ザ・グレート・展開予測ショー

力(2)


投稿者名:初心者1069
投稿日時:(03/ 4/11)

その光景にしばらく圧倒されていたが、落ち着いて周りを見てみるとそこは寺のようだった。
人が住めるような様子ではなかったが、それ以外の者はいるのであろうその建物からは微弱ながら霊気が感じられた。

(美神さん達が言ってた霊が集まった原因ってのはこの建物の中にいる奴かな。
 一応知らせに行ったほうがいいか。‥‥その前に)

横島は美神達に知らせに行くために森を出る前にもう一度その蛍の群れを見ることにした。
生活が苦しいからか花(美人は別)より団子の横島が何度でも見たいと思うほどその光景は美しかった。

(アイツと知り合ったからだろうか蛍がこんなにきれいに見えるのは。)

などと思いながら再び蛍の群れの中に目を向けると、その中でさっきはいなかった美女がたたずんでいた。
その美しい光景の中にいてもその女性は何の違和感も無かった。
しかし、横島は美女を見てそんなことを考える余裕があるわけではないので

「ずっと前から愛してました〜。」

そう言った瞬間その女性に飛びついていた。
当然いつものように撃沈されたわけだが、今回は思わぬところから迎撃された。
その美女が反応する前に隣にいた人物が横島を蹴り飛ばしていた。

「この野郎!何しやがる!」

横島が立ち上がって自分を蹴った人物を睨み付けるとそこには一人の少年が立っていた。
小学校高学年くらいの容姿だったが、纏っている雰囲気はひどく大人びて見えた。

「ここに一体何しに来た!」

少年は横島の睨みを蚊が止まったほども気にすることもなく睨み返しながら言った。

「何しにって訳じゃないんだけどな‥。
 ただ、蛍を追いかけてたらここにたどり着いただけで。」

「帰れ!」

そう言うと少年は再び向かってきた。
横島は避ける体勢を取ったが、少年は美女の

「待って!その人は違うみたい。」

という言葉を聞いて動きを止めた。

「まったくすぐに殴りかかるんじゃないの。まあ今回は助かったわ。」

美女は少年に向かって起こった表情で言うと振り返って横島の方を向いた。
近くで見ると美女というよりまだ美少女といった方がいいだろう。横島と同じくらいの歳だった。

「私が見えるということはあなたも霊能力者ですね?」

「そうです。」

「この森には一体何の用事で来たんですか?」

「仕事です。
 近くで霊団が発生して、ウチの所長がその除霊を依頼されたんです。」

その言葉を聞いて少女は安心したようだった。
その後「ほら言ったとおりでしょ?」というような顔で少年の方を振り返った。

「どうです?もう真夜中ですし、今晩はこの寺に泊まっていっては。」

「よろこんで!」

横島は即答した。
心の中では(女性から家へのお誘いしかも夜→ガキを遠ざければ何しても若気の至りで許される。)などと思っていたのだが。

「そうですか。では、こちらへどうぞ。ほら、ハルも家に戻るわよ。」

少年に声をかけると女性は横島を伴って寺院の中へと入っていった。

「お茶の用意をしてきます。」

女性はそう言うと部屋の奥へと消えていった。
子供―名前はハルというそうだが―と二人で取り残された横島は
やっと子供がこんなところで何をしているのかと当然の疑問に気がついた。

「お前何でこんな所にこんな時間にいるんだ?
 親は心配しないのか?」

ハルは答えようかどうか迷っていたようだったが、

「ここが僕の家。」

とだけ答えた。
横島は親のことに関しては聞かない方がいいと判断して質問を変えた。

「あの女の人の名前‥‥じゃなくて、お前とどういう関係なんだ?」

今度は何のためらいもなく答えた。

「アキは僕のお姉ちゃん。」

(このガキあの人が幽霊だって気付いてんのか?)
疑問が頭をよぎったが、アキが必要なら伝えるだろうと思いここで話すのはやめにした。
この少年がアキと呼ばれている女性に魅入られている可能性を考えなくもなかったが、
 そこは基本的に人(女性?)を信じる性格から疑うことはやめにした。

