ザ・グレート・展開予測ショー

ひのめ奮闘記(その14(B))


投稿者名:ユタ
投稿日時:(03/ 4/11)

















来る。

美智恵は一言呟くと厳しい表情のまま懐から霊銃を取り出す。
銀の弾丸がどれほど効くか分からない。
しかし、遠距離から少しでもダメージを与えておきたい。

「ひのめ・・・・ママが必ず守ってあげる・・・・」

震える娘をギュっと抱きしめ銃を構える。
だが、その銃身はカタカタと振るえ目標を捉えきれない、
美智恵が緊張から震えているのか・・・・とういえば違う。
美智恵が震えているのではない、美智恵の抱きしめているひのめの振るえが伝ってきているのだ。

「ひのめ?」

尋常じゃない娘の振るえに美智恵は思わず目標から視線を逸らした。


(こわい・・・こわいよ・・・・・・・・・・)

ひのめはギュッと目を瞑りまるで呪文のように心で囁いた。
始めにひのめが感じたもの、それは今までに感じたことのない激しい痛み。
次に見たのは自分の体、服にベッタリと広がる血、そしてその生臭い臭い、
指を口元にもってきたときに思わず入ってしまった鉄の味・・・・


その全ての起因となる怪物を見たとき、ひのめの心は恐怖に満たされた。

横島と令子の戦闘から聞こえるケルベロスの叫びがひのめの鼓膜を震わせ恐怖心を増加させる。
もはや五感全てがひのめの心を恐怖で蝕み、美智恵の声も届くことはなかった。

そして・・・・・

ひのめは見た。
自分を守ろうとした令子を吹き飛ばし、こちらに向かってくるケルベロスを。
その血走った瞳を、自分を喰らおうとする醜悪な表情を、巨大な顎を、牙を・・・



それは一瞬の出来事だった。


「い・・・や、たべられちゃう・・・・やだ・・・こわ・・い・・・こわい・・・こわいこわい・・・こわいこわいこわい」


カアアアアアアアアアアァァァァ!!


ひのめが言葉を紡ぐたびにその体から放たれる霊力の光が強くなる。

「ひのめ落ち着いて!」

吹き飛ばされそうになりながら必死にひのめを抱きしめる美智恵。
しかし、その言葉も最早ひのめの耳には入らなかった。


バチバチ・・・

ひのめ服に縫いつけある念力封じのお札がもう限界だとばかりに綻んでいく。
そして、その崩壊は簡単なものだった。

『ガルワアアアアアアアアアアアアアア!!!!』

ケルベロスが咆哮と共にひのめ目掛けて突進する。
それと同時に

「いやあああああああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!こないでええええええええ゛え゛え゛え゛!!!!!!」
「きゃっ」



ゴアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!


美智恵は短い悲鳴を上げ霊力の波に吹き飛ばされた。
いや、それで済んだだけマシだろう・・

ひのめの絶叫と共に念力封じの札が弾ける。
それはすなわちひのめの霊力の開放を意味する。


『ギャアアアアアアアアアアアぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!』

ケルベロスが苦悶の叫びと共に業火に包まれる。
それは地獄の炎に苦しむ冥界の亡者を連想させるようだった。
ケルベロスは炎を消そうと転がるがそんなことではひのめの炎をは消えるはずもない。

「す、凄い・・・・」

肉のこげる嫌な臭いに顔をしかめながらその光景に冷たい汗を流す横島。
今まで、ひのめの発火能力をみたことがあるのは一度だけ。
ひのめが生まれて3か月のときだ。
それからは周囲が細心の注意を払っていたから自然と発火能力を見る機会はなかった。
だが、どうだ・・・今のひのめが暴走しているとはいえその能力は前回の比ではない、
まるで今までの鬱憤を晴らすようなその力の解放はケルベロスを燃やし尽くすまで止まらないのではないか・・・


『ぐるああぁぁぁああああ・・・・』



ケルベロスはもはや抵抗すらもできないまま炎に身を包まれ力尽きたようにヨロヨロと歩き出す。
おそらく視界どころから、触角、嗅覚すら炎のせいで働いていないのだろう・・・
そのままひのめのほうには進まず、千鳥足で崖のほうに向かっていく・・・


『ガアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!』

最後の絶叫が横島達の体を震わせる。
そしてケルベロスは文字どおり断末魔を上げながら柵を破り、
その身を包む炎と共に奈落と思われる崖から落ちていくのだった。










「終わったのか・・・」

「まだよ・・・」

左手の痛みに耐えながらひのめを見つめる令子。
相変わらず泣き続けるひのめは自分がケルベロスを倒したことも気付いていない、
いや、始めから倒すつもりなどなかったろう・・・ただその霊力を暴走させているだけだった。

「確かにな・・・」

令子の言うとおりだとばかりに、ひのめをあやそうと歩み出す横島。
しかし・・・


バチ・・・

横島の胸に静電気のようなものが走った。
いや、横島だけじゃない、令子にも美智恵にも・・・そして周囲の遊具、木々、草、およそ半径20mもの全てが
静電気・・・・いや、念波に包まれた。


「これは!!くそっ!間に合えよ!!!!!」

横島はバックステップで令子の元へと戻ると最後の文珠を発動させる。


『護』


と、文字が浮かび結界が二人を包んだ瞬間。







ゴアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア
アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア
アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!



