねと言う事でした。
 思わず見惚れてしまうほどの美しさ・・・何時もこんな姿でいれば良いのに、そう言ったんですけど。たまたま変化が解けてしまって・・・それで村人に追い掛け回される羽目になったそうです。
 付いて来ると言うのも、もう、あの村にはいられないからとの事でした。山の中も縄張り争いが大変厳しく、自分一人ではとても生きることなど出来ない・・・だから、連れて行けと。

 でも・・・さっき話した通りです。はっきり言って、あのお婆さんと犬と比べたら、あの人間どもなんてどってこたぁないわけですよ。縄張り争い?あの一人と一匹相手にするなら、山中の獣を相手にしたほうが何ぼか楽でしょう。

 ・・・本気ですよ。自分、桃ですけど。

 だから、言ったわけです。

 俺も追われる身だから駄目だ、ってね。

 すると、彼女はこう言ったんです。



 「人間達に迫害されているきつねを見捨てるなんて・・・やっぱりあんたもあの人間達と性根は一緒なのね・・・信じてたのに・・・」



 って・・・」

 「で、きつねはついてきたわけね?」

 「はい。そうっす・・・。で・・・そのきつねに道を教えてもらってとりあえず人里に―――あ、さっき言った村の事じゃなくて・・・山一つ越えた先の村のことです。そこには、化けぎつねの噂はないとか言う話でしたんで。まぁ、一応―――出ようとすると・・・一際大きなケヤキの木の枝の上に子鳩がいたんです。

 「桃さん、桃さん、お腰につけたキビ団子、一つ私に下さいな♪」

 そう言われて、俺は自分の腰につけているものに気が付きました。
 間抜けな話ですけど、その子鳩に言われるまでは気付かなかったんです。
 ドクロマークのついた袋・・・お婆さんお手製のキビ団子でした。
 半透明な袋の中に見える黄な粉(らしきもの)をまぶした団子は確かに美味しそうに見えました。お腹が減っていた俺も、思わず目を奪われた程です。

 でも・・・あげられないでしょ?これ、明らかにやばい代物ですし。
 だから、

 「あ〜げません、あげません、だってこれはやばいもの。命が欲しくば去りなさい♪」

 と返したわけです。それに、何分、私達も追われる身。きつねはともかく、子鳩まで巻き込むわけにはいきませんから。

 すると、何処からやって来たのか知りませんが・・・何か変な格好をした子供が・・・

 「泣くな小鳩っ!!銭の花は・・・」

 とか、何とかかんとか言うわけですよ、で、小鳩―――て名前なんですって。あの子鳩―――が泣きながら答えるんです・・・。
 何か、酷く哀れで・・・って、別に同情心から巻き込んだわけでもないんですけど・・・」

 「・・・それで・・・団子あげたわけ?」

 「まさか・・・『俺は』あげませんでしたよ」

 「俺は・・・ってのは?」

 「タマモです・・・ああ、俺がつけたあのきつねの名前なんですけどね?」

 「ああ、あのそこで鳩となんかやりあってる九尾?」

 「ああ、そうっす。あいつが・・・






 あれは、確か・・・その村に到着して浅黒い肌をした奥さんと仲睦まじく暮らす金髪の心優しい地主さんのお宅に一晩厄介になり、旅立った次の日の午後でした。

 何分、桃なわけですからきつねや鳩のように運動には向いていないわけです。木陰で一休みをしている時に、暇を持て余した彼女らの会話を聞いてしまったんです。



 「あんた、そんなにあのキビ団子欲しいの?」

 「はい、欲しいです」

 「そう、じゃあ、あげるわ」

 「え、本当ですか?」

 「うん、あいつが眠ってから・・・ね」

 聞いてしまった以上は責任ってのが出来ます。見てみぬフリは出来ないじゃないですか・・・自分、桃ですし。それに、昨晩、人の親切と言うものに触れたばかりです。不義理な桃にはなりたくなかったんです。・・・寝るわけにはいかないな・・・そう思ったわけです。

 でも・・・

 「ねえ、薬草を煎じたから飲んでみない?栄養補給しなきゃ倒れちゃうわ」

 と言われて・・・幾分、躊躇いはしたんですけど・・・疲れてたのは事実ですし。飲んだんです。

 「ふふふ・・・睡眠を取ることが何よりの疲労回復になるのよ・・・桃さん」

 あっさりと騙されました。まさか、こんな事をするとは・・・さては彼女はあのキビ団子がどんな代物か知っているのか?
 そして、あの子鳩を食べてしまうつもりなのか・・・と、本気で心配していました。

 ―――夢の中で。

 所詮桃です。睡魔に勝とうと奮闘したものの、連日歩き詰めだったため、惜しくも負けてしまいました。







 目が覚め―――まどろみの中にいた俺の耳に、甲高いきつねの悲鳴が聞こえてきました。
 あっさりと目が覚めました。一体どうなってしまったのか、睡魔に負けてしまった自分への自己嫌悪と共に、浮かび上がる現実への希望が俺の足を速めました。
 悲鳴の聞こえてきたのは、俺の寝ている木の下から少し歩いた所。丁度広場のように開けた辺りからでした。


 「あんたっ!?何してんのよっ!!」

 「何って何です?」

 「キビ団子・・・何であたしに食べさせようとするわけっ!?」

 「キビ団子、美味しそうだからきつねさん、お先にどうぞ、とお勧めしただけじゃないですか・・・」

 「あ、あんたねえ・・・口の中に突っ込もうとするのがお勧めなの!?あんたの中では・・・」

 「私・・・鳩ですから」

 「理由になるかぁぁぁぁ!!」

 行って見て、正直ほっとしました。子鳩が無事だった事。その時は気付かなかったんですけど。彼女、何時の間にか人の姿をとっていたんですよね・・・あ、小鳩ちゃんの事ですよ。まぁ・・・子鳩の持っていた雰囲気そのまま彼女でしたから―――気付かないほうがどうかしてると思われるかもしれませんけど、俺には気付けなかったんです、その時は。
―――それよりも先に、喧嘩をしている事に呆れてしまってた・・・てのもあるんですけどね」

 「・・・で、未だにああやって・・・」

 「喧嘩してるわけです」

 「・・・呆れて物も言えないわ」

 「すいません・・・」

 「あんたに謝られてもね・・・、で、そこの隅っこのほうでいじけてるのは?」

 彼女が顎でさした先にいたのは、波打ち際で暗いオーラを放ちながら立派な砂の城を築いている女性。外見は、彼とそんなに年は変わらないように見える。

 「・・・ああ、あの竜ですか?彼女は・・・








 続きます。

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