ザ・グレート・展開予測ショー

桃太郎の桃 −前編−


投稿者名:veld
投稿日時:(03/ 4/12)


 注:皆、壊れてます。多分。



 昔々、あるところに頭の禿げ上がったお爺さんと、若々しくて可愛らしいお婆さんが住んでいました。
 ある日、お爺さんは山へ芝刈りに。
 お婆さんは川へ洗濯に行きました。





 「・・・何で私がお婆さんでお爺さんが横島さんじゃないんですか(ぷくぅ)」

 お婆さんは、もう、のっけからぷんぷんでした。










 まだ、早春ですから、川の水も酷く冷たく、お婆さんは水に手を浸すたびに、手をこすり合わせ、時たま吹き付ける風に身もだえしながら洗濯をしていました。
 毎日行なっていることですし、慣れというものもあるのでしょう。手際よく、洗い物を片付けていきました。

 そうやって、最後の一枚に取り掛かろうとした時―――

 お婆さんは目を細め、上流を見つめました。
 小さな点が、徐々に近づいてきます。
 それは遠くにあるから小さく見えるのであって、近くで見れば、恐らくは人ほどの大きさのものであろうと、お婆さんは見立て―――。
 嘆息し、それが近づいてくるのを待ちました。



 それが、はっきりと見えた時、お婆さんは驚きました。

 川上からどんぶらこ・・・どんぶらこと流れて来たのは大きな桃だったからです。





 そりゃぁもう、ぷかぁ〜と。

 ぶっちぎり(?)でどざえもんさんです。

 ドラ○もんじゃありません。

 ・・・死んでますね。

 死んでますよね?

 え・・・生きてるんですかっ!?

 って、横島さんっ!?


 「横島さんっ!!」

 「ああ・・・おキヌちゃん・・・」

 「大丈夫ですかっ!?」

 「・・・うん、大丈夫」

 「でも・・・どうしてこんな・・・」

 「桃の役の奴が・・・逃げた」

 「誰です?」

 「タイガー」

 「沈みますよね」

 「沈むね・・・って、誰でも沈むけどね。川だし」

 「でも、タイガーさんですし」

 「・・・」

 「・・・」

 「・・・お腰につけたキビ団子〜♪」

 やる気の欠片も感じられえない、いっそ投槍であるとさえいえる抑揚のない歌声。
 そして、何より、桃はそんな歌を歌いません。

 「つけてませんもってませんあげません」

 「・・・うん」


 そして、おばあさんは、家に帰って桃を切ることにしました。
 お爺さんは帰っていませんでしたが、何となく、胸騒ぎがしたので、彼が帰ってこないことをお婆さんは何気に悟ってはいました。

 そして―――本当に帰ってこなかったのです。



 「お爺さん・・・帰ってこないみたいですし。ちゃっちゃと進めましょうね」

 陽光に煌く出刃包丁。ニコニコと微笑むお婆さんとのギャップが何となく不穏な空気を醸し出していました。
 そんなお婆さんの様子に、桃は思わず叫びました。

 「・・・本当に切るのっ!?」

 「はい。キルです」

 「・・・な・・・何を言ってるのさっ!?」

 逃げ回る桃。
 追い掛け回すお婆さん。
 桃太郎の話のはずなのに、何故だか鬼婆伝説の様相を為して来ました。

 「だぁぁぁぁ!!おキヌちゃんっ、目を覚ますんだぁぁぁ!!」

 「聞こえません。桃は人の言葉など語らないし、何よりも理解しないはずです」

 「俺、思いっきり喋ってるじゃんかっ!!」

 「幻聴です。歳を取ると耳が遠くなってしまって・・・その代わりにこんなのは良く聞こえるようになるんですよね・・・」

 「何なんだぁぁぁ!!この不条理な会話はぁぁぁ!!」

 狭い部屋の中、ぐるぐると回る桃と鬼婆(お婆さん)。
 しかし、とうとう桃は家の隅に追いやられ、逃げ切ることが出来なくなってしまいました。
 がたがたと震える桃。しかし、残念ながら桃だからして、全くその姿は悲哀をそそることも無く。

