ザ・グレート・展開予測ショー

#ルシオラ救済SS『マリア編』


投稿者名:ハルカ
投稿日時:(03/ 4/14)




『横島さん・どこへ・落ちたい?』



マリアの浮かべたその表情は
何よりも美しく、誰よりも人間くさかったわけで・・・・


ここは宇宙空間と地球の狭間・・・・とゆーか横島クンとマリアは
大気圏の中を落下しながら地球へ向けて、まっ逆さまだったりする。

25巻のラストでメドーサを倒したまではいいが
宇宙船の外に放り出されてしまった横島クンとそれを助けるために飛び出したマリア。


物語はここから分岐する。



「マリア、冷却材は自分のために使え。
 俺は竜神の装備があるから大丈夫だ。」

「ノー・横島さん!!
 竜神の装備を用いても・生き残る可能性・0.21%未満!!
 危険・です!!」

マリアは気付いていた。
冷却材は一人が大気圏の摩擦熱を耐えぬくほどの量しか残ってない事に。
横島クンもその事を知り、マリアをかばうために嘘をついて
ニッコリと笑みを浮かべたということに。

だからマリアは横島クンを抱く腕の力を少し強めた。
次に横島クンが冷却材をマリア自身に使わせる為に
マリアの腕をを振りほどいて一人で大気圏に突入する事が簡単に予想されたから。


「・・・・・・・・」


突然、横島クンがマリアの耳元で何かをささやく。

「えっ!?横島さん・・・・!?」

あまりに突然の事にマリアはつい腕の力を緩めてしまった。
『しまった!』と思ったときにはすでに遅い。


ガッ!!


横島クンはマリアの腕を振りほどき、マリアとはまったく違う方向へと落下していった。

大声で横島クンの名を叫ぶマリア。
マリアの胸の中には
さっき横島クンがささやいた言葉が何度も何度も響いていた。












『また逢おうな。
 俺、待ってるから。ずっとずっとマリアが迎えに来てくれるのを待ってるから。』







〜南米某所〜

「フゥ〜〜〜・・・
 ようやくアシュタロス様が神・魔界をおさめるのに鍵となる
 エネルギー結晶を手に入れるための部下が完成したぞ。
 あとは裏切り防止用の監視ウィルスを霊体ゲノムに組み込んで、と・・・・・・」

南米のとある基地で土偶のような姿をしたロボットが
培養カプセルの前で作業をしている。
もちろんそのロボットはドグラマグラであり、
カプセルの中にいるのはルシオラである。

もう少しで作業が終わるところだ。
あとは禁止コードに触れると組み込まれた相手を消滅させる
監視ウィルスを霊体ゲノムに組み込んで完成である。

ドグラマグラが腰を下ろして一休みしていると
上空からミョーな音が聞こえてきた。

「ん?なんだ、この音は――――――」





キィィーーーン・・・・・・ズドーーーーーン!!!!!





ドグラマグラのセリフが終わらないうちに
突然、空の彼方から人くらいの大きさの物体がドグラマグラの真上に
狙いすましたかのように降ってきた。・・・・・・いや、事実人なのだが。