「夜中に何してたんだ?」

ハルは話すべきかどうか考えているようだった。

「お兄ちゃんも霊能力者なの?」

「ああ。」

「じゃあ証拠を見せて?」

妙なことを聞かれるなあと思ったが今のこの状況を知るためにしょうがないことだと思い霊波刀を出現させた。
ハルは複雑そうな目で霊波刀を見つめていたが、横島が霊能力者だということは認めたようだった。

「修行をしてたの。お姉ちゃんが僕には霊能力の才能があるって言ったから。
 でも、なかなか強くならないんだ。僕は早く強くなりたいのに。」

「修行か‥。ハルはどうして強くなりたいんだ?」

「お姉ちゃんを守りたいんだ。
 お姉ちゃん時々僕がいないと思ってる時にすごく不安そうな顔をするんだ。」

「そうか。」

誰かを守るための強さ。かつて自分も望んだもの。
この少年は守るべき者を守りきれるように。横島は珍しく神に祈った。

「でもこのことはお姉ちゃんには内緒だよ。」

「ああ。分かった。」

横島は照れるようにハルが言ったのをかわいらしく思った。

「お兄ちゃんは?」

「ん?」

「お兄ちゃんも修行して強くなったんでしょ?」

意外な質問だった。
あの時までは自分が守りたいと思う人を守れるように強くなりたいと思っていた。
その後も修行は続けているが目的や理由は考えていない。
改めて考えていると少し心当たりがあった。

「夢を叶えるためかな。」

「夢?」

ハルは不思議そうに答えた。
子供心にはは夢を実現させるために力が必要だというのは理解できなかった。

「どんな夢なの?」

「そうだな‥うまく言葉にはできないけど、皆が争いもなく暮らせる世界にしたいな。
 俺はそのために強くなりたいのかもしれない。」

ハルがまた何か言おうとしたが、その前にアキが部屋に駆け込んできた。
顔を見ると涙が頬を伝っていた。

「急いで結界を張ってください。」

「結界?」

「いいから早く!」

言葉に並々ならぬものが感じられたので横島はポシェットから文珠を取り出すと、<護>を発動させた。
横島たちに向けられて霊波砲がとんできたが、結界が間に合った。

「アキ!一体どういうつもりだ!
 こいつとハルの霊力が加われば我々の悲願がついに達成されるのだぞ!」

そう言いながら部屋に男の霊が入って来た。が、単体の霊と言うには霊力が大きかった。

「そうですけど、こんなやり方は間違っています!」

「何を今更‥ここまで来てまだそんなことを言っているのか!
 奴を倒さなければ我々は成仏できんし、さらなる被害者がでる可能性もあるのだぞ!」

男の霊は会話の間にも結界を崩そうと霊波砲を撃ち続けていたので再び結界を張りなおさなければならなかった。

「ならば、この人に頼みましょう。この人にはそれだけの霊力があります!」

「だったら、そいつの力を取り込んでしまえばいい!
 そうすれば、俺が自分の力で奴を倒すことができる!」

横島は結界が崩れないか見張るのに精一杯だったし、ハルは畏縮してしまっていて二人の怒鳴り声だけが寺に響いていた。
なおも怒鳴りあいは続いたが、その内に男の霊の姿がだんだん薄れているようだった。

「くそ‥もう時間か。とにかく、次の覚醒までにそいつらを取り込めるようにしておけ!
 駄目なら、お前ごと取り込むぞ!」

小さくなった声でそう言うと男の霊は消えてしまった。

「もう結界を解いていただいても大丈夫です。どうもすいませんでした。」

男の霊が完全に消えたのを確認すると、アキが振り返って頭を下げた。

「一体なんだったんですか?今のは。」

「今説明しますが、その前に‥」

アキはハルの方を気がかりそうに見た。
横島はその様子を見て取って、文珠<眠>を可能な限り優しく発動させ、ハルを眠らせた。

「ありがとうございます。この子にはまだ告げたくないので。
 話せば長くなりますが、あの人が再び覚醒するまでそんなに時間が有りません。
 要点だけ話させていただきます。」

一息おいてアキは語り始めた。

「あれは、ちょうど一年前のことでした‥」

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短い上に話が全然進んでない。ごめんなさい。
事情により、ネットに接続できる回数があまりないので、
コメントを下さる方いらっしゃいましたら大目に見てやってください。

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