 そして、その桃の前で、ゆらぁと包丁を手にし、舌なめずりをするお婆さん。
 しかし、普段は温厚なそのお婆さんがそんな事をするはずがないと、半ば自暴自棄になりかけている作者(をい)。

 「・・・桃さん・・・いや、もうこの際・・・横島さん・・・」

 「をい・・・」

 何かのこだわりがあった気がしましたが、あっさりと捨ててしまった彼女に何かしら言葉をかけようとしたものの、少女の目の中に見えた『狂気』を感じた桃・・・否、もうこの際、横島クンはその言葉を飲み込みました。
 爛爛と輝く瞳。
 その表情が、先ほどまでの鬼婆時代のものであれば、抵抗のしがいもあるというものですが・・・。
 しかし、そこに浮かぶのは、何時もの優しい少女の笑みでした。
 狂気と恋心は紙一重。
 意味不明ですが、そんな言葉が頭の中に浮かんできました。

 「大好きです―――ですから・・・」

 その手が見えないくらいの速さ包丁が振るわれました―――すると、桃の身体を覆っていた皮―――もとい、衣服が細切れになって床に落ちました。
 思わず、腕で隠しましたが、丁度良い事に、大切な部分は隠されていました。(どこかは聞かないで)

 「ふふふ、横島さん・・・頂きますよ」

 「な・・・何をだよ・・・」

 「ふふふ・・・解ってるくせに(ぽっ)」

 「だぁぁぁぁ!!こんなのおキヌちゃんのはずがねえっ!!」

 「現実を・・・見据えてください。横島さん♪」

 見据えたくねえ。こんな現実。力いっぱい心の中で叫びましたが、所詮、心の中でした。

 「く・・・あ・・・ははははははっ!?そうか、これは夢なのかっ!?夢なんだな・・・そうだっ!!夢だっ!!」

 「そうですね。夢です。ですけど、責任は取ってくださいね♪」



 ―――その時です!!

 がらがらがらがらっばたんっ!!

 「何をしているのでござるかっ!?おキヌ殿っ!!」

 家から程近い道端にスタンバイしていた犬が乱暴に戸を開けて家の中に入ってきました。

 「シ・・・シロぉぉぉ」

 感涙に咽び泣きつつ、弟子の名を呼ぶ横島クン、もとい、桃。
 本来なら、男の沽券に関わる時の闖入者はあまり好ましくないものですが、この時の桃には彼女を「よく頑張ったっ、感動したっ」とか、三十回くらいは心の中でマジ叫びをしたい位に誉めたかったわけです。

 だから、こう言いました。

 「よく「先生を食べるのは拙者でござるっ!!」がんば・・・はぁ?」


 正確には、言おうとしました。

 思わず脱力する桃を尻目に、犬は吼えます。

 「先生はっ・・・拙者の(食べ)ものでござるっ!!」

 つまり、それって餌って事か?
 何となくそんな事を思い、虚しくなりました。

 「・・・あら・・・あなたの餌はもう作ってあるわよ?ほら・・・これ」

 そう言って、お婆さんが懐から取り出したのは、何故かドクロマークのついた袋の中に入っているキビ(深い意味なし)団子でした。

 万遍なく黄な粉(らしきもの)がついた美味しそうな団子です。
 思わず咽喉をならす犬。しかし、首をぶんぶんと振るとと、キッと彼女の持つ袋を叩き落としました。

 「こんなの・・・いらないもんっ!!」

 もう、ぷんぷんです。何故かは解りませんが。
 可愛いことは確かでした。

 「!?」

 おキヌちゃんの勝ち誇った顔が歪みました。そして、間断なく、包丁を構え、睨み据えます。
 そんなお婆さんを睨むと、犬は肉球のぷりてぃーな手の平をお婆さんに向け、そこから青白い刃を放ちました。
 桃は、そんな二人の対峙を間近で見ていましたが。所詮、どちらが勝っても同じ運命なんだと気付き、どうやったら前向きな思考に至れるかを考えた結果、神頼みをすることにしました。

 「・・・横島さんは・・・誰にも渡しません」

 「・・・先生は・・・拙者のものでござるよ」

 「どうでも良いから早く助けてくれマイゴッド」


 かなり、投槍でしたが。


















 続きます。

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