「いててて・・・・ここはどこなんだ?
 ・・・てゆーか俺って誰だっけ?」

意識を取り戻したがお約束のように記憶を失っている横島クン。
そのとき横島クンの後ろからルシオラの声が聞こえた。

「あなた・・・・誰なの?
 私たちを創った上級魔族・・・には見えないわね。」

横島クンが大気圏からダイブしてきた衝撃で培養カプセルが割れ
目を覚ましたルシオラが後ろに立っていた。

「さあ・・・・・俺にも分かんねーんだ。」

「まあ、いいんじゃないの?
 私たちを創った上級魔族がいないんなら私たちは自由ってことでしょ!?
 お互い仲良くやっていこうじゃない!!」

キョトンとした顔で答える横島クンとポジティブな考えのルシオラ。
こうして南米のジャングルの中での2人の生活が始まったのだった。


〜1ヶ月後〜

「はぁ〜〜〜・・・
 結局1ヶ月たって分かったのは俺の名前だけかぁ・・・・・」

「いいんじゃない?
 私たちなんて1ヶ月より前は生まれてないんだから。
 それに二人とも出逢うより前の記憶が無いなんてちょっとロマンティックじゃないの♪」

奇跡的に焼け残った財布の中身から自分の名前と住所くらいはわかったが
それ以降分かった事は無いし、記憶が戻る兆しも無かった。

1ヶ月の間にすっかり恋仲になった横島クンとルシオラ。
ここには二人の間を邪魔する者など一人もいないのだ。

「・・・・そうだな!!
 前の俺がどうだったか知らねーけど、今の俺にはルシオラがいる。
 それだけで十分だよな!」



・・・だがそんな甘い日々もある日突然終わりを迎える事になる。






「横島さん!!!!ようやく・見つけました!!」


シベリアに不時着したマリアがドクターカオスに修理してもらい
横島クンを探しに旅に出たのが数週間前。

そうして今、マリアは横島クンを見つけたのだった。


「横島さん・早く一緒に・帰りましょう!!」

表情が出ないはずのマリアの顔に明らかな喜びの色が見える。
それほどまでに横島クンを見つけた事に嬉々としているマリア。

「・・・・・ちょっと、あなた誰なの!?
 『私の』ヨコシマを連れて帰らないで!!!!」

『私の』の部分に重点を置いてマリアを止めるルシオラ。
そりゃー、いきなり別の女性が現れて恋人を連れて帰ろうとしたら
ムッっとするものである。


「横島さん・あなたのものじゃ・ないです。
 横島さんを待ってる人・たくさんいます。」

マリアがルシオラにニッコリと冷たい笑顔を返す。
どうやら『私の』の部分にカチンときたらしい。


「・・・・・どうやらヨコシマの以前の関係者みたいね。
 ヨコシマは記憶を失ってるの。
 でも、私もヨコシマもそれでいいと思ってるわ。今の私たちを邪魔しないで!!」

たいせつな恋人とのひとときを守るために懸命に訴えかけるルシオラ。
そして横島クンの記憶が失われていると聞いてショックを受けるマリア。

「横島さん・・・
 マリアの事・忘れてしまった・ですか?
 マリアとの約束も・忘れてしまった・ですか?」


そのときのマリアの表情は
何よりも美しく、誰よりも人間くさかったわけで・・・・

(あれ?この感じ、どこかで・・・・・・)

横島クンの頭の中にさまざまな記憶がフラッシュバックする。

月でメドーサとの戦い。
宇宙船から放り出された事。
そしてマリアと『また逢おう』と約束した事。



あの時のマリアの表情・・・忘れるわけにはいかない。


「マリア・・・マリアか・・・?」

「記憶がもどった・ですか!!??」


断片的ながらも記憶が戻った横島クンと記憶が戻ったと分かって明るい表情のマリア。

「そっか・・・・
 記憶、戻っちゃったんだ・・・・」

そして暗い顔のルシオラ。

だがしかし!!
ここで横島クンがルシオラを見捨てるはずがあろうか!?
いや、ない。(反語)


「な、なんて顔してんだよ!?ルシオラ!!
 俺がいなくなるわけないだろ!?俺はずっとお前と一緒だよ。」

ジーンと涙するルシオラ。
ここで終わればかっこいいのだが、横島クンは。



「マリアと・一緒に・いてくれないですか?横島さん?」

寂しそうな表情で下から横島クンを見つめるマリア。

(ああっ!!マリアにそんな表情で見つめられたら・・・・
 でもルシオラも大切だし・・・俺はどうしたら―――――!!!!)



「で、できれば両方とも一緒になんて・・・・」
「「・・・・・はぁ!?」」



ビクゥ!!



最後までセリフを言わせてもらえない横島クン。
ま、当然といえば当然である。


「で、どうするの?ヨコシマ?
 どっちと一緒にすごしてくれるのかしら?」

「横島・さん?
 マリアと・一緒に・かえってくれない・ですか?」

ルシオラとマリアにジリジリと詰め寄られる横島クン。
どうやらこのSSではルシオラは救済されても横島クンは救済されなさそうである。




・・・・・おしまい。

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