念波に包まれた全てが一瞬にして燃え上がる。


「ま、まさか!!?」
「ああ・・・ひのめちゃんの霊力が暴走して無意識に周囲のものをロックオンしたんだろうな・・・」
「ま、ママは!!?」
「大丈夫」

横島がスっと指を差すとそこには横島達と同様文珠の結界に包まれる美智恵がいた。
先程「念のために」と渡した二つの文珠の一つを発動させたのだ。
本来なら文珠は掌で握りながら念を込める、
しかし、横島は修行の中で半径10m以上にある文珠ならどこからでも念を込め発動させることが出来た。

「ただ、これは普段より霊力と体力を消費しちまうけどな・・・・・」
「ちょっと・・・・大丈夫なの」
「・・・・・・・・・・・お前に強がっても仕方ないよな。・・・・・・・・・・『ハンズオブハイサラリー』も使ったうえに
文珠の遠距離発動もしちまったからな・・・霊力、体力、気力ともにすっからかん・・・・」

取り合えず言うべきことだけ述べ地に膝をつく横島。
疲労からくる汗を額に浮かべ、肩で息をする・・・もう限界だというのが令子にも一目で分かった。

「でも・・・」

横島を支えながらひのめに視線を移す、
泣きながら発火能力を暴走させるひのめ・・・いや、それだけじゃない。
ひのめを中心に360゜炎の波が周囲に放たれている・・・令子達は結界に包まれているからいいが、
森はもはやそれにあがなうことが出来ず延焼していく。


「取り合えずひのめを落ち着かせなくちゃ・・・」

「まかせろ・・・俺に案がある・・・」

「えっ!」

夫の言葉に希望の輝きを目に浮かべる令子。
今日の戦闘を見てもやっぱりこの人は頼りになると惚れ直すのだった。

「いいか、耳貸せ」
「うん」

ボソボソと何かを伝える横島。
令子ははじめは「ふんふん」と聞いていたがやがてその表情に『呆れ』という文字が浮かんでくる。

「どうだ?」
「あんたねー!そんなの通じるわけないないでしょ!?」
「やってみなくちゃわからんだろ!!4年前は通じたんだぞ!」
「そ、そうだけど・・・・」

夫のわけのわからない強気に押される令子。
そして、横島の懐から出てきたナニかを受け取る。

「いいか・・・・ミスるなよ」
「わ、わかったわ・・・」

返事をしがら少し顔赤らめる令子。
横島はよしと頷くと・・・・・・・・


「ひのめちゃーーーーーーーーーん!!!!」

大声でひのめの名を叫んだ。
ひのめは泣きながらも混乱する頭でその声のほう視線を動かす。

「今だ!!!」

横島の声と共にナニかを頭に被り、もう一つ手にはめる令子。
それは!!!

































「ボクは『ばうわ』!!!!」なにがどんなの〜♪
「『かにゃこ』だよーっ!!」にゃいにゃいにゃい♪

某幼児番組マスコットのコスプレ。・・・が

「うわああああああああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ん!!!!!!!!」

更に泣き声と火力が増した。

「ダメじゃないのーーーーーーーーーー!!!!」
「何でやあああああ・・・・・あぢゃあああああ!!!!!!」

令子に殴られ結界から吹っ飛び丸焦げになる横島だった。



















「何やってのよ・・・・」

美智恵はこんなときにコントを始める二人に頭が痛いと手で押さえた。
早く何か手を打たなくては・・・
聡明なオカルトGメンの隊長の頭脳が急ピッチで回転をあげる。
しかし・・・運命はそれすらも許さなかった。


ゴッ!!

また一つ炎にナニかが包まれた。
それは・・・








「ひのめええええええええええっ!!!!!!」

炎に包まれる娘・・・・



PM4:59
美智恵の悲痛な叫びがN山にこだましすのだった・・・・・・・・・・・・。






                                    その15に続く


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あとがき


『ロストメモリー』で黒い霊波刀の名前を考えてくれた
veldさん、NAVAさん、矢塚さん、ゲンさん、紫さん、マリクラさん、sacredさん。
ホントにホントにありがとうございました!ホントはこの作品でなく別のSSに使うつもりでしたが、
まあそれは置いといて(マテ)

どれにしようか凄い迷いました・・・だってだって・・・みんな格好よすぎて(TT)
その中でもギャグエッセンスを交えつつ作者的に受けた矢塚さんの

『ハンズオブハイサラリー(高給の手)』

を採用させていただきます。
約束どおり矢塚さんには好きなキャラの好き内容のSSを一本プレゼントさせて頂きます(いらねぇとか言わないでぇ〜(TT)

他の皆さんにもいつかお礼がしたいです、では本当にありがとうございましたm(__)m

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